目的.通常鉗子で到達困難な肺野末梢病変に対する, 笹田式経気管支的屈曲生検鉗子(Sasada transbronchial angled forceps;以下STAF)を用いた組織採取の有用性を, 通常鉗子を用いた症例を対象に病理組織学的に両者を比較検討し, 肺組織採取におけるSTAFの有用性について検討した.方法.我々は先端の屈曲した新しい生検鉗子, STAFを開発した.またSTAFを用いた組織採取のための新しい生検法, curve-shaped transbronchial biopsy法(以下CS-TBB法)を考案した.通常鉗子で到達困難と判断した110例に, X線透視下にSTAFと通常鉗子の両方を用いて経気管支生検を行った.STAFと通常鉗子で得られた組織検体に対し, それぞれ病理組織学的検討を行い比較検討した.両者の統計解析にはMcNemar's testを用いた.結果.全症例での診断率はSTAF78.2% (86/110), 通常鉗子39.1% (43/110)でSTAFが有意に優れていた(P<0.001).悪性病変ではSTAF83.3% (60/72), 通常鉗子44.4% (32/72), 良性病変ではSTAF68.4% (26/38), 通常鉗子28.9% (11/38)で良悪性ともにSTAFが有意に優れていた(P<0.001).部位別検討では右上葉+左上区での診断率が, STAF76.7% (46/60), 通常鉗子36.7% (22/60)であり, 他部位と比較しSTAFの有効性が最も高かった(P<0.001).サイズ別検討では10mm以下を除いたすべての病変でSTAFが優れていた.合併症は主に気胸と出血であったがいずれも軽快している.結論.STAFは通常鉗子で到達困難な肺野末梢病変の組織採取に有効であった.
