日本小児外科学会雑誌
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おしらせ
追悼文
原著
  • ―自施設6例の経験―
    吉田 寛樹, 吉田 索, 山下 晃平, 靏久 士保利, 東舘 成希, 加治 建, 浅桐 公男
    2026 年62 巻4 号 p. 860-865
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】小児直腸脱の頻度は少ないが,腸管脱出の高度例や難治例では外科的治療が必要となる.本邦では侵襲性や整容性を考慮し腹腔鏡手術の報告が多いが,欧米では経会陰式であるDelorme法の報告が見られる.今回,我々が経験した小児直腸脱の特徴とDelorme変法の有効性を評価することを目的とした.

    【方法】2013年1月から2023年4月までに直腸脱に対しDelorme変法を施行した6例について,術前の臨床的特徴,手術関連情報,術後経過について検討した.

    【結果】対象は6例,患者背景として発達遅滞1例,高位鎖肛(直腸尿道瘻)術後1例を認めた.直腸脱に対する初回手術として,1例にGant-三輪法を実施していた.発症時年齢の中央値は2歳6か月,診断から手術までの期間の中央値は71日(20日~1,973日),手術時年齢の中央値は4歳0か月(2~8歳)であった.脱出腸管長は中央値3.0 cm(2~5 cm)であった.切除した直腸粘膜長は中央値6.8 cm(6.0~15.0 cm),手術時間の中央値は121分(60~171分),出血量の中央値は20 ml(0~32 ml)であった.入院期間は中央値8.0日,周術期合併症は認めなかった.術後再発は1例のみで,術後1年6か月後に,頻回下痢時に一過性の直腸粘膜の再脱出を認めたが,便性コントロールにて改善した.

    【結論】自験例の検討により,ほとんどの症例で再発や合併症なく経過していた.Delorme法は小児直腸脱における経会陰手術の初回治療法として,考慮に値すると考えられた.

症例報告
  • 船橋 功匡, 石橋 脩一, 真子 絢子, 久守 孝司, 日髙 匡章
    2026 年62 巻4 号 p. 866-871
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は15歳女児.数か月前から食後の嘔吐や腹痛があり,体重減少も生じたために近医を受診した.CTで空腸・回腸に分布する腸管気腫と胃・十二指腸の著明な拡張を指摘され,当科紹介となった.Vital signsは安定しており,腹部圧痛を認めないことから絶飲食補液による経過観察と段階的な精査を行うこととした.入院後数日で腸管気腫は腹部X線上の改善傾向を示した.上部消化管内視鏡検査でVater乳頭の口側に膜様狭窄を認め,先天性十二指腸狭窄症および十二指腸狭窄による胃・十二指腸の内圧上昇を主因とした腸管気腫症と診断した.内視鏡的バルーン拡張術を行うも効果は不十分で,腹腔鏡下十二指腸十二指腸吻合術を追加で施行し,良好な転帰を得た.先天性十二指腸膜様狭窄に合併する腸管気腫症の報告は稀有であり,病態把握と治療法の決定に苦慮した症例のため報告する.

  • 安達 聖, 渡井 有, 佐藤 英章, 中山 智理, 田山 愛, 大澤 俊亮, 木村 翔大, 富永 美璃
    2026 年62 巻4 号 p. 872-876
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    腹腔鏡補助下直腸肛門形成術においては瘻孔遺残・憩室形成が術後問題となるとされている.我々は,直腸尿道瘻を伴う中間位鎖肛の瘻孔切離部位同定にタムガイド®を応用した.

    症例は0歳5か月男児.注腸・尿道造影から直腸尿道球部瘻を伴う中間位鎖肛と診断し,腹腔鏡下鎖肛根治術を施行した.直腸盲端より直腸尿道瘻を確認したが尿道走行と瘻孔開口部の位置関係は不明瞭であった.術前留置した尿道カテーテル内にタムガイド®を挿入し,光源を点滅させたところ尿道走行と瘻孔が明らかになり,適切な位置で瘻孔を結紮・切離することが可能であった.

