日本官能評価学会誌
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研究報文
陸上養殖された無毒化トラフグの肝臓の一般成分,脂肪酸組成とその利用
峯木 真知子大貫 和恵澤崎 絵美小澤 啓子西念 幸江五百藏 良野口 玉雄
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2009 年 13 巻 1-2 号 p. 23-30

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1. 緒言

生鮮魚介類の安定した供給を目途にトラフグも養殖されるようになり, 市場で入荷される総量の8割以上が養殖ものである. 養殖の仕方によって, 無毒のフグが生産されることが証明されている(野口ら, 2004, 2006). トラフグの肝臓(フグ肝)は, 従来伝統食品として食されていたが, 中毒の報告もあることから, 厚生省環境衛生局長通知(昭和58年12月2日)により, 飲食店で扱うことができず, 無毒性が証明されるものでも, 現在は廃棄されている. そこで, 本研究では, この廃棄されているフグ肝の食料資源としての価値を調べることを目的とした養殖のフグの肝では, 魚体に占める割合が天然物より高く, 粗脂肪量が多い報告はある(佐伯と熊谷, 1982)が, 脂肪酸組成やアミノ酸組成については未明である. 毒性試験により, 無毒が確認された陸上養殖のフグ肝を用い, 一般成分, 脂肪酸組成分析, テクスチャー測定, 組織観察および官能評価を行った.

大貫と野口(2006)は, フグ肝の試食会を行っているが, フグ肝に一番近いと思う食材は, 「アンコウの肝臓」「フォアグラ」であったと報告している. このことから, アンコウの肝臓(アン肝)を比較試料として用いた.

2. 実験試料および方法

(1)試料

本研究で用いたフグ肝は, 佐賀県唐津市呼子にある㈱萬坊で室内水槽(100t)により, 養殖されているトラフグ2年魚から腑分けされたもの(Figure 1)を用いた. 室内水槽では, 隣接する海から海水をポンプで引き入れ, 水槽に入るまでにフィルターによるろ過と一部の海水の電気分解による殺菌を行っている. この養殖されたトラフグから腑分けされた肝臓を, クール便で配送して, 2006年12月から2007年1月に200個体(各100個)を入手した. フグ肝の重量は, 1個165.9g±22.5g(12月試料:重量165.4g±17.5g, 1月試料:166.5g±30.5g, 各 100個)であった. このフグ肝は食品衛生検査指針・理化学編中のフグ毒検査法に準じて, フグ毒を抽出し, マウス毒性試験(厚生省生活衛生局監修, 1991)を行い, 毒性がすべて認められなかった(大貫と野口, 2006)ことを確認した. 無毒を確認したフグ肝を用い, 血管の太いものをはさみで裂き, 血抜きを行い, 水で十分に洗浄し, 重量を測定した. その後, ポリ袋に入れ, 直ちに冷凍保存(-40℃)後, 解凍して実験に供した(以下, 生とする).

比較試料として, 2007年1月に量販店から中国産のアン肝を購入し, 冷凍保存(-40℃)後, 解凍して用いた(以下, 生).

加熱方法は, アルミ鍋(内径18cm)に蒸留水1000mlを沸騰(95~100℃)させ, 30gに切ったフグ肝1個を7分加熱した(以下, 加熱). 加熱中はフグ肝に熱伝対温度計を挿入し, データコレクター(安立計器製 AM-7002)で記録した. なお, 加熱終了時のフグ肝およびアン肝の中心温度は95.8±1.0℃を確認した. 加熱後ポリ袋に入れ, 氷水中で冷却し, 室温に戻してから実験に供した. アン肝もフグ肝と同様に調製した.

Figure 1

Pufferfish liver

(2)重量および重量比 フグ肝は, 血抜き後, 解凍後(生), 加熱後のいずれも表面の水分をクッキングペーパーで拭き取り, 重量を測定した. 加熱後重量は生(加熱前)の重量に対する比(重量比)として求めた.

