ミヤコザサで覆われた斜面 (ササ斜面) 表層土の安定性を評価するため, 地震によって崩壊したとされる自然のササ斜面の現地調査と, ササ地下茎の引張り試験や土質試験などの室内試験を行った。測量結果から斜面は一体化した斜面表層崩壊の形態をしており, 表層崩壊の安定解析モデルを設定して, 斜面に加わった地震の揺れや現地調査と室内試験の結果を用いて安定計算を行った。その結果, 斜面単位幅断面のササ地下茎引張り力の関数として表された地震時の安全率は, 1.0前後の微妙な値をとり, ところどころで崩壊した地震による斜面表層崩壊の状況を裏付けていることを示した。計算に用いた物理定数が妥当な数値であると考え, 常時にも適用できると仮定して計算したところ, 常時の安全率はいずれの場合も1.26以上になった。この計算式によると, ササのない斜面の安全率は土の強度定数に支配されるが, 斜面単位幅断面のササ地下茎引張り力に対する安全率の増加はササ植生による補強効果を表している。また, 対象とする崩壊斜面の形状が半円形から斜面に沿って長くなるほど, 面積が小さいほど安全率は大きくなった。
