気管支学
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症例
右肺上葉の囊状気管支拡張症に発生したアスペルギローマの1切除例
正津 晶子杉山 茂樹脇本 信
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2020 年 42 巻 2 号 p. 170-174

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抄録

背景.本邦において右肺上葉優位の気管支拡張症に遭遇するのは稀であり,また気管支拡張症にアスペルギローマが発生する場合があるが比較的稀である.症例.症例は66歳女性.安静時に突然50 ml程度の喀血があり,当院に救急搬送された.CTでは,右肺上葉の境界明瞭な腫瘤性病変と右肺に限局し多発する囊胞性病変を認めた.他院で約3年前から右肺上葉の腫瘤を指摘されていたが,患者側の希望で精査されていなかった.造影CTでは出血の原因となるような異常血管は認めなかった.気管支鏡検査で右上葉支からの出血が確認され,気管支洗浄を行ったが,細胞診,培養検査とも陰性であった.PET/CTでは腫瘤には集積がなく,β-Dグルカンの上昇もなかった.血痰は止まったものの再度喀血する可能性があり,また悪性腫瘍の可能性も否定できないため,右肺上葉切除を施行した.病理学的に気管支ないし細気管支拡張による囊胞の内部にアスペルギルスと考えられる糸状菌の増殖を認めた.結語.喀血をきっかけに切除した,稀な画像所見を呈する気管支拡張症にアスペルギローマが発生した症例を経験した.

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© 2020 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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