2002 年 38 巻 6 号 p. 863-868
Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)の2症例についてインプリント遺伝子の解析を行った.BWSはゲノムインプリンティングが関与している代表的な疾患の一つで, Wilms腫瘍を含む胎児性腫瘍を合併する.疾患遺伝子座である11番染色体短腕15.5領域には, 複数のインプリント遺伝子がクラスターを形成して存在し, BWSにおいて主にIGF2, H19, p57^<KIP2>, LIT1のインプリント遺伝子の異常が報告されている.今回経験した2症例のうち1例にLIT1プロモーター領域にあるDMR-LIT1 (differentially methylated region of LIT1)のメチル化異常を認めた.しかし, 2症例ともIGF2の過剰発現の原因となるトリソミーや父性ダイソミー, H19上流DMRのメチル化異常は認められなかった.またp57^<KIP2>の変異も認められなかった.BWSの発症機序とゲノムインプリンティングについての考察を加え報告する.