日本官能評価学会誌
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論文
アメリカ, ドイツ及び日本におけるビール嗜好の地域差
石井 照周米沢 俊彦呉 慶和川口 一司石橋 徳雄
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1997 年 1 巻 1 号 p. 24-36

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1. 緒言

日本国内では, 「味の好みは東西で異なる」「日本各土地の嗜好の違い」等食習慣や食嗜好と地域性について論じた成書が山口(1983), 河野(1987), 山口(1987), 加藤(1989), 河野(1991)及び毎日新聞地方部特報班(1996)等によって著わされている。更に, 宗任(1988), 飽戸と東京ガス都市生活研究所(1992)及び井上(1993)等は国際比較で食文化や食嗜好を論じている。一方日本のビールの市場は, 近年まで諸外国に比べ味の多様化が少なく, 同一品種による全国ブランドが守られてきたが, 最近は消費者の嗜好と価値観の多様化に伴いビール各社のブランド数は増加し, 選択の自由度は拡大されてきている。

地域ビール(地ビール)の生産も拡大の傾向にあり, 国際化に伴う海外ビールの消費と輸入量の増加も著しい。ビールにも他の食品と同様に地域による嗜好の差が存在するがどうかの一連の調査を実施するにあたり, 先ず食習慣・食嗜好の差が著しいアメリカ, ドイツ, 及び日本の3国で, ビールと言う極めて普遍的な飲み物をツールとして, 嗜好の地域差の調査分析を試みた。

2. 実験方法

当調査を実施するに際し, 官能評価全般については, 佐藤(1993), 増山, 小林(1989)による成書を参照し, 更にビールの官能評価については, 江島, 橋本(1983), 石橋(1989)の報文を, 又マーケティングの観点からの調査手法の1例として江尻, 斎藤(1980)等の成書も参考にした。

ビール香味の専門的な評価用語については, Meilgaard等(1979)による香味の輪(Flavor Wheel)が提案されている。

今回のアメリカ, ドイツ及び日本の3国での調査ではビールの評価用語の選定と統一には充分な検討を加え, Fig. 8Fig. 10に示したように客観性が高いことは勿論, 消費者にとって具体的で分かり易く, 選択しやすい用語を採用した。

統計手法として主に, 奥野ら(1991, 1992)による多変量解析法を参考にして, 因子分析法を採用してデータの解析を行った。

2―1. 調査対象

(1)調査地

アメリカ(ニューヨーク), ドイツ(フランクフルト), 日本(東京)

(2)街頭呼び込み型

調査地点通行者に対する無作為抽出・質問紙によるスクーリング

(3)比較属性 20才~59才の男子のみ(アメリカは21才~59才)

(4)対象者数 各国とも200人, 合計600人

2―2. ビール試飲方法

(1)試飲用ビール試料

  

(2)調査試飲数 3点/人, 8種類

(3)ビールの味覚評価

ビールの全体的印象 3段階評価「まずい」「どちらでもない」「おいしい」

ビールの香味の強弱 6段階評価「適度である」を含めて

ビールの香味特徴 複数選択

2―3. 集計分析

単純集計・属性別クロス集計

多変量解析手法による分析

2―4. 調査期間

1992年9月下旬

3. 実験結果

3―1. 三ヵ国における味覚の好みと食習慣に対する態度の違い

(1)食生活における味覚の好み

食生活における味覚の好みに関して7項目の調査をおこなった結果についてアメリカ, ドイツ, 日本の国別にFig. 1に示す。

全体的でみると, 「辛味」「甘味」に強い嗜好性を示し, 「苦味」「脂肪分」「薄味」は嗜好性に乏しい。

各国の特徴を他の2国との比較で見ると,

アメリカ―「甘味」と「脂肪分」を好み, 「苦味」を好まない。

ドイツ―「辛味」と「酸味」を好み, 「塩味」「脂肪分」「薄味」を好まない。

日本―「薄味」を好み, 「辛味」「甘味」を好まない。「酸味」「塩味」への嗜好はアメリカ並み, 「苦味」への嗜好はドイツ並みで, 色々な味を等しく好む傾向がある。

(2)食習慣で気をつけていること

Fig. 2に食習慣で気をつけている(「控えめにしている」。但し動物性蛋白については「とらないようにしている」)ことをアメリカ, ドイツ, 日本の国別で示す。

全体的にみると, 「塩分」「動物性脂肪」は50.0%の選択率で, 「コレステロール」「アルコール」は35.0%の選択率で高く, 「動物性蛋白」「香辛料」は低い。「特に気をつけていない」も40.0%を示している。

