2008 年 12 巻 2-2 号 p. 83-93
「優雅な」「ソフトな」などといったイメージ表現語(以下, 形容詞と記述)で表される商品イメージの内容は, [形容詞]の後に続く[名詞]の違いによって異なる. 本研究ではこれに着目して, 商品特有のイメージをより正確に把握できる解析法を開発し, 既存の商品コンセプト文で表現されているイメージを明らかにするとともに, そのイメージを正確に伝えるコンセプト文構成法の知見を得ることを目指している. ここでいう商品イメージとは, 商品の品質構成, パッケージ, コンセプト文, CM, 経験価値(長沢, 2005)1)など, 様々な商品表現媒体から受ける商品のイメージを指す.
どのような商品にも作り手の意図(神宮, 2000)2)が組み込まれ, それは様々な情報媒体によって伝達される(企業研究会, 2001)3). 情報の受け手側のユーザーが, 作り手の商品に込めた意図・こだわりを充分イメージできるか否かは, 購買時の意志決定に大きく関わるために, 商品に対するイメージは様々な観点から研究されてきた(神宮, 2000, 森, 1995, Jingu, 2006)2,4,5).
それらの解析方法を調べると, 商品のイメージ解析やコンセプトの探索に関する多くの研究では, イメージ表現している「優雅な」「カジュアルな」といった形容詞をKJ法で分類して各グループの代表的な形容詞を選び, SD法などの評価法によって検討がなされている(土屋等, 2003, 山本等, 2003, 伊藤, 2007, 池田, 2008)6-9). このような形容詞を尺度としてイメージを数値で捉える解析方法でさえ, 形容詞の選択の仕方によっては, 求めるイメージの意味空間(全体的内容)に違いが生じるという重要な問題がある(神宮, 1996)10). また同じ形容詞でも, 意味の受け止め方やイメージ程度は, 人によって差があること(小島等, 2007, 山本等, 2006)11,12)や, 形容詞間での意味
の類縁性の問題もある(森, 1998)13). したがって, 言葉の意味の曖昧さや多岐性をできる限り排除した核となる形容詞を選択する必要がある(西藤・田川, 1999, Saito, 2000)14,15). このように, 言葉の扱い・捉え方は, イメージを数値データとして解析する場合でさえ, 留意しなければならない問題である.
本研究対象には商品コンセプト文を選んだ. 商品コンセプト文は, 作り手の意図をユーザーにできるだけ効果的に訴えられるように工夫して表現された情報伝達媒体である. したがって商品コンセプト文(テキスト型データ)の解析では, 研究者の直感による部分があるとはいえ, 解析方法の工夫次第では, 作り手の意図に最も近づいた情報を得ることができる(神宮, 2001)16). もし, 既存のコンセプト文から各メーカーのブランドイメージの特徴や表現構造の違いを精度良く解析できたなら, 得られた情報は, 新たな商品開発の際のコンセプトメイキングに活用することができ, 他社と差別化したそのメーカーらしいブランドイメージを創造する手がかりになる. さらに解析結果をもとに, 「作り手の意図」伝達度を高めるコンセプト文構成法についての知見も得られることが期待できる. そこで以上の観点から, 商品コンセプト文で表現されている商品特有のイメージを調べようとした.
そのような商品特有のイメージは, 本来, それを表現している商品コンセプト文から正確に把握できることが望ましい. しかし, 上述した言葉が抱える問題(受け止め方の個人差など)があるために, 必ずしも正確にイメージできるとは限らない. そこで本研究では, 商品コンセプト文で表現されているイメージを, より正確に解析できる方法を検討した.
従来, 商品コンセプト文のようなテキスト型データから商品特有のイメージを解析するには, 前述と同様に, 「優雅な」「カジュアルな」といった形容詞だけを捉えてきた. ところが図1に示すように, 同じ「優雅な」と表現されたイメージでも, 「優雅な+フォルム」と「優雅な+時」では, 作り手の意図した「優雅さ」の意味・内容は異なっている. 前者は形態デザインの優雅さを, 後者はライフスタイルの優雅さを意味している. このように, 作り手が意図したイメージの内容は, [形容詞]とその後に続く[名詞]の組み合わせによって解釈できる. したがって商品コンセプト文で表現されている真のイメージ内容を解明するには, 用語の分類(カテゴリー化)段階で, 商品特有のイメージの意味・内容の違いを反映させた分析を行う必要がある.
本研究では, これに着目し, 形容詞だけを捉えてカテゴリー化するのではなく, 形容詞が修飾している名詞の意味をカテゴリー化の段階で把握する手続きを組み込む解析方法を開発することにした. ここでは自動車コンセプト文を解析例として, 解析法の有用性を確かめるとともに, そこで得られた知見をもとに, 商品特有のイメージ(作り手の意図)をより正確に伝えることができる商品コンセプト文構成法の知見を得る. これを達成することで, 「商品イメージ解析法」の可能性も併せて検証する.

