気管支学
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左完全無気肺をきたし, 気管支内腫瘍との鑑別に難渋したアレルギー性気管支肺アスペルギルス症と考えられた 1 例
塩田 智美仲谷 善彰坂本 匡一岩瀬 彰彦青木 茂行松岡 緑郎
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1998 年 20 巻 2 号 p. 128-132

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抄録

症例は79歳女性, 感冒にて近医受診し, 胸部X線写真にて左無気肺を認めた。某病院にて気管支鏡施行中, 左主気管支内の粘稠白色塊が一部右主気管支内に流れこみ, 急性呼吸不全を呈し当院緊急搬送となった。白色粘稠な腫瘤塊が左主気管支内腔を完全に閉塞し, 気管分岐部を越え右主気管支内へ突出した状態であった。喀痰にしては, 一期的な吸引が困難で, 一方悪性腫瘍にしては, 周囲の粘膜所見が乏しい状態であった。腫瘤に対し計3回計23000Jのレーザー焼灼を施行したが, 左主気管支の開通は得られなかった。腫瘤の病理組織は好酸球に富む粘液であった。気管支喘息発作にて入院歴があり, 入院後施行した検査では血性中IgEが著明に上昇, アスペルギルス抗原に対する沈降抗体が陽性, 退院後の胸部CTでは, 軽度の中枢性気管支拡張像を認めた。一方末血好酸球増多については休日の為評価できず, また, 喀痰の培養ではアスペルギルスは検出されなかった。以上より確定診断には至らなかったが, 臨床的にはアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(以下ABPAと略す)と考えられた。急性期のABPAでは, 一側完全無気肺の病態も来しうる事を念頭に置く必要があると考えられた。

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© 1998 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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