日本小児外科学会雑誌
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原著
当院における13トリソミー・18トリソミー症例の外科治療と予後に関する検討
―倫理的観点をふまえて―
中村 弘樹古賀 寛之宮野 剛土井 崇岡和田 学山高 篤行
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2016 年 52 巻 7 号 p. 1285-1289

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抄録

【目的】周産期医学の著しい進歩により,外科的疾患を持つ新生児の生命予後は徐々に向上している.しかし,染色体異常を合併する症例では倫理的問題も含め,診断・治療方針の決定から退院まで診療に難渋する場合もある.当科において経験した染色体異常を伴う外科疾患症例について検討する.

【方法】1980 年から2015 年までに小児外科が関わった13 トリソミー,18 トリソミーを有した症例は36 例であった.そのうち転帰不明の4 例を除外した32 例に関して,原疾患,在胎週数,出生体重,転帰と外科治療の関連について後方視的検討した.

【結果】平均在胎週数;33.6 週,平均出生体重;1,459.7 g.疾患の内訳は消化器・腹壁疾患25例,呼吸器疾患5 例,腫瘍1 例,その他の疾患1 例.心疾患合併率は90.6%.生存期間は小児外科手術施行群91.8±250.6 日,非施行群3.5±3.5 日であった(P=0.015).心臓血管外科手術施群2,559.5±1,740.5 日,非施行群74.1±227.0 日であった(P=0.007).平均生存期間は小児外科および心臓血管外科手術施行例でともに手術非施行例に比して有意に長かった.

【結論】13 および18 トリソミーの生命予後は不良であるが長期生存する可能性もあり,その治療方針については医療スタッフチーム,両親とともに児の最善の利益を得るため十分な検討を要する.外科治療の有無が生命予後に影響を与えると考えられるが,多職間によるチームとして,患児・家族の社会背景を十分に理解し治療にあたる姿勢が望まれる.また,重症例に対するサポートに関しては,更なる対応改善を要すると思われる.

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