日本小児外科学会雑誌
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小児期卵黄嚢癌の治療とその問題点
柿田 豊藤本 隆夫下村 洋宮野 武石本 浩市藤田 宏夫高田 功二斎藤 正博薮田 敬次郎
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1995 年 31 巻 6 号 p. 876-881

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抄録

悪性胚細胞腫瘍の治療成績は近年の化学療法の導入により飛躍的に改善しつつあるが,完全寛解が得らない症例や強い副作用を認める症例も経験する.昭和61年から平成5年までに当施設で経験した小児卵黄嚢癌7例に関してその治療法と問題点につき検討した.診断時年齢は7ヵ月から8歳5ヵ月,原発部位は精巣2例,卵巣2例,仙尾部2例,膣1例で,精巣原発の2例が病期I,他は病期IIIであった.全例手術の後に化学療法を開始し,血清アルファフェトプロテイン(AFP)を腫瘍マーカーとして追跡した.性腺(精巣および卵巣)原発の4例は治療後速やかに血清AFPが正常化し現在まで再発の徴候は認められていないが,仙尾部原発のうち1例はbleomycin (BLM)の副作用により死亡,他の1例および腔原発の1例は難治性で治療後も血清AFPが正常化せず手術と化学療法を繰り返している.近年のシスプラチン(CDDP)を含む化学療法の開発により治療成績は確かに向上しており,delayed primary surgeryの適応も考えられるようになりつつある一方で,強い副作用により治療を継続できな症例や難治性の症例もあり,投与量の調節や,骨髄移植のようにリスクの大きい治療の施行時期の判断が今後の課題と考えられた.

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