日本小児外科学会雑誌
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小児の術中気道確保法としてのラリンゲルマスクの再評価
堀本 洋吉岡 斉鈴木 明藤野 晋司黒嵜 明子
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1996 年 32 巻 7 号 p. 1084-1087

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抄録

挿入の容易さ,挿入に際して,また挿人後も患児に優しいなどの理由で急速に臨床場面での使用頻度が高まっていたラリンゲルマスク (以下 LMA) も使用開始から5年を経た静岡県立こども病院ではその使用頻度が retrospective にみた研究からこの3年間に減少していることか分かった.考えられる麻酔科医が敬遠している理由として,胃への吸入ガス流入を予防するため陽圧呼吸の際には常に吸気内圧に気を付けていなければならないこと,呼気炭酸ガス分圧から想像される高い血中炭酸ガス分圧値,常に胃からの逆流の可能性があること,合併症の発生なしで LMA を抜去する際にはある程度の熟練が必要なことなどが挙げられ,セボフルラン麻酔下では容易に筋弛緩薬なしに挿管できることも LMA が減少し挿管例が増加した理由と考えられた.鼠径ヘルニア手術では使用頻度の有意な減少がみられないこと,LMA 使用群での年齢,手術時間の3年前との比較から今後の LMA の使用される対象はより年齢の高い,手術時間の短い症例になっていくと考えられた.しかし LMA は今後も麻酔科医の選択できる気道確保法のひとつとして重要な地位を持ち続けていくことは確実である.

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© 1996 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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