日本文化において伝統的に利用・表現・鑑賞されてきた植物 (伝統文化植物)は多様にあるが,都市化が進む暮らしのなかでそれらを次世代に継承していくことが課題となっている。本研究では,大阪市の小学生(207名)を対象に,伝統文化植物(20種類)の認識(実際に見たことがある,名前を知っていた)に関するアンケート調査を行い,認識に影響を与える要因(性別,学年,近隣における自然体験の頻度,校内植栽の有無,教科書掲載など)を検討した。その結果,認識には植物による差があり,サクラとアサガオには高い認識が示されたが,都市で減少傾向にある草原や水辺に生息するハギやカキツバタなどの認識は低かった。一方,性別や学年による認識の差は少なく,近隣における自然体験の頻度が高い児童の認識や校内植栽がある植物の認識は高かった。継承に向けた方策としては,植物の認識の高低に応じた対応や,都市で伝統文化植物を観察できる機会や空間を増やすことが有効と考えられた。また,教科書の掲載状況には植物の種類による違いがみられたため,伝統文化植物に関する学習内容の充実や児童の認識が低い植物に対する適切な説明が必要と考えられた。
屋上緑化に期待される機能の内,雨水管理と夏季の冷却効果は,土壌層内下部を貯排水層として使うことで向上する可能性が知られているが,このような貯排水設計において,バイオ炭を用いた土壌改良の効果はほとんど検証されていない。そこで本研究は,異なる粒径(細粒:0.25 mm以下,粗粒:0.25~2.0 mm)のバイオ炭を混入した(0,50,100,200 t/ha)屋上緑化土壌と,深さ20 cmの土壌層内の下半分を貯排水層として活用するポットを使用し,28日間の屋内実験を実施した。そして夏季のヒートアイランド現象を再現するためのLED照射加熱と東京の豪雨を再現した給水を行い,保水と冷却に関連する測定を行った。その結果,細粒を200 t/ha混入したサンプルの保水容量(44.7%)及び有効水分量(35.5%)が最大となった。給水に対して保水された割合は粗粒の混入量200 t/haで低下する傾向があった。表面温度は,粗粒を100~200 t/ha混入することで6.5~12.6℃上昇したが,土中温度が有意に変化したサンプルは無かった。今後は植物を植えた実験を通し,実用化に向けた検証を進める必要がある。
耕作放棄を余儀なくされた水田の跡地で確認された希少生物の保全のために創出されたビオトープについて,生物多様性や景観の維持・向上を目的として植生調査・管理状況調査を実施し,創出背景や水源の栄養塩濃度が異なるビオトープと比較した。結果,抽水植物の進出を拒む水深を創出すること,貧栄養条件であることによって高茎草本の繁茂を抑え,開水面を維持し,水域の生物多様性の向上に必要な水辺エコトーンを形成しつつ維持管理労力を軽減できることが示唆された。
2002年11月に長野県須坂市山の神地区の強酸性土壌荒廃地で施工された山腹緑化工(酸性矯正材を配合した植生基材吹付工)の施工約21年9ヵ月後の状況を報告する。この施工は,2000年度から2003年度にかけて長野県林務部長野地方事務所(当時)が長野県林業コンサルタント協会に委託して設置された「特殊土壌地帯における緑化検討委員会」が計画したもので,施工21年9ヵ月後の追跡調査を行った結果,平均群落高は5~8 mに達し,緑化目標に設定した導入種のミズナラが被度3~5で優占した木本植物群落が形成され,強酸性土壌崩壊地が自然再生していることを確認した。この現場は継続した追跡調査が実施されていないためデータの蓄積はないが,過去の治山工事では復旧が困難だった強酸性土壌荒廃地を,播種工で自然再生した実証事例といえることから,技術資料として紹介する。
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