胎児MRIは被写体である胎児が小さく,また胎動も多いため撮像,読影が困難である.胎児の肺の信号強度は在胎週数とともに上昇し,成熟度は肝臓との信号比が参考になることを知っておきたい.胎児超音波で疑われた肺囊胞性病変の評価は,囊胞の数や大きさ,性状などから鑑別診断を進める.先天性肺気道奇形:Congenital pulmonary airway malformation(CPAM)には特殊なSolid typeが存在し,T2強調像で低信号を呈する場合があることを認識しておきたい.肺分画症の診断では異常血管を指摘するためにsingle-shot turbo spin-echo(SSTSE)が必須である.先天性高位気道閉塞症候群には気管食道瘻を有する特殊な型が存在し,MRIで胎児の肺過膨脹の所見を注意深く読影する必要がある.本総説はこれらの実際の症例の画像を提示し解説する.
ロボット支援下腹腔鏡手術は,本邦では成人泌尿器科領域において急速に普及し,特に前立腺癌(全摘除術)や腎癌(部分切除術)に対してはほぼ標準的手術となった.手術用ロボットda Vinci surgical system®は,術者が操作レバーを操り遠隔操作で手術するが,術者は遠近感を有した3次元画像でかつ約10倍の拡大視野であり,鉗子先端部は70度の可動性を有する関節機能および高い自由度を有しており,さらにモーションスケールという機能により直観的かつ繊細な手術操作を行うことが可能になる.小児泌尿器科疾患,特に尿路再建術は,手術用ロボットの特性を大いに生かすことが可能で,特に腎盂形成術では,世界的に幼児においても有用性が確認されつつあるといえる.今後小児泌尿器科疾患全般において同術式の確立が十分期待され,また一般成人外科領域においても普及しつつあることから小児外科領域全般での導入も大きく期待される.
【目的】日常的に医療的ケアを必要とする児(以下,医療的ケア児)は年々増加傾向にあり,2021年時点で全国に2.0万人いるとされている.医療的ケア児の中には中心静脈栄養や経腸栄養,導尿などを要する小児外科疾患を原疾患とする児も含まれ,彼らの多くは精神・運動発達に大きな障害のないいわゆる「動ける医療的ケア児」である.このような小児外科疾患を原疾患とする医療的ケア児が生活・成長していく上で抱える課題を明らかにする.
【方法】2022年6月30日の開設から2023年6月までに北海道医療的ケア児等支援センターに問い合わせのあった案件のうち,小児外科疾患を原疾患とする医療的ケア児の相談内容と対応について支援記録から後方視的に検討した.
【結果】期間中,特定の医療的ケア児に関する新規相談172件のうち,小児外科疾患を原疾患とする医療的ケア児に関する相談は5件あった.原疾患は,全結腸型Hirschsprung病,Hirschsprung病類縁疾患,先天性横隔膜ヘルニアと臍帯ヘルニアの合併,先天性食道閉鎖症に伴う気管軟化症,総排泄腔遺残であった.いずれも未就学児であり幼稚園や保育園の利用についての相談と修学に向けての支援体制作りの相談であった.病院主治医や地域の保健機関,教育機関と連携や,医療的ケア児を受け入れる保育園の情報収集,情報提供,保育所・教職員への研修などを行った.
【結論】小児外科疾患を原疾患とする医療的ケア児の就園・修学については,受け入れる側の不安軽減のための助言や研修などに小児外科医が積極的に関わり,医療的ケアの必要ない子ども達と同等の教育機会,社会活動が保証されることが望まれる.
【目的】重度の上気道閉鎖疾患を合併した児の救命率向上を目的とし,出生直後の気道確保が困難であった,もしくは困難と予測された新生児症例の実態を把握し,周産期管理および治療戦略について検討する.
【方法】対象は2014年9月から2023年9月までに,岩手医科大学附属病院で出生した2,909人のうち,出生直後の気道確保困難に対し小児外科医の介入を要した症例を対象とした.各症例の出生前画像診断,周産期経過,出生後の治療,転帰などを診療録から後方視的に検討した.
【結果】対象症例は5例で,そのうち胎児診断よりEx utero intrapartum treatment procedure(以下EXIT)を検討した症例は4例あった.実際にEXITを選択した症例は3例で,出生前にCHAOS(congenital high airway obstruction syndrome)と診断した喉頭閉鎖症は長期生存しているが,気管無形成はEXIT下でも気道確保できず死亡した.頸部リンパ管奇形は気道確保するも,後に原疾患で死亡した.1例は気道確保困難の予測外で出生し,緊急で気道確保を行うも救命できなかった.一方,出生前診断に基づく厳重な準備下であればEXIT下ではなくても救命できた症例もあった.長期生存例は呼吸状態が安定しても,嚥下機能や発声を獲得するため専門施設へ紹介が必要であった.
【結論】出生直後に気道確保が困難な症例では集学的治療を要し,出生前に可能な限り準備を整えることが救命率向上に繋がる.そのためには,各地域において周産期医療を集約し体制強化に努めることが重要である.
新生児の回腸ストーマ管理では,ストーマ口側腸管排液(以下:腸液)をストーマ肛門側腸管内へ還元する方法が広く行われているが,この方法のみでは長期的な輸液管理が必要な症例も多い.輸液管理による水分・電解質の補充の代替法として,腸液と組成が類似する重炭酸リンゲル液の肛門側腸管内への注入(以下:本法)を5例に施行した.原疾患は胎便関連性腸閉塞3例,壊死性腸炎と先天性回腸閉鎖症が各1例,在胎週数は25~37週,出生時体重は533~3,120 gであった.本法により,全例で体重増加(導入前3.8 g/日,導入20.4 g/日)と血清HCO3-濃度の改善(同前18.8 mEq/ l,同後22.9 mEq/ l)が得られた.合併症は,浮腫と代謝性アルカローシスを各1例に認め,浮腫を認めた1例を除く4例でストーマ閉鎖前に輸液管理から離脱できた.新生児の回腸ストーマ管理において,本法は輸液療法の代替となり得る可能性があると考えられた.
