日本小児外科学会雑誌
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先天性胆道閉鎖症に対する胆道再建術の限界について : 肝病理組織所見の再検討から
今泉 了彦
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1974 年 9 巻 6 号 p. 650-662

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抄録

我々が東大第二外科・小児外科で経験した先天性胆道閉鎖症のうち, 67例の肝組織所見から本症の病態の進行と胆道再建術の適応の限界につき再検討を行なった.肝組織学的に, 強度の線維化と小葉間胆管の器質的閉塞ならびに門脈領域の破壊による広範な胆汁路の遮断をみるものでは, 肝門部以下での胆道再建術で充分の胆汁誘導を得ることは期待できず予後不良と考えられる.我々の症例中かかる変化を示したものには長期生存例はなかった.全症例の半数が肝組織学的にすでに不可逆的変化を示し, 4カ月以後の症例においては実に8割が手術の適応外と考えられた.早期手術の意味を再び強調したい.一方3カ月以前に手術を受けた症例群でも3割に相当する症例がすでに肝組織レベルにおいて胆道再建術の適応外と考えられる所見を示した.本症の治療に当っては, 早期診断・早期手術が重要であり, 手術は今後も引き続き充分量の胆汁誘導が得られるよう, 様々な創意と努力が必要だが, たとえ早期手術が行われてもすでに肝組織レベルからみて胆汁誘導が不可能と考えられるものもあり, これらは胆道再建術に対する1つの限界を示すものである.

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