2020 年 42 巻 3 号 p. 274-279
背景.肺切除後の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および気管支瘻は,重篤な合併症として知られている.症例.76歳の女性.肺癌に対して胸腔鏡下右下葉切除術を施行した.術後2病日に食道裂孔ヘルニアが影響したと考えられる誤嚥性肺炎を契機にARDSを発症した.治療として人工呼吸器管理,ステロイド治療,抗菌薬治療を行った.症状の改善を認め人工呼吸器を離脱したが,経過中に急激な皮下気腫の出現を認め,気管支鏡検査にて右中葉B4の瘻孔を認めて気管支瘻膿胸と診断した.手術中のソフト凝固の使用,人工呼吸器管理,感染,ステロイドの使用が影響したと考えられた.右中葉気管支にEndobronchial Watanabe Spigotを挿入することで,エアリーク,感染ともに改善し,治癒に至った.結論.肺切術後に気管支断端とは異なる部位での気管支瘻を経験した.Endobronchial Watanabe Spigotによる保存的加療を選択し,治癒せしめた.