2006 年 28 巻 5 号 p. 359-364
症例.45歳,女性.主訴は湿性咳嗽.2003年8月下旬から湿性咳嗽が出現したため近医を受診し,胸部X線にて異常陰影を指摘された.精査加療目的で同年9月当院に紹介入院となった.胸部CT検査では右上葉に空洞を伴う塊状影を認め,胸部造影MDCTでは胸部下行大動脈より病変部を潅流する異常血管を認めた.気管支鏡検査では右気管気管支を認めた.血液検査所見ではCA19-9が6,590U/mlと著明高値であった.気管気管支に合併した肺葉内肺分画症と診断し,右上葉切除術を施行した.CA19-9は術後に正常化した.結論.CA19-9の上昇を伴う気管気管支に併発した右上葉の肺葉内肺分画症の1例を経験した.これら2つの疾患が合併した報告はまれであり,肺葉内肺分画症の発症機序を考える上で貴重な症例と考えられたので報告する.