日本緑化工学会誌
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最新号
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特集「地域性種苗の使用実態と今後の活用に向けた取り組み」
論文
  • 東 哲典, 蘭光 健人, 庄司 顕則, 伊藤 彩乃, 赤﨑 洋哉, 松前 満宏, 山﨑 旬, 遊川 知久, 辻田 有紀
    2020 年 45 巻 4 号 p. 430-435
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    クゲヌマランは絶滅危惧種であるが,近年,埋立地や公園など人工的に造成された緑地に多くの自生が確認されている。しかし,本種がなぜ造成地に定着することが可能になったのか,その原因は未だ明らかでない。本種は共生する菌類への栄養依存度が非常に強い部分的菌従属栄養植物で,特に種子の発芽は共生菌からの栄養供給が不可欠である。そこで本研究では,造成地に生育するどのような菌類が本種の種子発芽に関与し,定着を可能にしたかを明らかにするため,埋立地の植栽林にある自生地で野外播種試験を行い,得られた実生の共生菌を特定した。その結果,担子菌のイボタケ科に属する3種類の菌が本種の種子発芽に関与していることが明らかになった。これらの菌は,実生の成長段階,埋設した土壌深度や播種地点に関わらず検出され,種子発芽とその後の生育に重要な役割を果たしていると考えられた。イボタケ科は,ブナ科やマツ科樹木と共生する外生菌根菌である。植栽されたこれらの樹木とイボタケ科の菌類との間に安定した共生系が成立し,これらの菌を利用してクゲヌマランは造成地へ定着できたと推測される。

  • 松岡 達也, 土屋 一彬, 大黒 俊哉
    2020 年 45 巻 4 号 p. 436-441
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    近年注目されている粗放型屋上緑化は,薄層土壌を用いる特性から導入可能な植物種に制限があることや,集中豪雨時の保水量が僅少である点が問題視されてきた。バイオ炭の土壌への混合とセダムの混植は土壌内の水分量を高く保つことが報告されているが,現状では各方法の有効性の検証に留まっている。そこで本研究では,両方法を用いた場合の相乗効果を期待し,その組み合わせが植物体の生育状況および保水量に及ぼす影響の検証を目指した。対象植物としてオジギソウとローズマリーを,セダムとしてシロバナマンネングサを用い,温室内において乾燥条件下における栽培実験を16日間行った。また,バイオ炭の混合率を0%,15%,30%,60%とし,セダム混植の有無で分けて栽培した。その結果,両方法の組み合わせにより保水量および土壌水分量に統計的に有意な相乗効果はみられなかった。一方で,両方法を施した場合でも対象植物の顕著な生育悪化はみられず,バイオ炭の混合率の増加に応じて保水量が向上した。以上より,両方法により顕著な相乗効果は期待されないものの,バイオ炭混合により生育悪化を防ぎつつ降雨時の保水量向上が期待されることが結論づけられた。

短報
  • 古澤 優佳, 中村 人史
    2020 年 45 巻 4 号 p. 442-446
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    近年,造林地はもとより道路法面や緑化斜面におけるシカの食害が問題となっており,シカの不嗜好性植物を使用した試験が実施されている。イワヒメワラビも不嗜好性植物の1つで,緑化の有効性が示されている。緑化のための苗増殖手法として胞子播種が報告されているが,胞子体の生育は遅く,得られる苗数も多くない。そこで,著者らは,同科ワラビ属ワラビの増殖で報告された手法に着目し,根茎に存在する芽を使用し,より短期間に大量の苗が増殖できるか試験を行った。また,生産したポット苗を使用した親株養成方法により,山林に自生する個体の根茎を掘取ることなく,効率的に増殖できるか調査した。その結果,出芽率,得苗率は6割を超え,得られた苗数は計325個と多数で,本増殖手法は苗生産に十分使用可能であると考えられた。さらに,作成した苗は展葉2ヶ月後には定植でき翌春の増殖に使用可能であるため,育成期間を大きく短縮できることが示された。加えて,作成した苗を使用し親株を養成することで植栽苗の20~30倍の芽数を得ることができ,苗生産にかかる労働力は大幅に軽減され,効率的に苗の生産が可能であることが明らかとなった。

