抄録
^99mTc-DTPA-galactosyl human serum albumin肝シンチグラフィ(以下, GSAシンチと略す)は主として成人領域において肝予備能評価に有用とされ, その指標として主にHH_15とLHL_15が用いられている.今回我々は小児を対象としてGSAシンチを施行し, 従来の指標の他にアイソトープの肝への集積速度に着目した指標を加え, GSAシンチの有用性を検討した.肝機能異常を疑われた小児31例に, のべ42回のGSAシンチを施行した.30分間のダイナミック収集を行い心および肝の時間-放射能曲線から, HH_15, LHL_15および心放射能+肝放射能に対する肝放射能の比が0.85になる時間T_<O.85>(分)を算出し, 各指標と血液生化学検査値との相関を調べた.同時期に肝生検を施行した20例ではその病理組織所見と各指標値を比較検討した.さらにT_<0.85>が5分未満のものを第I群(n=19), 5分以上10分未満のものを第II群(n=9), 10分以上のものを第III群(n=14)としてT_<0.85>とHH_<15>, LHL_<15gt;との関連を比較した.LHL_<15gt;, T_<0.85>はChE, AlbおよびHPTと, HH_<15>はPT指数, ChEと相関を認めた.病理組織所見では線維化と炎症の進行に伴い, いずれの指標も悪化する傾向がみられた.T_<0.85>とHH_<15>の間には有意な正の相関(r=0.76)を, T_<0.85>とLHL_<15gt;には有意な負の相関(r=-0.97)を認めた.HH_<15>, LHL_<15>は第I群に属する全例が正常(HH_<15>≦0.54, LHL_<15>≧0.94)であったが, 第III群に属する14例中11例がともに異常値を示した.第III群中T_<0.85>が15分以上のものは6例で, うち4例が肝移植の適応となった.GSAシンチは小児においても肝予備能評価に有用であり, T_<0.85>に基づいた臨床病期分類(第I∿III群)は肝移植の適応を含めた治療方針の決定に有用と考えられた.