日本小児外科学会雑誌
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小児固形悪性腫瘍治療における骨髄抑制 : 特に最近の大量化学療法を中心とした比較検討
大野 康治財前 善雄水田 祥代
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1996 年 32 巻 7 号 p. 1073-1077

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抄録

小児固形進行悪性腫瘍に対する最近の大量化学療法と従来の化学療法とを骨髄抑制について比較検討した.1990年以降の小児固形悪性腫瘍患者38人を対象とし,これらに対し総計196回の化学療法を施行した.各化学療法は,その強さにより軽度群,中等度群,高度群の3群に分類した.各化学療法前後の血液学的データ (ヘモグロビン値,白血球数,血小板数) の推移,および用いた各種血液学的補助療法について分析した.各群ともに化学療法後に血液学的データの各因子は5%以下の危険率で有意に減少した.特に大量化学療法を主体とした高度群ではこの傾向が顕著で,化学療法後の平均値は白血球数436/μl,血小板数3.4×10^4/μl まで低下した.このことは進行神経芽腫に対する最近のプロトコールによる骨髄抑制の強さが輸血を中心とする従来の補充療法だけで対応する限界を超えていることを意味している.また,高度群においては大量化学療法による骨髄抑制に対して,92.5%の症例で顆粒球コロニー刺激因子を使用していた.顆粒球コロニー刺激因子は,骨髄機能の回復に要する期間を非使用例と同程度にまで短縮する (高度群 : 使用例21日,非使用例23日) という点できわめて有効な治療法であることが確認された.以上より,大量化学療法は極めて強い骨髄抑制を呈し,これに対する補助療法としては保存的な補充療法のみでは不十分であり,顆粒球コロニー刺激因子,自家末梢血幹細胞移植等の積極的な支持療法が治療成績を向上させる上にも不可欠なものであると考えられた.

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