2020 年 42 巻 1 号 p. 6-13
背景・目的.Osimertinibを2次治療以降で使用する場合,再生検でT790M耐性変異を検出する必要がある.しかし,再生検についての報告は少ない.今回,再生検の現状,T790M耐性変異検出に影響を与える因子をretrospectiveに評価した.方法.2016年1月から2018年4月の間,当院で再生検が行われたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌を抽出し,再生検成功率とT790M陽性率,T790M耐性変異が検出された患者と複数回の生検施行患者の背景を調査し,影響を与える因子を検討した.結果.再生検が行われた58人を対象とした.1度目の再生検成功率は74.1%(43/58人),T790M陽性率41.9%(18/43人)であった.2度目の再生検成功率は78.6%(11/14人),T790M陽性率63.6%(7/11人)となった.全再生検施行回数は75回,全再生検成功率76.0%(57/75回),全T790M陽性率43.9%(25/57回)であった.T790M陽性率に関係がある要因を検討した.検討した項目に関して,有意差が認められるものは存在しなかった.再生検を複数回施行した患者と再生検施行が1度のみの患者を比較したところ,細胞障害性抗癌薬治療を行った患者の方が複数回の再生検を施行している傾向にあった(P=0.005).結論.T790M耐性変異検出に影響を与える因子は認められなかった.細胞障害性抗癌薬治療歴がある方が,複数回の再生検を行う傾向にあり,繰り返しの検体採取によりT790M耐性変異の検出率が増加する可能性が考えられた.