2001 年 37 巻 1 号 p. 59-63
【目的】出生率の低下や小児外科施設の増加で各小児外科施設ごとの症例数が減少していることが問題になっている.しかし, 実際にはどのくらいの小児外科需要があるのか, これまでに明らかにされたことはない.この研究は小児外科医療を考える上で基礎となる小児外科医療の需要の調査を行った.【方法】過去5年間に国立岩国病院小児外科に入院した患者から岩国市在住の患者を抽出し, 人口10万人あたり, および小児人口1万人あたりの小児外科入院患者数を割り出した.【結果】岩国市から5年間に平均88人の入院患者数がみられた.岩国市の人口(109, 000人)から人口10万人あたりの小児外科入院患者数を計算すると年間81人であった.岩国市の小児人口は18, 500人で, 小児人口1万人あたり年間入院患者数は47人であった.この数字が全国一律と仮定すると, 日本のすべての小児外科患者数は101, 000人と推定される.しかし, 実際に全国の小児外科学会認定施設(準および教育関連施設を含む)に入院した患者総数は38, 706人であり, 大きな開きがある.【結論】小児外科学会の各認定施設で診療されている患者数は小児外科医療の需要の一部を担っているに過ぎず, 小児外科医療の一部が一般外科のなかで行われていることがうかがえる.今後は, 小児外科医が行う診療の質をさらに向上させ, 小児外科医療は小児外科医が行う方が患者あるいは社会にとって有益であるということを明確にすることが必要である.そうすることにより, 患者数の確保と共に小児外科の社会的地位も向上することができると思われる.