形容詞が表現する商品イメージ内容の違い
前述した言葉が抱える問題(意味の曖昧さ, 受け止め方の違いなど)に加えて, 商品コンセプト文の構成・表現の仕方の難しさゆえに, 既存の商品コンセプト文では, 作り手の意図が, 一般のユーザーに充分伝わるとは限らない. そこで本項では, 既存の商品コンセプト文で, 商品のイメージ内容がどの程度ユーザーに伝わっているか, またその傾向は人によって変わらないかを, 2回の実験によって調べた.
2-1 実験 2-1-1 評価対象車種と提示画像評価対象車種には, 図2に示したセダン4車種(A~D[注1-4]), ハッチバック5車種(E~I[注5-9])の計9車種を選んだ. これらの車種選択基準は, 1)車種数の多いタイプ(セダンとハッチバック)であること, さらにその中から 2-1)多くのユーザーが見聞きしたことがあると思われる自動車 2-2)話題性の高いことであった. これらの自動車の提示画像は, いずれもカラー刷りとし, セダン, ハッチバックのタイプごとにまとめて提示した.

提示画像
実験1 評価対象コンセプト文には, 自動車AとHそれぞれのコンセプト文A(以下, 文Aと記述)と文Hを選んだ. それらは表1, 表2のようであった. 提示画像には, 図2の2つのタイプから, 各4車種(セダン:A~D, ハッチバックE~H)を用いた. それぞれのコンセプト文が, 提示画像のどれと一致するか, 一致すると思われる画像を, コンセプト文と対応するタイプから1つ選択させた. 各画像の選択人数を比率に換算した. 評価者は学生, セダン150名(男子114名, 女子36名), ハッチバック128名(男子92名, 女子36名)であった. なお文中に車種名が記述されている場合は, 車種名の部分を「*」印でふせた. 実験の実施時期は2005年10月であった.

コンセプト文A

コンセプト文H
実験2 評価対象コンセプト文には, 図2のセダン(A~D), ハッチバック(E~I), すべての自動車のコンセプト文を使用した. 各コンセプト文が対応するタイプ(セダン・ハッチバック)のうちのどの画像と一致するか, 一致すると思われる画像を1つ選択させた. 教示は, 「各コンセプト文を読んでイメージする自動車を, 提示画像から1つ選んでください. なお, それぞれの文は, 同じ自動車を表現している文かもしれません. もしくは, そうでないかもしれません.」とした. この実験での評価者は女子学生, セダン28名, ハッチバック23名, 実験の実施時期は2005年11~12月であった. 各コンセプト文における自動車選択率の差の有無を, 一様性の検定(佐藤, 1985)17)によって調べた.
2-2 結果および考察 2-2-1 商品コンセプト文のイメージ伝達度実験1によって, 評価者(自動車のイメージ表現の枠組みを持たない一般のユーザー)がコンセプト文からイメージした自動車を選んだ比率を表3に示した. セダンでは, 文Aが本来表現している自動車Aの選択率が0.393と高かった一方, 自動車Dの選択率(0.367)もそれに近い値を示した. ハッチバックでは, 文Hが本来表現している自動車Hの選択率は0.211であり, それよりむしろ自動車EとGの選択率の方が高かった.
この結果から, 一般のユーザーでは既存のコンセプト文から「作り手の意図」を充分にイメージすることが難しいと見て取れた. 特にこの傾向は文Hで顕著である一方, 文Aでは文Hに比べるとその傾向は低いこともわかった.

