日本緑化工学会誌
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論文
京都府木津川市の大阪層群切土法面における植栽 18~19年後の植生及び土壌の解析
小宅 由似今西 純一吉田 博宣柴田 昌三
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2016 年 42 巻 2 号 p. 308-319

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抄録

1990年代以降,特に西日本では排水性や pHなどの面で課題のある現地発生土を植栽基盤に活用する必要に迫られ,また切土法面においても樹林化が求められるようになった。本研究はその先駆的事例である京都府木津川市の切土法面に苗木植栽した事例を対象とし,植栽 18―19年後の植生と土壌を調査して,大阪層群や類似の土質における現地発生土を利用した切土法面の樹林化に関する知見を得ることを目的とした。調査の結果,法面の植栽木の樹高は最大 15.1 mと目標値に達しつつあり,樹高の成長は関西地方の事例と比較して標準~良好で,胸高断面積合計は 38.5 m2/haと隣接する既存林を上回り,深度 70 cmまでの植物の生存根数も既存林と大差ないことが明らかとなった。これらの植栽木の地上部や根系の成長に関する結果からは,選択的に採取した砂質の現地発生土に,固形肥料とバーク堆肥を混入して植栽基盤層とし,苗木植栽する本対象事例の樹林化の方法が有効であることが示唆された。一方で,法面の樹林は林分構造や種組成の観点からは既存林と類似の樹林が成立しつつあるとは言えず,実生更新の阻害が問題として挙げられた。

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