    タムガイド®は光源装置とカテーテルから構成される経鼻胃管先端位置確認システムである.先端が高輝度LEDの光源であり,明瞭かつ正確に瘻孔開口部を確認することができ,従来報告されている膀胱鏡やICG蛍光尿管カテーテルを使用する方法よりも簡便・安全に瘻孔切離を行うことが可能であった.

  • 畑中 良太, 片山 修一, 花木 祥二朗, 人見 浩介, 仲田 惣一
    2026 年62 巻4 号 p. 877-882
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    日齢2の女児.胎児期に特に異常の指摘はなく,在胎39週6日,体重2,790 gで出生した.出生後より排便を認めず腹部膨満が増強し,活気不良と嘔吐が出現したため当院へ新生児搬送された.肛門外観は正常であったがネラトンチューブは挿入不能であり,超音波検査で直腸が肛門近傍で盲端となっていることから直腸閉鎖と診断した.

    超音波検査では,肛門窩縁から盲端底部までの距離は8 mmと浅く,肛門側盲端底部と口側直腸盲端との距離も約1 mmと近接していたため,経肛門的に一期的根治術が可能と判断した.手術では経肛門的に肛門窩皮膚を切開し,直腸盲端を同定・確保したのち直腸内腔を開放し,肛門管と端々吻合を行った.

    術後経過は良好であり,術後1年6か月現在も排便機能は良好である.直腸閉鎖の治療においては二期的手術が選択される症例も少なくないが,本症例のように慎重に適応を選択すれば,経肛門的アプローチによる一期的根治術は有効な選択肢となり得る.

  • 福浦 一悠, 井上 真帆, 井口 雅史, 文野 誠久, 飛鳥 暉昌, 吉田 秀樹, 河原﨑 彩子, 大曽根 眞也, 家原 知子, 小野 滋
    2026 年62 巻4 号 p. 883-889
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    小児のフルニエ壊疽は稀であるが,敗血症や多臓器不全を伴い致死的となることもある.今回,急性リンパ性白血病(ALL)治療中にフルニエ壊疽を発症した患児を救命し得たため報告する.症例は3歳女児.ALL再寛解導入療法中に敗血症性ショックを呈した.ショックは改善したが左殿部びらんが出現し,軟部組織感染症を疑われ,第4病日に当科紹介となった.CTにて膿瘍形成やガス像は認めなかったが,翌日殿部病変が拡大し,フルニエ壊疽疑いとしてS状結腸人工肛門造設,筋膜減張切開,デブリードメントを施行した.第12病日に下腹部への壊死性筋膜炎拡大に対し追加切開を行い,第37病日に直腸壊死に対する腹腔鏡補助下直腸切断術を施行した.第77病日の植皮術を経て,第97病日から化学療法再開に至った.フルニエ壊疽は診断の遅れが重篤化につながるが,免疫抑制下では膿瘍形成などの典型的画像所見を欠くこともあり,丁寧な身体診察に基づいた経時的な評価が極めて重要である.

  • 池田 修斗, 矢本 真也, 鈴木 謙, 岸田 匠平, 東堂 まりえ, 髙間 勇一, 神山 雅史
    2026 年62 巻4 号 p. 890-895
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    片肺全無気肺を呈した巨大囊胞性縦隔病変に対し,囊胞ドレナージによる減圧を先行させ,呼吸状態を安定化させた後に根治的摘出を行う二期的手術を施行した.症例は左主気管支を閉塞する巨大囊胞性病変により左全無気肺を呈した1歳男児.左無気肺により大血管が集簇しており,患側(左側)アプローチが困難であったため,体外式膜型人工肺(ECMO)準備下に健側(右側)開胸による囊胞ドレナージで白濁粘液を排出し左肺の再膨張を得た.呼吸循環動態の安定後,10日後に囊胞摘出を施行した.術後経過は良好で,合併症なく退院した.病理診断は気管支原生囊胞であった.片肺全無気肺を呈する縦隔囊胞性病変では,麻酔導入時の換気不全や循環虚脱の危険が高く,減圧を先行させる二期的手術は安全かつ有効な治療戦略であると考えられた.