コンセプト文(全文)からイメージした自動車の選択率
実験2で, コンセプト文に対するイメージ反応傾向が, 評価者や実験方法が異なっても大きく変化しないかを調べた. その結果, 図2のすべての自動車コンセプト文のうち, 文Aが本来表現している自動車Aを選択した比率が0.500と, 最大であった(表4).
逆に文Hが本来表現している自動車Hを選択した比率が, 実験1と同様に0.174と低く, この値は他の自動車選択率との間で差のないことも, 一様性の検定で確かめられた. この結果は, 文Hではどの自動車を表現しているのか, 評価者には充分イメージできなかったことを表している.
以上の結果から, コンセプト文に対するイメージ反応傾向は, 評価者が違っても大きく変化しないこと, そして実験2でも, 文Hの方が文Aに比べて, 一般のユーザーが「作り手の意図」を充分イメージすることは困難であることを確認した.

コンセプト文(全文)からイメージした自動車の選択率とその一様性の検定
既存のコンセプト文では, 情報の受け手であるユーザーが作り手の意図を充分イメージすることが難しいこと, その一方でイメージできそうな文とできない文があったので, その違いを検討するために, 本項ではまず, コンセプト文で, 作り手が伝えようとしているイメージ内容を解明するための解析法を考案した. それを「商品イメージ解析法」と呼ぶこととし, その手順を図3に示した.
各段階での特徴は, 以下のとおりである.
1)第1段階, 用語の収集・整理では, 従来, 形容詞だけを捉えていたのに対して, この解析法では「形容詞+名詞」単位で捉える. 例えば「斬新な+発想」という形式で収集する.
2)第2段階では, 「形容詞+名詞」単位の特に[形容詞]に着目して分類し, 商品特有のイメージ表現としての「感性(形容詞+名詞)」を特定する. 例「斬新な+発想」では, 形容詞[斬新な]の意味によって, 「感性」と特定する.
3)第3段階では, 第2段階で特定された「形容詞+名詞」単位の特に[名詞]に着目して分類する. 例えば, 「感性」と特定された前述の「斬新な+発想」では, その中の名詞[発想]の意味から, カテゴリー「人の認知」を構成することになる. このように, 修飾される[名詞]の意味を分類担当者が把握して分類することで, その[形容詞]が対象商品のどのような内容・構成要素をイメージ表現しているのかといったイメージ表現の枠組みを分類担当者が持つ.
4)この枠組みを理解したのちに, 第4段階では, 第3段階で分類した「形容詞+名詞」単位の特に[形容詞]だけを分類する. 例では「斬新な発想」の[斬新な]が分類対象になる.
このように[形容詞]が修飾している[名詞]の意味を把握しながら分類することで, 従来のように単に形容詞だけを分類するよりも, 「作り手がどのような意図でその形容詞を使ったのか」を分類担当者が理解でき, 「対象商品特有のイメージ」を解明できると考えた.

商品イメージ解析法の手順
図3の「商品イメージ解析法」で得られる結果とその効果を解析事例によって明らかにする.
4-1 解析対象と用語収集・解析方法解析対象のコンセプト文の選択では, 商品の種類が多くて, メーカー間や商品の種類間でのデータの比較検討ができるものとして, 自動車のコンセプト文を選んだ. それらはメーカー4社(α, β, γ, δ)のホームページ掲載文であった. 自動車のクラスは表示価格180万円未満, 車種数はそれぞれ20, 10, 9, 4の計43車種であった.
用語の収集・整理では, 「形容詞+名詞」単位で収集した. そのうち, 『斬新な発想と感覚』のように, 形容詞で修飾される名詞が2語に渡る場合は, 『斬新な発想』と『斬新な感覚』として分割・整理した. 用語の分類担当者は商品のイメージを研究している男子学生3名であった. そこで得た分類結果を研究者2名がチェックし, 再び分類担当者3名が検討しあって修正した. 用語の分類に際しては, 分類担当者どうしで用語の意味に共通認識が得られるように, まず分類者と研究者で, 自動車のイメージ, 並びにその表現用語の解釈と分類の仕方について話し合った.
コンセプト文の検索時期は2005年5~6月であった.
解析手順の各段階で得た用語の分類結果については, メーカーおよびカテゴリー間で違いがあるかどうかを比率の同質性検定(χ2検定)によって検討した.
4-2 結果と考察 4-2-1 第1段階「形容詞+名詞」の収集・整理「商品イメージ解析法」の第1段階, 「形容詞+名詞」単位の収集・整理によって, 自動車43車種すべてのコンセプト文から総語数414単位が得られた.
4-2-2 第2段階「形容詞+名詞」単位のカテゴリー化(自動車特有の「感性(形容詞+名詞)」の特定)第2段階では, 対象商品のイメージ表現の特性を反映させるために, 「形容詞+名詞」単位の特に[形容詞]に着目して4カテゴリー(物性・評価(商品の良否)・嗜好・感性)に分類し, 単位として何を表現しているかを調べた. ここで「評価」とは, 単に商品の良し悪しを指す. また, 「感性」については定義が必ずしも統一的ではないために, 物性, 評価, 嗜好の各カテゴリーに当てはまらない用語すべてを「感性」に当てはめた. 4カテゴリーの分類では, 例えば「フレキシブルな+収納空間」では形容詞[フレキシブルな]に着目して「物性」, 「いいと思える+もの」では[いいと思える]に着目し, て「評価」, 「好きな+車」では[好きな]に着目して「嗜好」, そして前掲「斬新な+発想」では[斬新な]に着目して「感性」とした.
結果を表5に示した. この表では, 各カテゴリーの出現単位数を比率に換算した. これにより, どのメーカーも「感性」の比率が最も高く, 商品の「感性」部分を多く表現していることがわかった. また各カテゴリーの単位数をχ2検定した結果, 4カテゴリーの比率にはメーカー間で差のあることも認めた.

