気管支学
Online ISSN : 2186-0149
Print ISSN : 0287-2137
ISSN-L : 0287-2137
気管粘膜の著明な変化を伴った縦隔海綿状血管腫の 1 例
菅原 斉大崎 能伸山崎 泰宏酒井 博司中野 均藤兼 俊明佐々木 信博小野寺 壮吉藤田 昌宏赤石 直之
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 10 巻 5 号 p. 562-568

詳細
抄録

症例は65歳, 女性。嗄声を主訴に来院。胸部X線写真では気管の右方偏位を認めた。気管支鏡では, 光沢を失った浮腫状の粘膜面に斑状のびらんが多発した易出血性病変を認め, また, 声門直下の気管粘膜には表面が灰白色で粗造な結節性隆起を認めた。胸部CTでは気管周囲に甲状腺下極から気管分岐部まで連続したwater density massと, その一部に小粒状の石灰化を認めた。気管支動脈造影では, 気管支動脈から気管および左右の気管支系に沿って血管の増生と造影剤のpoolingがみられた。喀痰細胞診では悪性細胞を認めず, 気管粘膜生検では扁平上皮化生を認めた。縦隔鏡では気管周囲は非常に血管に富む易出血性の脂肪様組織で覆われていたが, 気管との剥離は容易であった。生検標本で気管周囲に不規則な海綿状の血管成分の増生を認め, 海綿状血管腫と診断した。縦隔腫瘍の1%程度のまれな疾患である。

著者関連情報
© 1988 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top