都市緑化における樹木の果す役割は重要であるが,その生育に問題があることが多いため,樹木の適切な育成管理の基礎情報となる生育状態のモニタリングが必要である。本研究では,サクラ類を対象とし樹木の生育状態のモニタリング方法として広く使用されている目視による活力度調査結果とUAVプラットフォームで取得した植生指数との関係を分析し,樹木の生育状態のモニタリング方法としての有効性を検証することを目的とした。矢作緑地平戸橋公園(愛知県豊田市)に植栽されたサクラ類を調査対象とした。UAVプラットフォームを使い算出したNDVIと目視活力度調査の評価ランクとの関係を分析した。樹勢と葉の量は,NDVIによる評価が可能で,NDVIを集計する空間単位としてバッファー1.5mが最も適していることが示唆された。本研究により,活力度調査の項目ごとにNDVIの有効性を評価することができた。今後,本研究の方法を,様々な事例に応用することで,知見が蓄積し,より汎用性の高い方法へと発展すると考えられ,サクラ類の適切な管理に資することが期待される。
建設分野を中心としてグリーンビルディング評価システム(GBRS)が普及する中,人の健康やウェルビーイングを追求するGBRSとして,WELL認証への関心が高まっているが,WELL認証の取得が持つ付加価値や経済効果を定量化する研究はまだ少ない。本研究では,コワーキングスペースの利用者400人に対しオンライン調査を実施し,WELL認証の取得,健康効果のエビデンス,緑化を重視しているデザイン,価格を要因として,選択型実験とコンジョイント分析を実施した。また,潜在クラス分析を用いて個人属性がコワーキングスペースの選好に及ぼす影響を明らかにした。コンジョイント分析の結果,健康効果のエビデンスと緑化を重視しているデザインは,WELL認証の取得よりも大きなMWTP(限界支払い意思額)の増加をもたらした。潜在クラス分析における4つのクラスの内3つ(利用者の73%)が,選好において緑化を重視しているデザインを最重視し,全4クラスにおいて健康効果のエビデンスと緑化を重視しているデザインが選好に対しポジティブな影響があった。健康効果と緑化を結びつけた情報発信により,GBRSの需要をさらに高める可能性がある。
持続可能な社会の実現に向けて,家庭の食品廃棄物を土壌改良資材として活用する動きが広がっている。世界的にボカシコンポスト(BC)と呼ばれる密閉容器と発酵促進剤を使用する方法や,生ゴミ乾燥処理用の家電を使用する方法(DF)が一般家庭にも普及しているが,都市緑化土壌に対する効果は検証されていない。そこで本研究は屋上緑化土壌(有機基質と無機基質)にBCとDFをそれぞれ混入した上で,東京の夏季を想定した実験室内で4週間継続し,土壌の温度と水収支に関連する項目を検証した。その結果,BCを無機基質土壌に混入した場合とDFを無機基質土壌と有機基質土壌に混入した場合に,圃場容水量と有効水分量が増加した。またDFを有機基質土壌に40%混入したことで,蒸発量が増加した。そしてDFを無機基質土壌と有機基質土壌に混入した場合に,全実験期間に渡り,温度上昇がみられた。家庭の食品廃棄物を屋上緑化土壌の改良資材として活用するためには,植物が保水・冷却に与える影響,施用直後に急激な微生物分解が続く期間を検証する必要がある。
環境に配慮した有機農業を推進するためにバイオ炭とマメ科の緑肥作物の併用に注目が集まっている。マメ科植物が共生する根粒菌や生物学的窒素固定(BNF)の特性が異なると,収量やBNF量を向上させるバイオ炭混入量も異なる可能性がある。そこで本研究はバイオ炭混入量(0, 30, 60 t/ha)の異なる土壌とポットを使用した無施肥無灌水の屋外実験を実施し,共生する根粒菌とBNFの特徴が異なるナヨクサフジ(Vicia villosa)とベニバナツメクサ(Trifolium incarnatum)を育成した。その結果,ナヨクサフジはバイオ炭混入量60 t/haで収量,リン吸収量,カリウム吸収量,窒素集積量,作物体と土壌に含まれる全窒素量の増加分がそれぞれ最大となったため,ナヨクサフジの最適なバイオ炭混入量は60 t/ha前後である可能性がある。一方で,ベニバナツメクサは本研究のバイオ炭混入量ではいずれの項目でも変化が見られなかった。今後はバイオ炭混入量をさらに絞り込み,安定同位体比率を用いてBNF量を測定した実証実験を行うことが望まれる。