(3)pH

フグ肝およびアン肝のpHは, 生および加熱した試料にpHメーター((株)ビー・エー・エスpH Boy KS701)を突き刺した状態で測定した.

(4)成分分析

1) 一般成分

一般成分は, 五訂増補日本食品標準成分表(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005a)で用いられている分析法に準じて測定した. 水分は常圧加熱乾燥法(105℃)による減量法を用い, 粗たんぱく質はマクロ改良ケルダール法を用いて測定し, それに定量した窒素量に係数を乗じて算出した(換算係数は6.25を用いた). 粗脂肪はジエチルエーテルによるソックスレー抽出法を用い, 灰分は直接灰化法(550℃)にて行った. なお, 炭水化物は水分, たんぱく質, 脂質および灰分の合計(g)を 100gから差し引いた値で示した. 分析試料のフグ肝は200個体よりほぼ同重量の5個(12月試料より3個, 1月試料より2個)を選出して試料とした.

2) 脂肪酸組成・コレステロール

脂肪酸組成・コレステロールの分析は, 総脂質を抽出後, 脂肪酸組成分析定量法およびコレステロール定量法(水素炎イオン化検出-ガスクロマトグラフ法(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005a))に準じ, ヒューレットパッカード(株)製HP6850検出器(FID)を用い, 脂肪酸組成は, カラム J&W DB-WAX 0.25×0.25 30m, インジェクター温度250℃, ディテクター温度280℃, コレステロールは, カラム J&W DB-1 0.53×1.0 15m, インジェクター温度250℃, ディテクター温度280℃にて行った.

3) 脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミン(A・D・E)の分析(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005a)は, 高速液体クロマトグラフ法(HPLC)で行った. ビタミンAおよびビタミンDは, 機器:日本ウォーターズ(株)製Waters 2690, 検出器(UV-VIS)を用い, カラム:Wakosill C18(4.5×150mm)で測定した. ビタミンEは, 島津製作所(株)LC10検出器(蛍光)を用い, カラム:GLサイエンス Inersil SIL 100-5で測定した.

(5)破断試験

生および加熱したフグ肝とアン肝の中央部から, 20×20×10mmに切り出した試料を, クリープメーター(山電製 RHEONER II RE2-33005)により, 破断試験を行った. 測定条件は, プランジャーは直径5mmの円柱を用い, ロードセル20kg, 測定スピード1mm/sec, 歪率100%とした. 試料数は各5個, 実験の繰り返し数は3回とした.

(6)組織観察

生および加熱したフグ肝(生・加熱)の中央部から10×10×10mmに切り出した試料を, ドライアイス・アセトンで急速凍結した. クリオスタット(生-35℃, 加熱7分試料:-30℃)で20μmの切片にし, タンパク質・脂肪染色(オイルレッド・ヘマトキシリン二重染色)を行って光学顕微鏡で観察した.

(7)官能評価

官能評価試料には, 7分加熱したフグ肝とアン肝を用い, 提示試料は一人各15gとした. パネルは本学教職員(20~50歳代女性)8名で, 5段階評点法による分析型および嗜好型官能試験を行った. 分析型官能試験の評価項目は, 外観, におい, 脂っぽさ, 味で, 評点は, 1:非常に悪い(強い)から 5:非常によい(強い)とした. 嗜好型官能試験の評価項目は, 外観のよさ, 香りのよさ, 味の良さ, 食感のよさ, 総合評価で, 評点は, 1:非常に好ましくないから 5:非常に好ましいとした. 官能評価の実施にあたっては, ヘルシンキ宣言の精神にのっとり, 実験内容を文章で提示し, 口頭で無毒が証明されたフグ肝を用いることを説明した. パネリストからインフォームドコンセンサスを得てから官能評価を行い, さらに, 本学倫理委員会の承認を得た.

(8)統計処理

統計処理にはExcel統計Ver.6.0(株式会社エスミ製)を用いた.

有意差検定は, 一元配置分散分析(ANOVA)後, 多重比較(測定結果:チューキー, 官能評価:スティール・ドゥワス)を行った.

