2017 年 53 巻 7 号 p. 1242-1246
【目的】漏斗胸に対するNuss法は,良好な胸郭形態を得るための有用な手術方法である.しかし,手術適応年齢に関しては明確な根拠が示されていない.年少例では術後再発の危険性も指摘されている.年長例(10歳以降のバー抜去)における抜去後3年の経過観察例において,胸郭形態を胸部X線によるvertebral index(VI)で評価し,胸郭形態の変化,再発の危険性について検討した.
【方法】2004年11月から2013年3月31日にNuss手術を施行した症例のうち,10歳以降でバーを抜去し,抜去後3年以上の経過観察が可能であった18例(男児13例,女児5例)を対象にした.Nuss手術時年齢8.3±1.2歳,バー抜去手術時年齢11±0.7歳,バー留置期は30.7±10.7か月年であった.Nuss手術前,バー抜去直後(1か月以内),抜去後1年,2年,3年の胸部X線側面像からVIを計測した.
【結果】VIは,Nuss手術前31.7±7.9,バー抜去直後(1か月以内)23.7±2.9,抜去後1年23.9±3.2,抜去後2年25.2±3.8,抜去後3年24.8±2.9であった.抜去直後に対して1年後,2年後,3年後では,いずれも有意な変化は認められず,胸郭の扁平化は回避されていた.
【結論】Nuss法術後,10歳以上でバー抜去した小児例では術後3年の経過を通してVIに大きな有意差は認められなかった.この結果,10歳以上でバー抜去した小児例で術後の再陥凹はおこりにくいことが示唆された.Nuss法の手術時年齢として,8歳以降が望ましいということが示された.