【目的】九州小児外科研究会の会員施設に重症心身障害児者の外科治療に関するアンケート調査を行い,胃瘻造設術の実態について調査した.
【方法】対象は,2018年1月~2022年12月に全身麻酔下に胃瘻造設術を受けた症例で,調査項目は,年齢,同時に行った手術,術式,胃壁固定法,術後の栄養管理と合併症とした.
【結果】22施設から579例の胃瘻造設例が集計された.年齢層は1~5歳が37%と多いが,16歳以上も30%を占めた.胃瘻造設単独例は321例で,同時に施行された手術では,噴門形成術が163例と最も多かった.胃瘻造設単独例では,消化管内視鏡を用いない腹腔鏡補助下胃瘻造設術が37%と最も多く,次いで腹腔鏡補助下経皮内視鏡的胃瘻造設術(LA-PEG)が26%であった.消化管内視鏡を併用した症例の80%に鮒田式胃壁固定具®が使用されていた.術後の胃瘻からの水分投与は,術後1日目までに開始されていたが,経腸栄養は術後1~4日に開始されていた.術後のミキサー食は,17%の症例で投与されていた.術後感染性合併症発生率は,PEG群およびLA-PEG群において,腹腔鏡補助下胃瘻造設群と比較して有意に低かった.
【結論】小児外科医は,小児のみならず成人の重症心身障害者に対しても胃瘻造設を行っていた.術式では腹腔鏡補助下胃瘻造設術が最も一般的であったが,術後合併症ではPEGおよびLA-PEGが優れていた.術後の栄養投与では,開始時期は必ずしも早くなく,早期のミキサー食導入は少なかった.
【目的】小児の気管カニューレ抜去には明確なガイドラインがなく,施設間で実践が異なる.当科でも標準化された適応や手順がなく,小児外科医ごとの裁量で行われてきた.本研究では,当科における小児気管カニューレ抜去の10年間の経験を後方視的に検討し,実施手順と成績を整理するとともに,適応と手順を明確化したプロトコル構築を目的とした.
【方法】2013年1月から2023年11月に当科でカニューレ抜去を試みた15歳以下の患者を対象とし,喉頭気管形成術後は除外した.当科では原則としてカニューレの段階的サイズダウン,テープ閉鎖,硬性気管支鏡検査を経て入院下に抜去しており,2022年以降は誤嚥防止と発声練習目的でスピーチカニューレも使用したが,その順序や期間は標準化されていなかった.診療録から手順と成績を検討し,また気管内肉芽のリスク因子をロジスティック回帰で解析した.
【結果】33人に計37回の気管カニューレ抜去を試みた.抜去時年齢の中央値は5歳,成功率は86.5%であった.硬性気管支鏡は91.9%で施行され,そのうち気管内肉芽処置は23.5%で行われた.スピーチカニューレは32.4%で使用された.テープ閉鎖期間,抜去後入院観察期間,抜去までの全期間の中央値はそれぞれ6日,4日,90日であった.また,気管内肉芽形成に有意な関連因子は認めなかった.
【結論】非標準化管理では,気管カニューレ抜去計画から実施まで長期化しやすく,効率化にはプロトコル導入が有用と考えられた.当科では入院期間6日を基本とし,スピーチカニューレ・バルブの使用を組み込んだ小児気管カニューレ抜去プロトコルを作成した.
症例は神経線維腫症1型の合併が疑われた14歳男性.腹痛を契機に後腹膜腫瘤が指摘され,画像所見および臨床的背景から悪性末梢神経鞘腫瘍(malignant peripheral nerve sheath tumor: MPNST)などの悪性腫瘍が疑われた.しかし,開腹下腫瘍生検が2度行われるも,いずれも反応性炎症性組織で診断に至らなかった.術後腸閉塞に対する癒着剥離術に併せて腫瘍切除術が施行され,手術標本の免疫組織染色でH3K27me3の完全欠失を認め,MPNSTのサブタイプである悪性Triton腫瘍と診断された.生検で診断困難であった原因として,腫瘍が炎症性組織を主とした被膜を有し内部には壊死を認め,viableな腫瘍組織の偏在が考えられた.本症例のように臨床的に悪性腫瘍が強く疑われるにもかかわらず,生検で確定診断に至らない場合には,腫瘍切除術についても検討する必要があると考えられた.