「形容詞+名詞」のカテゴリー化
図3の第3段階では, 第2段階で「感性」に分類された「形容詞+名詞」単位について, それらが「感性」のどのような内容を表現しているかを調べた. そこでは形容詞で修飾される [名詞]に着目して分類した. こうして分類者は自動車でのイメージ表現の枠組みを理解した.
その結果, 8つのカテゴリーを得た(表6). カテゴリーは, 例えば「快適な+時間」の名詞[時間]に着目して得た「1. 状況・シーン」, 同様に「開放的な+空間」などの「2. 居住環境」, 「スマートな+スタイル」などの「3. デザイン・外観」, 「向上した+安全性」などの「4. 安全」, 「優れた+環境」などの「5. 環境」, 「新たな+高性能」などの「6. 先進技術」, 「スムーズな+積み降ろし」などの「7. 人の行動」, 前掲「斬新な+発想」などの「8. 人の認知」であった.
これら8カテゴリー間の出現単位数には, 各メーカー間で有意な差があることをχ2検定で確かめた. 表6では, 単位数を比率に換算した. メーカーαでは「デザイン・外観」と「先進技術」, βでは「状況・シーン」と「居住環境」, γでは「デザイン・外観」と「人の認知」, δでは「居住環境」と「人の認知」で高い比率を示した.
このように第3段階では, 各メーカーの意図した「感性」の内容(対象商品でのイメージ表現の枠組み)が理解できた.

感性のカテゴリー化
図3の第4段階では, 第3段階で自動車でのイメージ表現の枠組みを理解した分類者が, 「感性(形容詞+名詞)」のなかの [形容詞]だけを抽出してKJ法で分類し, 自動車特有のイメージを調べた. その結果を表7に示した. これによって, 自動車特有のイメージはこの表の8カテゴリー(以下, 感性8カテゴリーと記述)から成ることが分かった. ここで, 「複合評価」は, [おしゃれな][ユニークな]など, 良さを想像させる多様な表現, 「評価」は, [上質な][最高の]など, 単に良いイメージとしてカテゴリー化した. そのほか, [大きな][コンパクトな]などの「見た目」, [ゆったりした][広い]などの「室内空間」, [代表的な][世界的な]などの「付加価値」, [あらたな][さらなる]などの「未来志向」, [強固な][静かな]などの「性能・技術」, [自由自在な][モダンに過ごせる]などの「人の行動」であった.
この表でも, 各カテゴリーに分類された形容詞の語数を出現率に換算した. 各カテゴリーの出現語数をχ2検定して有意な差を認め, 0.200以上のセルに網掛けした. これにより, メーカーαとβでは「室内空間」, γとδは「室内空間」と「付加価値」で高い比率を表し, イメージの特徴が示された.
以上の結果から, 「商品イメージ解析法」を用いると対象商品特有のイメージ内容を把握できるとともに, 各メーカーの商品イメージの特徴もわかることを明らかにした.
「商品イメージ解析法」の手順を経て自動車でのイメージ表現の枠組みを理解した分類者とそうでない分類者では, 形容詞の解釈の仕方にどのような共通性・相違があるかを調べた. この結果から, 「商品イメージ解析法」による対象商品に応じた分析の必要性と, この解析法の有用性を明らかにする.
5-1 方法「商品イメージ解析法」の手順を踏まない新たな分類者(形容詞が自動車のイメージ表現語であることを知らない)3名に, 本解析法, 第4段階で分類した形容詞と同じ形容詞を, KJ法で分類させた. その分類では, 事前に「7個前後のカテゴリーになるように」と教示した. 実験の実施時期は2005年11月であった.
この分類結果と「商品イメージ解析法」の手順を経て自動車特有のイメージ表現の枠組みをもった分類者が分類した結果(表7)との共通性・相違を検討した. 両結果の共通度Cjkは式(1)で算出した.
Cjk=kn/jm (1)
ここで, jmは, 枠組みをもった人の分類結果jにおけるm番目のカテゴリーの語数, knは枠組みを持たない新たな人の分類結果kのn番目のカテゴリーの語数である.