各国の特徴を他の2国との比較で見ると,

アメリカ―「塩分」「コレステロール」「アルコール」が高く, 「特に気をつけていない」と「カロリー」は低い。

ドイツ―「動物性脂肪」「カロリー」が高く, 「特に気を付けていない」も40.0%と高い。

日本―「特に気を付けていない」が40.0%と高く, 「塩分」「動物性脂肪」「コレステロール」, 特に「アルコール」がアメリカ, ドイツに比べて低い。

Fig. 1

Taste preferences in the everyday diet (single answer)

Fig. 2

Dietary habits respondents are careful about (multiple answer)

3―2. 三ヵ国の消費者のアルコール飲料特にビールに対する態度の違い

(1)昼間のどが渇いたときに飲む飲料

昼間のどが渇いた時に最もよく飲む飲料について国別に比較するとFig. 3のようになる。

アメリカ―水41.0% 甘味炭酸水(コーラ) 18.5% ビール10.5% 

ドイツ―炭酸入ミネラルウォーター34.5% コーヒー20.0% 甘味炭酸水 11.5%

日本―お茶(日本茶・番茶・ウーロン茶)32.5% コーヒー 19.0% 水14.0%

(2)夕食前に飲む飲料

ふだん夕食時の食前に飲む飲料について国別の比較をFig. 4に示す

アメリカ―ビール49.2% 甘味炭酸水36.5% 水26.5% 果汁飲料11.5%

ドイツ―炭酸入ミネラルウォーター26.5% ビール22.5% 何も飲まない26.0%

日本―ビール68.5% お茶15.5% 日本酒11.5% ウイスキー10.0% 何も飲まない12.5%

(3)ビール飲用シーン

ビールの欽用シーンを国別に比較するとFig. 5のようになる。

各国の特徴を見ると, 選択率が他の2国より高い或は低い項目は,

アメリカ―「ランチの時」「昼間のどが渇いた時」「ビールの味をたのしむとき」が高い

ドイツ―「ホームパーティーを開くとき」「外へ飲みに行く時」「就寝前」が高い

日本―「夕食の時」「お風呂あがり」「スポーツの後」が高く, 「ランチの時」「昼間のどが渇いた時」「就寝前」が低い。

Fig. 5のビール飲用シーンの10項目(「ホームワークの後」は除く)について因子分析を行いFig. 6に示す3軸を抽出した。

抽出された3軸は, それぞれ次に示すように命名した。

ビールエンジョイ軸―「外に飲みに行く時」「ホームパーティーを開く時」「ビールの味を楽しむ時」

リラックス軸―「お風呂あがり」「夕食時」「スポーツの後」「家でテレビを見ながら」

カジュアルドリンク軸―「ランチの時」「昼間のどが渇いた時」「スポーツの後」

3―3. 三ヶ国の消費者のビールを選択する際の態度の違いと, ビールの美味しさを形成する要素についての意識面からの重用度

(1)ビール銘柄選択理由

ビールの銘柄選択をする場合のどの渇きをいやす時を目的として国別に選択理由を比較するとFig. 7のようになる「おいしいから」は共通の選択理由として当然あげられているが, その他の選定理由は各国毎に特徴がある。