3.実験結果

(1)フグ肝の重量

試料に用いたフグ肝45個の血抜き後の重量は, 1個156.9±29.8gであった.

生(解凍後)のフグ肝の重量は, 1個151.1±21.7gであった.

比較した生のアン肝の重量は1個183.3±5.5gであった.

フグ肝(30.0g±0.7g,試料数10個)を7分加熱した場合, 重量は23.6±0.9gであった. 加熱による重量比は78.6±4.3%であった. それに対して, 加熱したアン肝の重量比は, 95.4±0.2%であった. 加熱による重量比はフグ肝よりアン肝の方が有意に高かった.

(2)フグ肝のpH

生のフグ肝のpHは, 6.6±0.1であり, 月別試料間(12月, 1月)の差異はなかった. 生のアン肝のpHは5.8±0.0で, フグ肝の方が有意に高い値であった.

加熱した試料のpHでは, フグ肝が6.6±0.0,アン肝が6.5±0.0であった.

(3)一般成分

フグ肝(生)の一般成分では, 水分27.8%, 粗たんぱく質3.8%, 粗脂肪65.1%で, 脂肪量は60%以上を示した(Table 1). また, 灰分と炭水化物量は少なかった. フグ肝の月別試料(12月, 1月)では, 水分が12月27.7%, 1月28.0%, 粗脂肪が, 12月64.1%, 1月66.7%で同程度であった.

アン肝の一般成分値(Table 1)(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005b)と比較すると, フグ肝の水分量は, アン肝より約17%少なく, 粗たんぱく質量では, 6.2%少なく, 粗脂肪量では20%以上多かった.

Table 1

Chemical composition of cultured pufferfish liver

(4)脂肪酸組成・コレステロール

フグ肝(n=3)の脂肪酸組成では, 総脂肪酸100g中オクタデセン酸(オレイン酸)17.9gが最も多く, ヘキサデカン酸(パルミチン酸)17.1g, ドコサヘキサエン酸11.6g, ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)9.4g, オクタデカトリエン酸(n-3)(α-リノレン酸)9.3gであった(Table 2). アン肝の脂肪酸組成(Table 2)(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005c)と比較すると, オレイン酸とパルミチン酸が多いのは同じ傾向であった. フグ肝に含まれるイコセン酸量(3.1g/総脂肪酸100g)とドコセン酸量(1.7g/総脂肪酸100g)は, アン肝よりかなり少なかった.

また, コレステロール含有量をみると, フグ肝898mg/100gで, アン肝(560mg/100g)(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005b)より, かなり多かった.

Table 2

Fatty acid composition of total lipids of cultured pufferfish liver

(5)脂溶性ビタミン

フグ肝(n=1)に含まれるビタミン Aでは, レチノール当量が, フグ肝100g中8698μgREで多く, β-カロテン, α-カロテン, クリクプトキサンチンはいずれも0μgであった. ビタミンDは100g中18μg含まれていた. ビタミンE(α-トコフェロール)は100g中40mgで, ビタミンE(β-トコフェロール, γ-トコフェロール, δ-トコフェロール)はいずれも0mg/100gであった.

(6)破断応力

生のフグ肝の破断応力は6.66×105Paで, 加熱した場合は1.74×105Paであった. 加熱によりフグ肝の破断応力は, 1/6程度にかなり低くなった.

生のアン肝の破断応力は2.39×105Paで, 加熱した場合は3.80×105Paでフグ肝とは違って加熱により破断応力は生の1.6倍を示し, 高くなった(Figure 2).

Figure 2

Rupture stress of pufferfish liver and anglefish liver (raw, heated)

(7)フグ肝の組織構造

フグ肝の生の組織構造では, 全体がオイルレッドにより脂肪が灰色に(中程度の濃さ)染色され, 融合している大きな油滴状の脂肪が観察された. 濃く染色されたたんぱく質の網状構造は細く, 組織を構成していた(Figure 3B). たんぱく質の網状構造には小さな顆粒がところどころに観察され, 灰色の脂肪が全面を覆っていた. 脂肪はたんぱく質の隙間に存在し, かなり流動的であった. 沖田ら(1987)の観察している肝膵臓(矢印)の存在が観察された(Figure 3A).

