気管支学
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肺腺癌に合併した気管支神経鞘腫の1例
佐藤 征二郎鈴木 信明富樫 賢一
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2010 年 32 巻 2 号 p. 181-185

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抄録

背景.気管支発生の神経鞘腫はこれまで本邦にて本症例を含めて51例の報告をみるのみである.また,神経鞘腫に隣接して発生した肺腺癌の報告例はない.今回われわれは,左B^<1+2>の入口部に発生した神経鞘腫合併肺腺癌の1例を経験したので報告する.症例.症例は75歳男性.主訴は咳嗽,喀痰.2年前より症状あり受診.胸部CT上,左上葉S^<1+2>領域に異常陰影を認めた.4か月後のフォローCTで同結節の増大と腫瘍マーカーの上昇を認めた.気管支鏡検査にて左B^<1+2>に隆起性病変があり,生検を行ったところ抗S-100蛋白抗体陽性の紡錘形細胞を認め,神経鞘腫の診断となった.悪性の可能性も否定できず手術による治療を選択し,術中迅速診断にて肺腺癌の診断を得たため,左肺上葉切除リンパ節郭清を行った.切除病理所見では肺腺癌の中枢に不連続性に複数の神経鞘腫を認めた.結果.術後経過は良好で現在再発兆候は認めていない.結論.極めて稀ではあるが,神経鞘腫に隣接し肺癌の発生の可能性もあることより,治療前の正確な診断と適切な治療法選択が肝要である.

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© 2010 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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