2023 年 48 巻 4 号 p. 609-612
豪ビクトリア州で採用されている導入後雑草リスク評価システムを日本用に改変したものを用い,寒地型イネ科牧草10種の侵略性(生態系内で定着,成長,繁殖,拡散する能力)と在来動植物や人間活動への影響度をスコア化した。対象とした10種のうち,チモシー,リードカナリーグラス,トールフェスク,オーチャードグラス,ケンタッキーブルーグラスの5種は,侵略性と影響のいずれにおいても高いスコアを示した。スムーズブロムグラスは,侵略性スコアは上記5種と同程度であったが,影響のスコアはこれらより低かった。一年生のイタリアンライグラスは,侵略性スコアは10種中最も低かったが,影響スコアは最も高かった。本結果は,生態系被害のみならず,農業など人間活動への影響も含めた包括的な視点から評価を行った場合の一例である。今後,様々な手法・観点からのリスク評価事例をさらに蓄積することで,外来牧草各種が備えるリスクについてよりよく理解することができると考えられる。