  • 川本 里紗, 田中 夏美
    2026 年62 巻4 号 p. 896-900
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2歳4か月の男児.40度の発熱と感冒症状が2日間続き,近医受診して感冒薬を処方された.第4病日から黒色便と活気不良が続き第5病日に前医へ救急搬送され,Hb 10.6 g/dlの貧血があり上部消化管出血の疑いで緊急入院した.腹部造影CT検査で胃体上部後壁に径17 mmの囊胞性病変を認め,絶食とプロトンポンプ阻害薬投与で経過観察中の入院3日目にHb 8.9 g/dlに低下した.上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に糜爛を伴う隆起性病変を認め,精査加療目的に入院9日目に当院へ転院した.出血を伴う胃粘膜下囊胞性腫瘤の疑いで手術を予定したが,転院4日目の腹部造影CT検査で囊胞性病変が消失しており,転院5日目の上部消化管内視鏡検査と超音波内視鏡検査で胃粘膜下病変は消失し同部に潰瘍瘢痕を認めた.胃壁内血腫と診断しH2ブロッカーと鉄剤内服で貧血が改善して全身状態良好となったため転院8日目に退院した.1年後の腹部造影CT検査で胃壁内血腫の再発なく経過している.

  • 納所 洋, 尾山 貴徳, 岡 詠吾, 井関 昭子, 佐藤 由美子, 岡野 寛, 谷本 光隆
    2026 年62 巻4 号 p. 901-905
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    恥骨上部に乳児線維性過誤腫(fibrous hamartoma of infancy: FHI)を生じた1歳男児の1例を報告する.生下時より同部に淡青色母斑・発毛を認め,生後6か月頃に直下の硬結が出現し緩徐に増大した.超音波検査では皮下に高エコー腫瘤を,MRI検査ではT1低信号・T2高信号の境界不明瞭な腫瘤を認めた.良性腫瘍を疑い1歳5か月時に母斑を含めて全摘した.病理学的に脂肪組織・膠原線維束・未熟間葉系細胞の三相構造を認めFHIと診断した.FHIは稀な良性軟部腫瘍で術前診断は困難であるが,乳幼児の皮膚変化を伴う皮下腫瘤においては念頭に置くことが重要である.手術においては腫瘍の切除範囲と機能性・整容性温存とのバランスを考慮した判断が必要である.

  • 田島 美咲, 岡本 晋弥, 渥美 ゆかり, 鹿子木 悠, 渡邉 健太郎
    2026 年62 巻4 号 p. 906-910
    発行日: 2026/06/20
    公開日: 2026/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    腸重積症の多くは特発性腸重積症であるが,器質的疾患を有する症例が含まれる.症例は腹痛を主訴に救急受診した15歳の女児で,腹部造影CT検査で先進部に腫瘤性病変を伴う小腸小腸重積を指摘され,また肺動静脈瘻と重積部以外の小腸内に複数の腫瘤性病変を認めた.単孔式腹腔鏡補助下腸重積解除術と腫瘤生検を行い,病理検査結果は過誤腫性ポリープであった.遺伝子検査を含む追加検査を行い,遺伝性出血性毛細血管拡張症を伴う若年性ポリポーシス症候群の確定診断に至った.若年性ポリポーシス症候群は悪性腫瘍の高リスク群であるため定期的なサーベイランスが必要で,SMAD4陽性例では血管病変にも留意が必要である.小腸小腸重積を呈する症例は稀であるが,診断によって適切なサーベイランスに繋げることができた.小腸ポリープは腸重積が再発する可能性があり,若年性ポリポーシス症候群の診断に至った場合は可及的早期の内視鏡的ポリープ切除が望ましい.

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