2009 年 13 巻 2-2 号 p. 106-114
現在, 市場ではさまざまな種類のスキンケア化粧品が販売されている. スキンケア化粧品とは洗顔料, 化粧水, 美容液, 乳液, クリームといった肌の状態を整えることを目的とする化粧品のことである. 特に, 化粧水と乳液は若年層から熟年層まで幅広い年代の人が使用し, スキンケア化粧品の中でも基本となっている.
化粧水は, 洗顔後の肌に水分を補給することを目的とした保湿化粧水が主となるが, その他に美白化粧水, 薬用化粧水, 収斂化粧水といった多くの種類が存在する. 乳液は化粧水では補いきれない水分, または化粧品では補えない油分, 栄養等を補給したり, 化粧水によって得られた水分が蒸発してしまうのを防いだりする目的で使用される.
化粧水や乳液といったスキンケア化粧品は, 低価格のものから高価格のものまでさまざまな種類が販売されている. しかし, 容器の素材は価格の違いに関係なくガラスやプラスチックがほとんどである. また, 化粧水は細身の容器で透過性のある着色, 乳液は太めの容器で不透明な着色といったように, 中身の違いを容器の大きさや形状, 色で表現している.
これまで化粧品容器開発は“見る(審美的な追及)”と“使う(ユーザビリティ)”の二つの視点で開発が行われてきた. この二つの視点は化粧品容器に限らず, 工学的な商品開発では一般的とされている. “見る(審美的な追及)”の視点ではデザインが無限にあり, オリジナリティを表現することができるが, “使う(ユーザビリティ)”の視点が加わることによりデザインが限られてしまい, 似たデザインの容器が多くなってしまうという現状がある. そのため, 新たな化粧品容器のデザインを考える必要性が出てきた. そこで我々は, 従来の表現方法として用いられていない触感に着目した. 化粧品容器における触感を考える上で重要な質感や重さに着目し, 容器表面の素材を変えることで, 新たな化粧品容器の提案ができるのではと考えた.
本研究ではこれまでの化粧品容器デザインにおける“見る(審美的な追及)”と“使う(ユーザビリティ)”という2つの重要な要素を結びつける“持つ”に着目し, スキンケア化粧品を使う際の, 容器を見てからそれを持つという動作時における, 生理心理状態を解析した. そして“見る”と“持つ”のプロセスを考えることで, 容器表面素材の触感による新たな化粧品容器のデザイン展開を提案することを目的とした.
ある対象を知覚する際には, 複数の感覚情報を同時に取り込んで処理している. このことから, 物を持つ際に, 視覚情報から重さ, 太さ, 硬さ, 摩擦感などを判断して, 力の入れ方を決め, 素材の見た目の触感が容器を持つ際の力の入れ方に反映されるのではと考えられた. そのため, 実験1では, 素材の視覚情報と指圧の対応関係を明らかにすることを目的とした.
2.2 実験方法容器の視覚情報を明らかにするための官能評価実験と, 指圧を明らかにするための指圧測定実験の2種類の実験を行った. 本実験では, 既存の市販されている商品が化粧水と乳液で容器の印象を分けていることから, 中身の印象が評価に関連する可能性を考え, 同じ素材の容器であっても化粧水用, 乳液用に分けることとした.
使用した容器は, ガラス(約175g)と樹脂(約43g)の2素材で, 形状はほぼ同一のものを使用した(Fig. 1). いずれも無色透明の容器であり, これらの容器に対して表面を加工したり, 別素材を巻きつけるなどして, ボトルの表面形状を変えたものを27種類用意した. これらの中から, スキンケア化粧品を常用している20代前半の女性3名による指圧測定と, 同じくスキンケア化粧品を常用している20代前半の女性19名による化粧水らしさと乳液らしさに対する順位付けを行った. 指圧測定実験は, パネルの利き手である右手の5指の指先と付け根, 親指以外の第1関節から第2関節の間に圧力センサを装着した状態で容器の開閉作業を行った. 