石積棚田の生態学的役割を評価する上での資料は極めて少ない。よって本稿では,その基礎として,石積棚田(空積み) の壁面に侵入する植物についてレビューした。同壁面に侵入する種は大半が在来種からなっており,また,一年生草本類に加えて多くの多年生草本類ならびに木本類も含まれた。石積棚田を取り巻く水路のり面や造成地等の周辺環境にはみられず壁面のみで確認される種も存在し,石積棚田が地域の生物多様性保全で担う役割が示唆された。一方,石積棚田の維持管理等を背景に,近年では石積棚田のブロック化やモルタル化も増加する傾向にあり,現存する壁面が生物多様性保全で担う役割はより一層高くなっていくと考えられた。