乾燥化は湿地植生退行の要因の一つである。乾燥化を一因にサクラソウが減少したとされるさいたま市の国指定特別天然記念物田島ケ原サクラソウ自生地にて,チューブ灌水が植生に及ぼす影響を調査した。灌水を2022年に開始し,サクラソウと優占種の生育を灌水区と非灌水区で3年間比べた。2022年のみ,非灌水区よりも灌水区でサクラソウの花茎長や葉長が長くなった。サクラソウと同時期に優占するノウルシは,3年とも非灌水区より灌水区における被度や草高が高かった。この傾向が現われる時期は,2022年よりも2023年と2024年に早まった。継続的灌水がノウルシの生育を年々促進させたため,当初促進されたサクラソウの生育が,ノウルシからの被圧によって打ち消されたと推察された。
クズは世界の侵略的外来種トップ100に挙げられている。クズの防除においては,侵入の早期発見とモニタリングが重要であり,UAVプラットフォームが有用と考えられるが,これまでに応用例がない。そこで,本研究では,クズの侵入が確認されている緑地で,クズのモニタリングにUAVプラットフォームが有効であることを実証し,戦略的な管理を行うための基礎情報を得ることを目的とした。万博記念公園(大阪府吹田市)の自然文化園の森(約25 ha)を調査対象とした。UAVプラットフォームを使いオルソモザイク画像を作成し,目視判読によりクズのパッチポリゴンを作成した。Digital Canopy Height Model (DCHM)と園路データを用いてクズの分布特性を分析した。万博記念公園では,クズのパッチ面積が2021年から2024年にかけて2.2倍に増加し,樹冠を覆うクズが大きく増加していることが明らかになった。園路から30 m以内に83%以上のクズのパッチが分布していた。クズが園路から離れた樹冠高の高い場所へと拡大していることが明らかになった。UAVプラットフォームは,クズのモニタリングに有効だといえる。
新潟県北東部の塩谷海岸及び桃崎海岸を対象に,海岸砂丘でのカワラナデシコの生育分布特性を調査・考察した。塩谷海岸では約1.96 km,桃崎海岸では約1.64 kmに渡って本種の生育が確認された。水平方向の分布限界地点における分布規定要因は,漁村特有の土地利用圧,土地改変に伴う砂丘消失,樹林化であった。砂丘上の成帯構造に対し幅5 mの測線で2.5 m毎に群落構造調査を行った結果,ハマナスがカワラナデシコの生育量の多寡と概ね同調する推移を,ハイネズが拮抗する推移を示す測線が複数認められた。そこではカワラナデシコやハマナスが優占する区画は海側に,ハイネズが優占する区画は内陸側に位置しており,ハイネズの風衝低木群落が発達することでカワラナデシコを被圧するためと考えられた。一方,ハイネズが不在あるいは群落未発達の測線の場合,砂丘前面の斜面を除きカワラナデシコやハマナスが優占する区画が広い範囲に連続していた。幅のある砂丘帯では,本種は必ずしも背後のクロマツ林との境に分布の中心を持つものではなく,成帯構造におけるやや安定した立地となる砂丘上に広く分布することが明らかにされた。
河川堤防に繁茂するオオイタドリの防除は,河川管理上の課題であり,その分布範囲の把握には地上からの調査に多くの労力を要している。調査の効率化,省人化を目指して,UAV画像から画像検出するAIモデルを作成し,オオイタドリの分布把握の可能性を検討した。画像をメッシュ状に区切り,メッシュ毎にオオイタドリを検知させたところ「高密度」に分布する範囲は高い精度で検知することが確認できた。