技術報告
  • 梶川 昭則, 山田 雄佑, 屋井 裕幸, 室橋 智, 金山 愛美, 武田 治夫, 木田 幸男
    2020 年 45 巻 4 号 p. 447-452
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    グリーンインフラの防災・減災機能を有する雨水貯留浸透基盤を,埼玉県戸田市の公園横の歩道下に設置した。この区域は,合流式下水道で整備されており,近年のゲリラ豪雨等によってしばしば冠水が発生する区域でもあった。この区域の歩道下に雨水貯留浸透基盤を整備し,雨水の貯留浸透による処理を試みた。基盤の設置による雨水貯留浸透効果を明らかにするため,地下水位の観測井を4地点に設置した。またこの観測井を含む7地点に水位計を設置し,2017年11月から2018年10月まで連続して地下水位を測定することで,下水管への雨水流出抑制効果量を観測した。結果として雨水貯留浸透基盤の設置によって,合流式下水道への雨水を年間で94.7%の流出抑制となり,最大で8.5mm/10分(51mm/h相当)の降雨量に対して抑制効果が認められた。

  • 大澤 啓志, 横堀 耕季, 島村 雅英
    2020 年 45 巻 4 号 p. 453-456
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    トンボ池創出後の園芸スイレンの繁茂に対し,除去効果を検討した。スイレンに覆われた水域に15m2のスイレンを除去した開放水面区画を設け,トンボ類の飛来回数を非除去区画と比較した。初夏から秋季にかけての計10回の調査により,3科9種の計127回の飛来を確認した。それぞれ飛来数の多くなる繁殖期間で比較すると,シオカラトンボ(開放水面区:平均1.5~4回,繁茂水面区:平均0.3~0.7回)とギンヤンマ(同:平均2~3.3回,同:平均0.7~1回)が開放水面区に有意に多く飛来していた。確認数は多くはなかったが,クロスジギンヤンマは非確認であった繁茂水面区に対し,開放水面区に飛来する傾向が認められた。一方,必ずしも繁殖に広い開放水面を必要としないアオモンイトトンボでは,条件間で飛来回数に有意差は認められなかった。繁茂スイレンの除去はトンボ相修復に対して一定の効果が期待されるものの,飛来が期待されたかつての生息記録種の飛来は多くはなく,対象水域周辺地域のトンボ類の生息状況も影響していると考えられた。

技術資料
  • 片岡 博行, 針本 翔太, 久保 満佐子
    2020 年 45 巻 4 号 p. 457-459
    発行日: 2020/05/31
    公開日: 2020/07/28
    ジャーナル フリー

    絶滅危惧植物であるオキナグサの種子の適切な保存方法を明らかにするため,異なる方法で保存した種子の発芽実験を行った。採取後に種子を播種する採り播きを対照実験とし,冷蔵および日向,日陰で保存後に地表から深さ約1cmの地中に播種した。採り播きでは地表に播種する条件も加えた。保存期間は1ヶ月と2ヶ月,3ヶ月とし,さらに冷蔵で保存後に日向または日陰で保存,日陰で保存後に日向または冷蔵で保存する方法を組み合わせて合計3ヶ月保存する条件を加えた。各条件で60粒の種子を播種し,実生の発生数を1ヶ月調べた。その結果,採り播きでは地表より地中の方が発生率(実生数/60粒×100)が高く,薄く埋土する方がオキナグサ実生の発生に適していた。1ヶ月保存ではいずれの条件でも発生率は60%以上あり,冷蔵保存では3ヶ月まで70%あった。組み合わせた条件では冷蔵保存を加えた条件で発生率が高かった。日向では2ヶ月で1.7%,日陰では3ヶ月で1.7%と低く,オキナグサ種子は乾燥に弱いと考えられた。

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