2000 年 36 巻 7 号 p. 1027-1033
【目的】先天性横隔膜ヘルニアの重症呼吸不全例に対するECMOの臨床経験より, ECMOをより安全に行うためには出血傾向を軽減, 克服する必要があると考えられた.そこで, 従来用いられてきたローラーポンプ(RP)に比し血小板を含めた血球成分の破壊が少ないといわれるバイオポンプ(BP)を用いた新生児用ECMO回路を試作し両者の比較実験を行った.【方法】体重3∿5 kgの雑種幼犬を用い呼吸不全状態を作製し, V-VバイパスにてRP(n=5), あるいはBP(n=5)を用いECMOを行った.酸素運搬能及び炭酸ガス除去能を比較検討した後, 50ml/kg/minの流量で11時間潅流を行い, 遊離ヘモグロビン値, 血小板数, フィブリノーゲン値, 肝機能, 腎機能の推移を比較した.【結果及び結論】上記検討項目においてBP群, RP群間に有意差はなかったが, 溶血量はBP群においてかえって多い傾向にあり, 本実験系において, BPの利点を見出すことはできなかった.