アメリカ―「おいしいから」「よく店においてあるから」「品質が安定しているから」が高く, 特に「健康的だから」はドイツ・日本より高い。

ドイツ―「おいしいから」「品質が安定しているから」「よく店においてあるから」「友達が飲んでいるから」「特に理由なし」がアメリカ・日本より高い。

日本―「おいしいから」に加えて「昔から飲んでいるから」がアメリカ・ドイツより高く, 特に「好きなメーカーだから」「CMや広告がよいから」「デザインがよいから」「ネーミングがよいから」がアメリカ・ドイツより若干高い。

(2)ビールの味に求められる重要要素

意識面から, ビールの味に求められる重要な要素を国別にFig. 8に示す。

全体的には, 「最初の一口のおいしさ」69.5%「良く冷えている」67.5%で, 二大要素を占めていて, 「充分なこく・味わいがある」「後味が良い」「新鮮である」「すっきり爽快」「飲み進めた時のおいしさ」が重視され, 「酸味・舌ざわり・甘味・香り・炭酸ガス」など個別要素的な項目は低い。

アメリカ―「最初の一口のおいしさ」「よく冷えている」「後味がよい」「充分なこく味わいがある」「飲み進めた時のおいしさ」「苦みが弱めである」「ソフトで口当たりがよい」「すっきり爽快」が40.0%以上の選択率で重視されている。

ドイツ―「よく冷えている」「最初の一口のおいしさ」「新鮮である」のほか, 「苦みがきいている」「華やかな香りがある」など個別的要素が高い。

日本―「最初の一口のおいしさ」「よく冷えている」が40.0%以上で重視されていて, 「泡がまろやかできめ細かい」「麦芽の風味が充分にある」「ホップの風味が充分にある」「アルコールの酔いがある」がアメリカ・ドイツに比べて高い。

Fig. 3

The categories of drinks consumed most often during the day when thisty (single answer)

Fig. 4

the specitic categories of drink consumed ordinarily before dinner (multiple answer-2beverages)

Fig. 5

Beer-drinking occasions (single answer)

Fig. 6

Factor analysis of beer-drinking occasions

Fig. 7

Reasoning behind beer brand selection-to quench thirst (multiple answer)

Fig. 8

Key essential qualities sought in beer's taste (multiple answer)

3―4. 三ヵ国の消費者によるビール味覚の同時比較

(1)ビール味覚の総合評価(飲み進めた時のおいしさ)の地域差

アメリカ, ドイツ, 日本に於ける試料ビールに対する味覚の総合評価(飲み進めた時のおいしさ)をFig. 9に示す。

アメリカ―アメリカのC・日本のB・オランダのEの評価点が高く, ドイツのG・チェコのHの評価点が低い。

ドイツ―ドイツのG・ドイツのF・日本のAの評価点が高く, アメリカのC・日本のBの評価点が低い。

日本―日本のA・日本のB・オランダのEの評価点が高く, ドイツのF・チェコのHの評価点が低い。

(2)ビールの香味強弱評価の地域差

試料ビールの香味の強弱評価を地域毎にまとめたのがFig. 10である。

全体的に見て, 香味の強弱の順位について大きな差は認められないが, 国別のその評価の中では, いづれの国も自国のビールの香味を適当としているのが目立つ。

アメリカ―アメリカのC以外のビールの香味は「強すぎる」との評価が多く, 「甘味の強さ」についてはアメリカのCでも「やや弱い」と評価している。

ドイツ―「香りの強さ」と「味の濃さ」についてはドイツのGとドイツのFの中間が「丁度良い」とし, ドイツのGとチェコのH以外のビールは「香りの強さ」「味の濃さ」とも「弱すぎる」と評価している。

日本―「味の濃さ」は日本のAとイツのGの中間を「丁度良い」としている。

(3)ビールの香味の強さと嗜好の地域差

上記4.(1)と4.(2)の結果から試料ビールに対する香味の強弱の捉え方と味覚の総合評価との関係をまとめるとTable 1のようになる

アメリカ―アメリカのC・日本のBなどの全体的に香味が弱いビールが嗜好順位の上位に, ドイツのG・チェコのHなど香味の強いビールは嗜好順位は下位に評価された。

ドイツ―ドイツのF・ドイツのGなど香味の強いビールを上位に, アメリカのC・日本のBなどアメリカで評価の高い香味の弱いビールが下位に評価された。

日本―日本のA・日本のB・オランダのEなど香味の強さの中間的なビールを上位に, チェコのH・ドイツのF・アメリカのCなど香味が強いか弱いかどちらかに偏ったビールは下位に評価された。