加熱7分のフグ肝の組織構造では, たんぱく質の網状構造がいくぶん太くなっているのが観察された(Figure 3C, D). 加熱により, たんぱく質が凝固したためと考えた. たんぱく質の網状構造の隙間に脂肪が緊密に存在し, 加熱しても脂肪の多い構造を示した. また, 加熱により肝膵臓の中心の顆粒が溶出し, 不明瞭になっているのが観察された(Figure 3C).

Figure 3

The optical micrographs of the pufferfish liver (raw, heated)

(8)官能評価

加熱したフグ肝とアン肝の分析型官能検査(Figure 4)では, 「外観」の項目でフグ肝2.4±0.7, アン肝2.9±1.2の評点であった. 「におい」では, フグ肝3.3±1.3, アン肝3.5±1.4であり, 両者ともにおいが強い方と評価された. また, 「脂っぽさ」ではフグ肝3.8±1.2, アン肝4.0±0.8で, 両者とも強い方の評価であった. 「味」ではフグ肝よりアン肝の方がややよい評点であったが, すべての項目でフグ肝とアン肝の間に有意差は認められなかった.

嗜好型官能検査(Figure 4)では, すべての項目においてフグ肝・アン肝とも2点台の評点を示し, フグ肝の評価はアン肝より低い傾向にあったが, いずれの項目でも有意差は認められなかった.

Figure 4

The sensory evaluation of the heated pufferfish liver and anglefish liver

4. 考察

(1)栄養成分の特徴

フグ肝の一般成分では, 粗脂肪含有率が65.1%と高く, 粗たんぱく質含有率は低かった. 佐伯と熊谷(1982)は, トラフグの肝臓に含まれる粗脂肪量について, 天然魚55~73%, 養殖魚66~85%であり, 養殖魚の肝臓の粗脂肪量が著しく多いことを報告している. この値は, 本研究の粗脂肪量と近かった. 魚の成分は, 季節・産地・飼育条件などによる変動が大きいので, 一概に断言できないが, フグ肝はアン肝より高脂肪含有食品であると考える.

フグ肝は古くから珍重され, おいしいものとされているが, その毒性の点から現在は廃棄されている. しかし, フグ肝が魚体重量に対して占める割合は, 天然魚8~17%, 養殖魚12~17%(佐伯と熊谷, 1982)で養殖の方が大きく, これを利用することは資源の有効活用になる.

フグ肝とフォアグラ(ゆで)および肉類(牛・豚・鶏)の肝臓(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005d)について, 粗脂肪量を比較すると, フグ肝の脂肪量はフォアグラ(ゆで49.9g/100g(文部科学省科学技術学術審議会資源調査会編, 2005d)52.2±3.5%(frozen matter)(Molette et al, 2001))より多く, 牛(3.7%), 豚(3.4%), 鶏(3.1%)の肝臓より, かなり多い値であった. また, アン肝の成分について, 小櫛ら(1989)は, フォアグラと比較して, アン肝はフォアグラ同様に脂肪量が多く, 組成は類似していると報告している. 脂肪量からみると, フグ肝はフォアグラ, アン肝と同様に高脂肪含有食品と考える.

脂肪酸組成で, n-3系不飽和脂肪酸量(ドコサヘキサエン酸・α-リノレン酸・イコサペンタエン酸)は, 総脂肪酸100g中, フグ肝24.9g, アン肝17.4g, フォアグラ0gで, フグ肝が多い傾向にあった. なお, ドコサヘキサエン酸は, 総脂肪酸100g中にフグ肝11.6g, アン肝10.2g, フォアグラ0gであった. したがって, フグ肝はn-3系脂肪酸の優良な供給源食品である.

