抄録
胸水貯留を伴う悪性胸膜中皮腫7例の胸腔鏡所見について検討した。壁側胸膜に多発性小結節を4例に認め, このうち2例には臓側胸膜にも多発性小結節を認めた。臓側胸膜にも結節を認めた例はより病変の進行した例であると思われた。胸膜の多発小結節は癌性胸膜炎でみられるものに比べてやや小さく, 結核性胸膜炎でみられるものに比べるとやや赤色調であると思われた。また白色調の壁側胸膜肥厚所見を1例に認め早期例であることが示唆された。フィブリン網形成のため胸腔内を十分に観察できない例が2例あったが, その他の5例ではいずれも胸腔鏡下生検組織により確定診断が得られた。胸腔鏡に使用するスコープは気管支ファイバースコープでも十分可能であったが, 視野の広さや生検組織の大きさ等の点で硬性鏡の方が優れていると思われた。胸水貯留型の悪性胸膜中皮腫では, 壁側胸膜の多発小結節がその典型的な所見であると考えられた。