抄録
気管支喘息は特徴的な病態として気管支の過敏性亢進がみられる。これは, 臨床的には, 極く少量のアセチルコリン, ヒスタミンなどの吸入による気管支狭窄の誘発で証明される。この気道過敏性亢進の原因を知ることが気管支喘息発症機序の解明につながることであり, 最近多くの研究結果が報告されているが, いまだ十分明らかではない。気管支側の要因として, 自律神経系の異常が従来からいわれているが, 迷走神経系のムスカリン性アセチルコリン受容体(mACh-R)や交感神経系のアドレノセプターの解明が進んでいる。われわれの成績では, mACh-Rの増加がみられ, とくに, そのサブタイプであるM_3受容体の増加が明らかであった。アドレノセプターでは, 喘息患者ではβ_2受容体の減少がみられたが, 実験喘息モデルを用いたβ_2受容体のmRNAの検討では, 抗原感作によって肺胞のmRNAの分布は減少し, 抗原誘発による発作時にはさらに減少した。気管支と肺のmRNAの分布では, 明らかに気管支で少ない結果が得られた。気道の炎症の立場からの研究結果では, 気道洗浄液(BALF)中の好酸球, 好中球が発作誘発時に増加し, 病理組織像でも気管支壁内へ好酸球の浸潤が明らかであった。また, 気管線毛運動は好酸球や血小板活性化因子(PAF)などによって著しく障害された。さらに, これらの炎症細胞の吸入によってもヒスタミン吸入に対する気道反応は明らかに亢進した。さらに, ストレス負荷は, 気道への好酸球, 好中球の浸潤を亢進させ, 気道の炎症に密接に関係することが明らかにされた。その他, 好酸球を中心とした細胞間相互作用やサイトカインとの関係などについて, 教室の最新の研究結果を報告した。