形容詞のKJ法によるカテゴリー化
式(1)によって, 「商品イメージ解析法で自動車のイメージ表現の枠組みをもった分類者の分類結果」と〈そうでない人の分類結果〉をもとに, 双方のカテゴリーの意味共通度を計算し, 行列形式でまとめた. それを表8に示した. この表で, 「商品イメージ解析法」の手順を経て自動車でのイメージ表現の枠組みを持った分類者から得られた「8カテゴリー」を表, 上段に示した. 一方, 同じ形容詞を, 枠組みをもたない分類者が分類した〈8カテゴリー〉を表, 左側列に示した. ここで, 表, 上段の「複合評価」と対応する左側列〈デザインの良さ〉の共通度をみると0.500であった. このことは, 枠組みをもった分類者が「複合評価」に分類した28語のうちの14語を, 枠組みを持たない分類者が〈デザインの良さ〉に分類したということを表している. 比率が高いほど, 両者の間に強い共通イメージがあるということになる. 逆に, 比率が低いほど両者に隔たりがあり, それらのカテゴリーの意味が共有されていないということを表している. この表での総語数とは, 対象となった[形容詞]の合計である.
表8では, 比率0.500以上のセルに網掛けをして, 共通性を検討した. 「複合評価」は〈デザインの良さ〉, 「評価」は〈高級感がある〉, 「未来志向」は〈変わるか・変わらないか〉, 「性能・技術」は〈機能・性能〉, 「人の行動」は〈使い, やすさ〉において, それぞれ高い比率となった. これらの結果は, 「商品イメージ解析法の手順を経てイメージ表現の枠組みを持った分類者」も〈そうでない分類者〉も, 上記カテゴリーに分類された形容詞からイメージを共有できることを示している. 具体的には, 「複合評価」と〈デザインの良さ〉では“デザイン”という共通性があり, 「評価」と〈高級感がある〉では“良い・悪い”, 「未来志向」と〈変わるか・変わらないか〉では“時間”, 「性能・技術」と〈機能・性能〉では“性能”, 「人の行動」と〈使いやすさ〉では“人の動き”という意味で, それぞれ共通性があると考えられた.
一方, 「見た目」「室内空間」「付加価値」の3カテゴリーでは, 特に共, 通性を見出す, ことはできなかった. なかでも「枠組みをもった分類者」から得た「付加価値」に属する形容詞は, 〈枠組みを持たない分類者〉から得た各カテゴリーに用語が分散し, いずれかのカテゴリーで高い比率を示すということはなかった. この結果から, 枠組みをもっていなければ, 自動車の「付加価値」としての形容詞は, どんな対象についての付加価値を表現しているのか, イメージしにくいことがわかった. また, 全く別のカテゴリーとして捉えてしまう可能性も見出した. そしてこの事実は, 従来の形容詞だけを捉えて解析する方法が, 単なる形容詞の意味上(辞書的意味)の分類である危険性を示したものである.
以上の結果によって, 商品コンセプト文のようなテキスト型データから商品イメージを解析するには, 本解析法第3段階, すなわち, 対象商品に応じたイメージ表現の枠組みをもつ手続きを, 用語の分類で組み込む必要のあることを明らかにした. これによって, 「商品イメージ解析法」の有用性が確かめられた.