Fig. 9

Regional differences in overall evaluations of beer flavor (good flavor upon further drinking)

Three-point evaluation scale, -1:unpalatable, 0:neither unpalatable non delicious, 1:delicious

Fig. 10

Regional differences in beer flavor evaluations

Table 1

Beer preferences and strength of beer's flavor (by country)

4. 考察

4―1. 三ヵ国の味覚の好みと食習慣に対する態度の違い

(1)食生活における味覚の好みでは, アメリカは特に苦みを好まず, ドイツは塩による味付けより辛味や酸味による味付けが好まれ, 薄味嗜好は低い。日本は酸味や塩味を好みながら, 薄味を好み, 味覚の好みに対する幅が広い。いろいろな昧にこだわる事が日本の食文化の特徴の一つを現わしている。

(2)食習慣で気を付けていることでは, 各国とも何らかの形で食習慣上で健康に留意していることが窺われる。

アメリカでは, 健康に留意しているが, カロリー摂取にはあまり関心が払われていない。ドイツでは, 特に気を付けていないが高いが, カロリー摂取にはアメリカと対照的にかなり気を付けている。日本では, 特に気を付けていないが高く, アルコールへの気遣いは少なく, 健康と関連づけて食事に気を付ける事はアメリカ・ドイヅに比べて低いようである。

4―2. 三ヶ国の消費者のアルコール飲料特にビールに対する態度の違いについて

(1)昼間のどの渇いたときに飲む飲料では, 国別にかなり違いが有る。アメリカでは, 水と甘味炭酸飲料合計で60.0%近くを占め, ドイツでは, 炭酸入りミネラルウォーターが34.5% 日本ではお茶類が(日本茶・番茶・ウーロン茶)32.5%と高い。

(2)夕食前にのむ飲料では, 日本では, アルコール飲料(ビール・日本酒・ウイスキー・焼酎)を飲む割合が他の2国と比較して極端に高く, 晩酌の飲酒習慣を表している。

アメリカでは, 昼間のどが渇いたときと食事の前や食事中に甘味炭酸料・果実飲料がよく欽まれ, 甘味に対する親和性が高い。

飲み始めに飲むアルコール飲料の調査では, 各国ともビールが断然高く, 特に日本では95.0%とを示し, 「まずはビール」の飲酒文化が一般的である。

(3)ビールの飲用シーンでは, ドイツでは, ビールを中心にしたコミュニケーションが重視され, ビールと料理を楽しむ習慣が窺われる。

(4)上記2.(3)のビール飲用シーンについての国別の違いを因子分析の結果から分析するために因子得点結果の地域差をTable 2に示した。

アメリカではカジュアルドリンク, ドイツはビールエンジョイ, 日本はリラックスの因子得点が高く, 国毎にビールの飲用目的に差のある事が明確になった。

Table 2

Result of factor scores of beer-drinking occasions by country

4―3. 三ヵ国の消費者のビールを選択する際の態度の違いと, ビールの美味しさを形成する要素について意識面からの重要度について

(1)ビールの選択理由の2つの調査結果から, のどの渇きをいやす時には, アメリカではカロリーが低いなどの健康性を, ドイツでは品質面と料理との相性を, 日本では飲み慣れていることやビールメーカーや製品に関わるイメージを他の2国より重視する傾向がある。

(2)ビールの味に求められる重要要素の調査結果から, アメリカでは上位7項目が50.0%以上で重用視され, ビールの味に対する要求項目が多く, 関心も高い。苦みが弱めが特徴的である。

ドイツでは苦みは意識されているが, 濃さ・こく本格性や刺激感性は余り意識されておらず, 全体的に各要素に対するこだわり感は低い。日本では, 苦みや原料の風味を重視している。

