抄録
症例は82歳の女性で, 自宅の火事により気道熱傷を被った。入院後, 気管支ファイバースコープ(FOB)による連日のbronchial toiletを実施することにより, 救命が可能であった。受傷時に黒色煤の沈着が顕著な部位は, 気管分岐部や右気管支であり, これらの部位の炎症は, 左気管支に比べ, 障害の程度が高く, 治癒が遷延化する傾向が認められた。第22病日には, 右中間幹と底幹のspurに気管支ポリープが出現し, 摘除をかねて生検したところ, 炎症性ポリープとの組織所見が得られた。さらに第30病日には, 摘除したポリープの部位のまさにとなりにポリープの再発が観察された。気道熱傷の比較的早期の合併症としての, 再発性の気管支炎症性ポリープの発現は, きわめて稀なため, ここに報告した。