枠組みを持った分類者と持たない分類者の間の各カテゴリーに分類された形容詞間の共通度
先に, 既存のコンセプト文では「対象商品でのイメージ表現の枠組みを持たない一般のユーザー」が作り手の意図を充分イメージしにくいこと, その一方でイメージできそうな文とできない文のあることもわかったので, 「商品イメージ解析法」で求めた自動車の感性8カテゴリーを用いた評価実験から, 作り手の意図がイメージされやすいコンセプト文構成法についての知見を得る. またここで得られる知見から, 「商品イメージ解析法」の可能性も確かめる.
6-1 方法 6-1-1 コンセプト文の選定評価対象のコンセプト文には, 第2項の実験結果(表4)で, 本来表現している自動車の選択率が最も高かったコンセプト文を「イメージ伝達度の最も高い文」として文Aを, その逆を「最も低い文」として文Hを選んだ. それらは表1, 表2に示したとおりであり, 各文を構成するセンテンスはA1~A6,H1~H9であった.
6-1-2 評価実験評価対象は文Aと文Hの各センテンスであった. 評価は, 自動車の感性8カテゴリーに対するイメージ程度を, 持ち点5点で8カテゴリーに振り分ける方法で行われた. 評価者は女子学生28名, 実験の実施時期は2005年11~12月であった.
センテンスごとに, 感性8カテゴリーに得られたイメージ得点を, 8カテゴリーの合計得点が1.0になるように比率に換算した. 各センテンスの8カテゴリーに得たイメージ程度(比率)を調べ, この大きさのセンテンス間でのパターンについて, 「イメージ伝達度の高い文A」と「低い文H」との間で比較検討した.
6-2 結果および考察 6-2-1 各センテンスにおける感性8カテゴリーのイメージ程度〔イメージ伝達度の高い文A〕文A(表1)について, センテンスごとの感性8カテゴリーに得たイメージの比率を表9に示した. この表で, 例えばセンテンス番号A3での「見た目」の比率が0.684であるということは, センテンスA3を読んだときに抱くイメージ程度の7割近く(0.684)が「見た目」についてであったことを表している.
比率が0.200以上のセルに網掛けをして, そのカテゴリー内容を調べた. その結果, 第1センテンスでは, 「複合評価」と「評価」の2カテゴリーで網掛けされた. 次のセンテンスから以降は全て, 網掛けされたカテゴリーが1つであった. 第1センテンスで網掛けされた2つのカテゴリーの上位概念が『評価』であることを考慮すると, 「比率(イメージ程度)の大きいカテゴリーは, 1センテンスに1カテゴリー」を基本としており, 評価者には, 各センテンスで何を表現しているかが認識された.
比率の高かったカテゴリー順序(イメージ内容の伝達順序)を調べると, 第1センテンスでまず「評価(良さ)」, そして次のセンテンスからは, その意味・内容(「未来志向」「見た目」「性能・技術」など)となっていた. さらに, 文Aの最後のセンテンスでは, 第5項の知見(だれでも共有できるイメージは「性能・技術」「未来志向」)のうちの「未来志向」を再び強くイメージするという順序であった.

センテンスごとの感性8カテゴリーに得たイメージ程度(比率)
[イメージ伝達度の高い文Aの場合]
文H(表2)は, 9センテンスから成っていた. センテンスごとに求めた感性8カテゴリーのイメージ程度(比率)を表10に示した. ここでも0.200以上のセルに網掛けした. その結果, イメージ伝達度の高い文とは対照的に低い文では, センテンスごとに網掛けされたセルの数が多かった.
第1センテンスでは, 3つのカテゴリーで網掛けされた. そのために, 突出して高い比率を示すカテゴリーが無かった. また網掛けされた3つのカテゴリー内容は, 多岐に渡った. 第2, 3センテンスでは, 網掛けされたセル(カテゴリー)は, 1つであったが, 再び第4センテンスで 3つになった. 第5センテンス以降も同じ傾向を示した.
これらの結果から, 第2,3センテンスで強くイメージした内容は, 後に続く第4センテンスで不鮮明になり, 結果として, ユーザー側のイメージは曖昧になり, 作り手の意図したイメージを充分認識できなかったといえる. 第5センテンス以降も同様であった.

