抄録
高濃度酸素による気道傷害は, 従来重要視されてきた肺胞毛細血管領域のみならず気管支上皮にも強く現れるであろうとの観点から超微形態学的検索を行った。14匹のWistar系ratsを80%以上の高濃度酸素に持続的に暴露, その結果40∿63時間で全て死亡した。体重と生存時間は正の相関を示し, 肺・体重比は, 対照群と比べて有意な増加を示した。超微形態学的には, 繊毛細胞の丈の著明な低下, 腺毛の丈の若干の低下, 繊毛密度の低下と微繊毛の対照的増加を認めた(いずれもP<0.001)。三系統の細胞(繊毛細胞, 粘液細胞, 基低細胞)の内では, 核・胞体ともに繊毛細胞の変性が最も強く, 剥離・脱落傾向も強かった。気管支上皮においては, 繊毛細胞が高濃度酸素のtarget cellである可能性が示唆された。