日本緑化工学会誌
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特集「災害と植生管理」
論文
  • 丹羽 英之
    2019 年 44 巻 4 号 p. 591-595
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

    気候変動で台風による風倒木リスクが増大し,迅速な被害把握が重要になっている。日本列島に上陸した台風21号により2018年9月4日に風倒木が発生した万博記念公園(大阪府吹田市)の自然文化園の森を調査対象とした。台風前は2018年7月11日,台風後は2018年9月26日に撮影したデータをSfM(Structure from Motion)により処理することで得られるDSM(Digital Surface Model)を2時期で比較することで,台風により発生した風倒木ギャップを抽出することができた。ギャップパッチ面積と現地調査により計測したギャップパッチ内の胸高断面積合計および本数との相関は,胸高断面積合計の方が全体的に高かった。DSMの2時期の差が6 m以上で倒木により形成されるギャップを抽出できた。台風により形成されたギャップパッチ面積の合計は6,926 m2で,同じ範囲内で2000年から2017年の17年間に人工的に造成されたギャップ面積の約64%であった。UAVで定期的に撮影しておくことは森林モニタリングに有効である。

  • 西野 惇志, 前原 裕, 橋本 洸哉, 内田 泰三, 早坂 大亮
    2019 年 44 巻 4 号 p. 596-605
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

    在来植物のクズ(Pueraria lobata)による景観や防災機能,生態系への悪影響が深刻化している。そのため,特に緑化地においては,本種の完全防除が求められている。本研究では,切土法面を対象に,法面植生の保全や回復性に配慮したクズの根絶手法について3年間にわたり探索した。近畿大学農学部周辺に位置する,造成後30年以上が経過した切土法面に20個の調査方形区を設置し,5つの処理を施した(無処理,イマザピル注入,引き抜き,年2回刈り取り,および遮光(試験1年目のみ年1回刈り取り))。各処理のクズ根絶効果に加え,切土法面植生の組成に及ぼす影響も評価した。その結果,引き抜きと遮光処理でクズの根絶が確認された。引き抜き処理を行うと一時的(一年程度)に裸地化するが,時間とともに法面植生の被度・種数は増加し,各種の生活型特性も多様化した。他方,遮光処理では期間を通じて法面植生は回復しなかった。その他の処理はクズの密度抑制には一定の効果を示すものの,根絶には至らなかった。以上のことから,本研究で選定された処理のうち,クズの根絶と法面植生の回復性の両面に貢献できる効果的な方法は,引き抜き処理である可能性が示唆された。

  • 片倉 慶子, 河上 友宏, 渡辺 洋一, 藤井 英二郎, 上原 浩一
    2019 年 44 巻 4 号 p. 606-612
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

    現在日本に生育するイチョウは中国から伝来したものだが,日本各地に拡散された過程は明確でない。本研究では,樹齢が長く日本に伝来した当初に近い遺伝的特徴を維持していると考えられる各地のイチョウ巨木を対象とし,遺伝的変異の地域的特性から,日本におけるイチョウの伝播経路および伝播方法の推定を試みた。九州から本州東北部の胸高幹周8 m以上の巨木から葉を採取し,180個体199サンプルについて8つのマイクロサテライトマーカーを用いて解析を行った。解析の結果,8遺伝子座から8~21の対立遺伝子を検出し,142種類の遺伝子型が認識され,13種類の遺伝子型が70個体で共有されていた。遺伝子型を共有している個体はクローンであると考えられ,地理的に離れて分布している場合もあることから,日本におけるイチョウの伝播には種子だけでなく挿し木等の方法も用いられたと考えられる。遺伝的多様性を比較すると,遺伝子多様度(HE)は0.57-0.82,アレリックリッチネス(AR)は4.51-8.49を示し,どちらも他地域に比べ東日本で低い値を示したため,中国から西日本にイチョウが伝来し,その一部が東日本に運ばれたと考えられる。

技術報告
  • 大澤 啓志, 中村 葵
    2019 年 44 巻 4 号 p. 613-618
    発行日: 2019/05/31
    公開日: 2019/07/27
    ジャーナル フリー

    人との親和性の高い在来野草類カワラナデシコについて,深裂した花弁形態の地域的差異を検討した。宮城県岩沼地区と静岡県沼津地区の海岸部の生育集団より花弁を各300片採取し,押し花にしたものをスキャナーで画像化し,全長・全幅・深裂片数・最深裂長をPC画面上で計測した。両地区の比較により全長と全幅で地域差が生じており,沼津産の方が一回り大きいことが示された。しかし,深裂片数には地区による差は認められず,平均で24片前後と近い値を示していた。次に,鑑賞者のまなざしが向けられた花の特徴を検討するため,我が国の代表的な近世の園芸書・本草書及び近代における初期の植物図鑑に描かれたカワラナデシコの図を渉猟し,花弁形態の描かれ方を比較した。近世までは深裂片数は少なく描かれていたのに対し,近代のものは概ね本調査2地区の計数値に近いものであった。特に牧野(1940)において裂片の状態が細部に至るまで克明に描かれていたが,深裂片が伸びやかに広がる本種の花の様子は,水野(1829)や飯沼(1856~1865)の方がより見る側に伝わりやすく描かれていた。

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