センテンスごとの感性8カテゴリーに得たイメージ程度(比率)
[イメージ伝達度の低い文Hの場合]
「イメージ伝達度の高い文」と「低い文」のイメージ程度(比率)の違いから, 商品特有のイメージ伝達度を高めるコンセプト文を構成するには, 次の点に留意すれば良いことが分かった. それを以下に示した.
1)表現内容の明確化(内容が多岐にわたらない) 2)1センテンスに1表現内容 3)表現順序は評価(良い)イメージ, 次にその内容 4)伝達したいイメージを繰り返し表現する.
以上の知見は新たな商品開発におけるコンセプト文構成の際に利用/応用できることから, 「商品イメージ解析法」の可能性を検証することができた.
商品コンセプト文は作り手の意図(商品特有のイメージや価値)を, 受け手であるユーザーに効果的に訴えようと工夫して表現された情報伝達媒体である. しかし実際には既存の商品コンセプト文でその情報を充分伝達することが難しいこと, その一方でイメージできそうな文とできない文のあることも認めた. そこで本研究では, 作り手がどのようなイメージをコンセプト文で伝えようとしているのか, またそれをどのように表現するとユーザーに正確に伝えられるかを明らかにするために「商品イメージ解析法」を開発して, 自動車コンセプト文を例に選んで, その商品イメージを調べた. 得られた結果をもとに, この解析法の有用性を確かめるとともに, コンセプト文構成法についての知見も得た. これらの知見が得られたことで, 解析法の可能性を確かめた.
この過程で得られた結果は次のようであった.
商品イメージの解析で着目した点は, 「同じ形容詞で表現されたイメージでも, 形容詞の後に続く名詞の違いによってイメージの内容は異なる」ということであった. したがって開発した「商品イメージ解析法」では, イメージ表現語を「形容詞+名詞」単位で捉えて収集・整理した. 用語の分類では, 「感性」を表現する「形容詞+名詞」の特に〔名詞〕に着目して分類することで, 分類担当者が商品特有のイメージ表現の枠組みをもち, その後「形容詞+名詞」単位の〔形容詞〕を分類した.
本解析法の事例研究として, 自動車コンセプト文の商品イメージを調べた結果, 自動車特有のイメージとして, 8カテゴリー(1. 複合評価, 2. 見た目, 3. 室内空間, 4. 評価, 5. 付加価値, 6. 未来志向, 7. 性能・技術, 8. 人の行動)が存在することを認めた. これらのカテゴリーに対する評価者のイメージ程度は, メーカー間で差のあることも確かめた. これらの結果から, 「商品イメージ解析法」によると商品特有のイメージ内容やメーカー間でのその違いを把握できることが明らかになった.
「商品イメージ解析法」の有用性を, 「本解析法で商品特有のイメージ表現の枠組みをもった分類者が, 用語を分類した結果」と, 「枠組みをもたない新たな分類者が, 同じ用語を従来のKJ法で分類した結果」とを比較検討した. その結果. 特に「5. 付加価値」を表現する形容詞では, 枠組みを持っていないと, それが自動車の付加価値を表現している言葉であることが分からず, 全く別のカテゴリーとして分類される危険性のあることを見出した. このことから, 従来の方法が単なる言葉の意味上の分類であるのに対して, 「商品イメージ解析法」の手順によると, 商品対応のイメージ解析が可能になることを明らかにした.
「商品イメージ解析法」で求めた感性8カテゴリーの評価値をもとに, 作り手が意図したイメージ伝達度を高めるコンセプト文構成法について, 以下のような知見を得た.
1)表現内容の明確化・多岐にわたらない.
2)1センテンスに1表現内容とする.
3)表現順序は評価(良い)イメージ, 次にその内容とする.
4)強く伝達したいイメージ内容を繰り返し表現する.
以上, 「商品イメージ解析法」を用いると, 商品コンセプト文で表現されている商品特有のイメージ内容の解明やコンセプト文構成に利用/応用できる知見を得たことで, 本解析法の可能性を確かめた.
本研究の一部は, 株式会社豊田中央研究所からの研究助成金を受けて行われた.
注1:http://toyota.jp/corollasedan/concept/
注2:http://www2.nissan.co.jp/LATIO/top.html
注3:http://www.honda.co.jp/CIVIC/SP/movie/index.html
注4:http://www.axela.mazda.co.jp/4door/concept.html
注5:http://toyota.jp/vitz/concept/concept/index.html
注6:http://www.nissan.co.jp/CUBE/
注7:http://www.honda.co.jp/auto-lineup/fit/
注8:http://www.demio.mazda.co.jp/
注9:http://www2.nissan.co.jp/MARCH/K12/0508/CONCEPT/main1.html
いずれもURL2005年5月掲載, 現在掲載内容は変更されている.