主膵管損傷を伴う小児IIIb型膵損傷(以下,本症)はまれな病態であり,いまだ確立された治療法はない.我々は本症に対し,仮性膵囊胞を内瘻化することで,非手術療法(Non Operative Management:以下,NOM)にて治癒しえた1例を経験した.自験例を踏まえ,本邦23例の報告をもとにNOMの適応について検討を行った.症例は6歳男児.校庭で転倒し,腹部を受傷.CT検査で本症と診断とされ,当院へ搬送となった.全身状態は安定していたため保存的加療を選択したが,腹部症状の改善乏しく,CT検査を再検すると2個の仮性膵囊胞を認めた.それぞれ経皮経胃ドレナージ,超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasonography)下ドレナージを行い,囊胞を内瘻化することで治癒しえた.受傷後1年経過したが,腹部症状や仮性膵囊胞の再燃なく経過している.本症においては患児の年齢や体格,臨床症状に応じた治療方針の選択が重要であり,全身状態が安定している場合にはNOMも有効な選択肢であると考えられた.
体外式膜型人工肺(ECMO)導入前に胸腔内脱出臓器を腹腔内に還納しサイロ造設,ECMO離脱後に腹壁筋フラップを用いて修復した重症先天性横隔膜ヘルニア(CDH)の1例を報告する.38週3,018 gにて出生,Apgar 3/4.新生児遷延性肺高血圧(PPHN)が進行,NO吸入療法開始したが,脱出臓器による心室への圧排が強く,血圧維持が困難,PPHNが増悪,輸液負荷による肝腫大が進行した.浮腫を伴う胸腔内の脱出臓器をECMO導入前に腹腔内に還納する必要があると判断し,日齢1に開腹.脱出臓器は,肝左葉,全胃,脾臓・副脾,全小腸,回盲部から下行結腸で,左横隔膜はほぼ全欠損,脱出臓器を腹腔内に還納し,サイロ造設施行,同日ECMOを導入した.日齢6にECMO離脱,日齢7に腹横筋・内腹斜筋フラップにて修復した.9歳現在,軽度の側弯,中等度の漏斗胸は残存するも,再発なく,成長障害や精神発達遅滞は認めていない.
症例は手術既往のない8か月の男児.第1病日に頻回の嘔吐で休日診療所を受診し,第2病日に症状増悪して当院小児科を受診した.急性胃腸炎の診断で入院加療となったが,第3病日に胆汁性嘔吐を認め,精査・加療目的に当科紹介となった.腹部造影CT検査で,腹水増加を伴う腸閉塞を認め,同日に試験開腹術を施行した.Treitz靭帯より100 cm肛門側の小腸に閉塞機転を認めた.同部位に消化管異物を認め,小切開を加えて異物を摘出した.さらに検索すると,Treitz靭帯より10 cm肛門側にも異物を認め,同様に摘出して手術を終了した.経過良好で術後8日目に退院となった.摘出した異物は,解析により高吸水性樹脂製品(以下,本異物)と判明した.本邦では認めなかったが,海外では複数個の本異物を誤飲した報告もあり,中には残存異物によって再手術を要した報告も認めた.本異物の誤飲による腸閉塞の特性を理解し,初回手術で完全に異物を除去することが重要であると考えられた.
【症例】1歳10か月の女児.腹痛,嘔吐が改善なく持続し,前医で撮影した腹部造影CTで腸閉塞の診断となり当院へ救急搬送された.CT所見で回腸内部に低吸収の異物と口側腸管の著明な拡張を認めた.胃石や外来異物の嵌頓による機械性腸閉塞として同日緊急手術を行い,回腸を2 cm切開して異物を摘出した.異物は糞石で,内部は繊維質で胃石様の形状であった.回腸切開部を修復し手術を終了した.術後経過は良好で術後3日目より食事を再開し,術後10日で退院となった.術後,患児は嗜好の偏りから多量のミニトマトを好んで摂取していたことが判明した.糞石の成分検査ではタンニン酸類似物質が検出され,胃石症として矛盾なく,ミニトマトの多量摂取が原因と考えられる胃石症と診断した.【まとめ】食餌性胃石症は柿が原因となることが有名だが,他食品でも発症し,腸閉塞を来す例は少数報告があり,既往のない腸閉塞の鑑別として念頭に置く必要がある.
胎便性腹膜炎では,消化管穿孔の時期や部位に基づいた適切な手術術式の選択が必要である.今回,回盲部近傍回腸穿孔による胎便性腹膜炎に対し,虫垂瘻を造設することで術後の肛門側注入を可能にし,回盲部を温存しえた症例を報告する.症例は胎児期より胎便性腹膜炎が疑われていた女児.出生後より腹部膨満が増悪し,出生当日に緊急手術を施行した.回盲部から1.5 cm口側の回腸に閉鎖を認め,閉鎖部の口側で回腸が穿孔し,腹腔内に胎便が漏出していた.腹腔内は炎症と癒着が高度であり,一期的回腸吻合は困難と判断し回腸瘻造設を選択した.さらに,術後に肛門側腸管注入ができ,ストマ閉鎖時に回盲部切除を回避できる方法として,虫垂瘻を造設した.術後は虫垂瘻から肛門側注入を行うことで良好な体重増加が得られた.また,ストマ閉鎖時にはほぼ口径差のない吻合が可能で回盲部を温存しえた.