これらより, フグ肝の粗脂肪量はフォアグラに近いが, 脂肪酸組成はフォアグラよりアン肝に近いといえる.

フグ肝の栄養成分としては, イコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のサプリメントとしての利用が期待できる.

フグ肝のエネルギー量は, 613±31kcal/100gが得られ, 高エネルギー食品であるといえる. また, 同時に脂溶性ビタミン量が大変多い. 18歳以上の男女のビタミンAの上限量は3000μgRE/d(厚生労働省策定, 2005)であるが, フグ肝はレチノール当量を多量に含んでいることから, 生で食べる場合は, 30g未満にすることが望ましいと考える. ビタミンDおよびEにおいてもフグ肝を200-300g食べると上限量を超すことになる. フグ肝は, 多量に食べすぎないことが食べる際の注意点になる.

(2)加熱による影響

加熱によるフグ肝の重量変化率は78.6%で低く, 小さくなった. フグ肝では, 加熱後の破断応力の低下および組織構造の観察からも, 茹でることにより, 溶出される脂肪が多く, やわらかくなることが考えられる. 脂肪の溶出は, 茹で汁に溶出した脂肪分が浮いたのが肉眼でも観察できる. アン肝では, 加熱すると重量変化率(95.4%)が高く, 破断応力も生より高くなった. アン肝では, 構造の基本となるたんぱく質が10.0%で, フグ肝の3.8%より多く, 加熱により密な構造になったと考える. このことから, フグ肝とアン肝では, 脂肪含量が高く, 脂肪酸組成も類似しているが, 適する調理法は異なることが考えられる.

(3)官能評価

分析型官能評価では, フグ肝の「外観」の評価がアン肝より悪かったのは, 加熱による脂肪などが溶出し, 保形性が悪いためと考える.

嗜好型官能評価では, 「味」の項目で, フグ肝およびアン肝の評価が低かった. これは, 分析型評価で「におい」・「脂っぽさ」が強かったこと, さらにフグ肝を初めて食べるパネルが多かったことが影響したと考える. フグ肝のアミノ酸量を分析する(n=1:未発表)と, グルタミン酸含量は1096mg/100gであり, 鶏レバー・豚レバー(食品成分調査会編, 2006), アン肝(小櫛ら, 1989)と同様に多く含まれている可能性がある. しかし, 本研究の味の項目では, 低い評価であり, 矛盾が生じたが, フグ肝・アン肝とも, 独特のにおいと味をもっている食品であり, 日常的には薬味やポン酢などと供される. それらを添えることで, フグ肝の嗜好性の向上が期待でき, おいしく食べられると考える.

さらに, 本実験での加熱方法として「茹でる」を用いたが, 独特な臭みのマスキング, 脂っぽさ消すためには, 調理法ならびに調味料の検討が必要である.

5. 要約

佐賀県産陸上養殖したトラフグの肝臓(2006年~2007年)を試料とし, 無毒化されたフグ肝の食料的価値を調べた. 重量, pH,一般成分, 脂肪酸, 脂溶性ビタミン, テクスチャーを測定し, 組織観察を行った.

(1)フグ肝の一般成分では, 水分27.8%, 粗たんぱく質3.8%, 粗脂肪65.1%で, 脂肪が多かった. 脂肪量からみると, フォアグラ, アンコウ肝に近い食品と考える.

(2)フグ肝の脂肪酸組成では, n-3系不飽和脂肪酸量が多く, 特にドコサヘキサエン酸が多かった. 栄養成分としては, イコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸のサプリメントとしての利用が期待できる. ビタミンAの供給源食品としても期待できるが, 上限量から, 一日の喫食量は生食の場合は30g未満である.

(3)フグ肝は加熱にすると, 重量は20%以上減少し, 破断応力が低下した. これは, 加熱による脂肪などの溶出が影響し, 生よりやわらかいテクスチャーであった.

以上, フグ肝は新しい食材として期待できる.

引用文献
 
© 2009 日本官能評価学会
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