1994 年 20 巻 3 号 p. 158-167
大気-植物間の物質交換過程を解明する上で重要なパラメータとなる気孔コンダクタンスのモデル化について検討した.気孔開閉についての植物生理学的知見を整理し, これにもとついて光・飽差・温度の5つの環境変数を入力とする気孔コンダクタンスモデルを提示し, 数種常緑広葉樹 (アラカシ・クスノキ・マテバシイ) の個葉上での気孔コンダクタンスを通年測定した観測結果にこのモデルを適用した.植物の生理的特性を表すモデル中のパラメータは非線形回帰分析によって最適値を決定した.入力とする環境変数の数を変えて適合を比較し, また飽差についてはいくつかの関数形の適合度を比較した.次に, このモデルを年間データに適用する際の諸問題について検討した.この結果, 年間を通じて気孔コンダクタンスを推定する場合には, 葉の特性を表すパラメータが変化することを考慮する必要があることがわかった.