症例は4歳男児.5日前より腹痛と嘔吐があり,前医で急性胃腸炎として対症療法が行われていたが,嘔吐内容が胆汁性となった.腹部造影CTで腸捻転および囊胞性病変の所見を認め,当院へ搬送された.緊急手術を施行したところ,小腸間膜に18×13 cmの囊胞性病変を認め,同部位を原因として小腸が900度反時計回りに捻転していた.捻転を解除したところ腸管の壊死は認めず,小腸を10 cm合併切除して囊胞を摘出した.病理診断はリンパ管腫であった.本症例は発症から5日が経過し,900度の高度捻転を認めながらも,腸管壊死に至らなかった稀な1例である.その要因として,内容液が乳びであったことから示唆される亜急性の経過に加え,限られた空間内で増大した囊胞が尾側から捻転の基部を支える形となり,腸間膜にかかる荷重を物理的に緩和し,血管内腔の伸展・圧潰を免れた可能性が推察された.
低位鎖肛術後の5歳男児.腹痛と嘔吐を主訴に受診し,腸閉塞を疑われ当院へ搬送された.来院時ショックを呈し腹部膨満と下腹部全体に圧痛を認めた.造影CTで右上腹部に虚脱腸管の集簇(sac-like appearance)と肛門側の拡張腸管を認め,傍十二指腸ヘルニア(paraduodenal hernia: PDH)による絞扼性腸閉塞を疑い,緊急手術を行った.右結腸間膜と後腹膜の癒合不全部がヘルニア門となり小腸が嵌頓していた.ヘルニア門を開大するとメッケル憩室を軸とした回腸捻転を認め,解除後に回腸部分切除を行った.空腸はTreitz靭帯を形成せず椎体右側を走行していた.右PDHでは再発予防のためヘルニア囊の開放を行うことが多いが,腸回転異常合併例では上腸間膜動脈や回結腸動脈がヘルニア門近傍を走行することがあるため,損傷に留意する必要がある.
本症例は術前CTで右PDHを想定し得た点とヘルニア囊内でメッケル憩室を軸とした回腸捻転というまれな機序で絞扼性腸閉塞を来した点が特徴的であり報告する.
症例は9生日の男児.在胎39週2日,自然経腟分娩で出生.出生時体重3,038 g,Apgar score 1分値7点,5分値8点.出生後,徐々に陥没呼吸を認め前医へと新生児搬送され,人工呼吸器管理が開始された.胸部造影CT検査にて,右胸腔内を占拠する48×38×50 mmの腫瘍性病変を認め,日齢9に当院NICUに転院となった.日齢13に撮影した胸部造影CT検査で右中葉気管支の途絶を認め,腫瘍は右中葉由来であった.日齢44にhemi-clamshell approach(HCA)により開胸し,右中葉切除を施行し,日齢101に退院した.
本邦における胎児肺間質腫瘍(FLIT)の報告は自験例を含め8例で,全例出生後に診断され,HCAによる開胸は2例に施行されていた.HCAは,新生児期発症の巨大肺腫瘍に対する開胸法として,良好な視野確保により安全性が担保できるため,考慮すべき開胸法の一つであると考えられた.
症例は21歳男性.特異顔貌,胸椎後弯,精神発達遅滞などから先天性奇形症候群と診断された.胸椎後弯矯正手術時の安定した気道確保のため,13歳時に輪状軟骨前方鉗除による気管切開術が施行された.その後,20歳時に胸椎矯正術が完了し,気切孔閉鎖術のため当科を紹介受診.気切孔は14×16 mmで試験的に閉鎖しても自発呼吸は障害されないため,気切孔閉鎖術を行う方針とした.手術は気切孔周囲の前頸部に紡錘状の皮膚切開を入れ,気切孔頭側に気切孔を閉鎖するための表皮を島状に残し,周囲の表皮を切除した反転皮弁(hinge flap)を作成し,気切孔を縫合閉鎖した.術後,術前から認められた誤嚥による肺炎が懸念されたが,食形態を調節することで誤嚥なく術後7日目に退院となり,その後も問題なく経過している.輪状軟骨前方鉗除によるいわゆる永久気管孔でも,皮弁による気管切開孔閉鎖術を安全に行うことが可能であった.