1993 年 29 巻 6 号 p. 1181-1186
症例は3ヵ月男児で,貧血を主訴に他院を受診し,上部消化管造影で胃に腫瘍を認め来院した. 超音波検査,内視鏡検査で,胃体部小弯側前壁に有茎性腫瘍を認めた. 全身麻酔下にて,周囲の胃壁 1cm を含み全摘した. 腫瘍は 4.5×3×3 cm で,重さは25gであった. 組織診断は,成熟奇形腫 ; AFIP 分類 gradeI であった. 術後良好で,再発の兆候はない. 胃奇形腫は稀な疾患で本邦報告例は,自験例を含め42例に過ぎないが,その内小児例が40例を占める. 小児例はすべて男児で,内8割が6ヵ月未満の発症である. 臨床症状は,胃内型,外型,内外型の3型により異なった症状を呈する. 組織学的に悪性を呈したのは2例のみであったが,外科的切除できた症例の予後は良好であった.