4―4. 三ヵ国の消費者のビール味覚の同時比較について

ビールの香味評価の地域差では, アメリカでは各香味評価項目が強い相関性を示し, ほとんど一軸として評価されている。日本における各香味の関係をみると, 苦みの強さと後味の強さには相関が認められたが, それ以外の項目においては有意差のある相関が認められず, 明確に香味を「きき分け」ている事がわかる。

4―5. 調査票による調査と実際の試飲評価結果との関連について

アメリカ, ドイツ, 日本のおけるビールに対する嗜好評価並びに印象は国によって差が認められたが, このような差が見られた原因は前に示した消費者の味覚及び食習慣・ビールに対する態度の違いと関連づけて考察する事ができる。

飲酒習慣, 食習慣ならびにビールの味に求める要素における差との関連において, アメリカでは水や炭酸飲料(ソーダ/コーラ)を好んで飲み, 甘味好きで, 苦味を好まない傾向があり, ビールに対しても苦味が強いことを嫌い, ソフトな味のビールを好んでいる。ドイツでは, 辛味, 酸味嗜好が強く, 濃い味を好む傾向があり, ビールに対しても香りと苦味が強い味の濃いビールを好んでいる。日本では, 食嗜好が相対的に多様化しており, 特に薄味を好む傾向が強く, 味について微妙な差異をきき分ける特性を持ち, このことが, ビールにおいても味の中庸性を求めることにつながっている。

ビールに求める機能の差との関連において, アメリカでは, カジュアルなシーンが健康飲料性として高く評価される。ドイツでは, ビールはアルコール飲料としてエンジョイすることが求められていて, 香りや味を楽しみ, 料理とのマッチングが大切であり, 比較的風味の強いビールが高く評価される。日本では, お風呂上がりなどリラックスシーンでの需要が高く, 麦芽やホップの風味やビールの持つ軽快性が評価されている。また, 日本においては宣伝広告もその印象を形成する上で効果を上げている。

4―6. 今後の課題について

今回の海外調査では, 回毎の食習慣の違いがビール評価に及ぼす影響についての考察を加えたが, アメリカ, ドイツ, 日本といった地域や文化の違い(年代の差)を越えて, あくまでも食事に対する習慣や嗜好からビールに対する評価を純粋に抽出することも検討していきたい。すなわち食習慣のクラスターを設定し, クラスター毎の試料ビールに対する評価等についても解析していきたい。

5. 要約

アメリカ(ニューヨーク), ドイツ(フランクフルト)及び日本(東京)における食嗜好・食習慣とビールの味覚評価との関係を明確にし, 3国間で嗜好の差が生じる原因を探る一連の消費者調査を実施した。3国同時に, 調査表による調査と同一のビール試料を用いた試飲によるビールの味覚評価を実施した。

食嗜好, 食習慣, ビールに対して抱くイメージ, 及び試飲後のビール嗜好・ビール香味の強さに関する評価には, 3国間で明らかに地域差が認められた。ビールに対する嗜好の地域差が生じる原因として, 食嗜好ならびに食習慣の差とビールに求める機能の差が関係している事が明らかになった。アメリカでは, 甘味を好み, 苦味を好まない傾向があり, ビールに対しでも苦味が強いことを嫌い, ソフトな味のビールを好んでいる。ドイツでは, 辛味, 酸味嗜好が強く, 濃いビールを好んでいる。日本では, 食嗜好が相対的に多様化しており, 特に薄味を好む傾向が強く, 味について微妙な差異をきき分ける特性をもち, このことがビールにおいても味の中庸性を求めることにつながっている。

謝辞

本研究を進めるに当り, ご指導賜った吉澤淑先生(東京農業大学教授), ご協力いただいたキリンビール谷村修也氏, ご支援いただいたキリンビール元副社長山本康氏, 元取締役森本圭一氏並びに関係各位に深く感謝いたします。

 

本論文は平成8年11月16日に開催された日本官能評価学会設立記念シンポジウムにおける研究発表に基づいて執筆されたものである。

引用文献
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