抄録
足尾荒廃山地のニセアカシア林において倒木や林分構造と立地環境との関係を検討した。ニセアカシアの個体は,斜面下部で大きく,斜面上部ほど小さくなった。倒木の発生は,倒木の大きさが比較的大きなものと小さいものとの2つに集中する傾向が見られ,斜面上部ほどあるいは土留工未施工地では,やや大きいサイズでの倒木が多かった。小さいサイズの倒木は,生育の比較的良かった斜面下部で多く,生育初期の本数密度効果により,立枯れた後倒木になったと思われる。また,大きいものは地上部と根系部のバランスが崩れて倒木になったもので,8-10 m以下の樹高が倒木回避の目安となる。在来樹種による緑化は,本種よりも生育が立地環境に影響されることから成長不良などの恐れが高く,ニセアカシアの台切りあるいは適切な密度管理による倒木防止により,林分を維持することが先決であると思われた。