容器の提示はパネルによって異なるように提示した. 順位付けは容器をパネルの前に並べた状態で, パネルには自由な順序で実際に容器を手に取ってもらい, 化粧水らしさ, 乳液らしさを感じるものを1位から10位まで選んで用紙に記入してもらった. 化粧水らしい容器を選ぶときには, 化粧水の入った容器を使用し, 乳液らしい容器を選ぶときには, 乳液の入った容器を使用した. 指圧測定の結果の相関を求め, 相関から順位付けでほぼ選ばれなかった容器を除外することで, 似た触感の容器や化粧品容器としてふさわしくないと感じられる容器を除いて実験で使用する容器を選定した. その結果, 化粧水と乳液用容器の共通容器サンプルとして, ガラスボトル3種:「ガラス」(無色透明), 「スリ」(ガラスの表面を腐食させスリにしたもの), 「ガラス起毛」(ガラスの表面に白色の起毛素材を巻いたもの), 及び樹脂ボトル8種:「樹脂」(無色透明), 「ツヤ鏡」(樹脂に鏡面素材を巻いたもの), 「グロス」(樹脂に白色で光沢のある素材を巻いたもの), 「方眼」(樹脂に方眼模様のフィルムを巻いたもの), 「サテン」(樹脂に白色のサテンを巻いたもの), 「テーブルセンター」(樹脂にビニル製の白色レース模様のテーブルセンターを巻いたもの), 「レース」(樹脂に白色のレースを巻いたもの), 「樹脂起毛」(樹脂に白色の起毛素材を巻いたもの)の計11種を使用した. また, 化粧水専用容器サンプルとして樹脂ボトル2種「茶紙」(樹脂に茶色の紙を巻いたもの), 「和紙」(樹脂に白色の和紙を巻いたもの), 乳液専用容器サンプルとして樹脂ボトル1種「すべり止め」(樹脂に白色網目状のすべり止め素材を巻いたもの)を加え, 化粧水用容器サンプル13種類, 乳液用容器サンプル12種類の全25種類を使用した(Fig. 2, 3, 4). 実験の際には, 各容器サンプルに30gの化粧水または乳液を入れて使用した.
パネルは, スキンケア化粧品を常用している20歳代前半の女性で全て右手が利き手であった. 人数は官能評価実験15名と指圧測定実験4名であった. 手の大きさが指圧に影響する可能性を考え, 指圧測定実験の4名は, 官能評価実験に参加したパネルのうち, 平均的な手の大きさ(縦幅17.7cm, 横幅7.4cm)に近いパネルに参加してもらった.
官能評価実験では, 容器サンプルの見た目について物理的な側面で異なると考えられる「重さ」「滑りにくさ」「扱いやすさ」について5段階評価尺度を用いた. パネルには, パネルの前に並べられた各容器サンプルを机の上に置いた状態で容器を見てもらい, 触感を想像して評価してもらった. 評価順序はパネルによって異なるようにし, 一度の実験で全ての容器サンプルの評価を行った. 評価尺度とその得点は, (1)全く思わない, (2)あまり思わない, (3)どちらとも言えない, (4)ややそう思う, (5)非常にそう思う, の5段階尺度を用いた.
指圧測定実験では, 圧力分布測定システム(ニッタ株式会社)とグローブセンサ(ニッタ株式会社)を用いた. パネルには椅子に座ってもらい, 利き手である右の掌の指先と指の付け根にグローブセンサを装着した. その後, 容器を5秒間持つという動作を行ってもらった(Fig. 5). 容器はパネルごとに異なるように提示した.

ガラス容器及び樹脂容器の形状

サンプル例(ツヤ鏡)

サンプル例(サテン)

サンプル例(樹脂起毛)

指圧測定時の動作
化粧水と乳液の官能評価結果(Table 1, Table 2)に関して, 容器サンプル間について対応のある一元配置の分散分析を行った. 化粧水では「滑りにくさ」(F(12, 182)=1.79, n.s.)で容器間に有意な差異はなく, 「重さ」(F(12, 182)=2.12, p<.05)と「扱いやすさ」(F(12, 182)=6.99, p<.05)では容器間に統計的な有意な差異があった. 乳液では「重さ」(F(11, 168)=1.28, n.s.)で容器間に有意な差異はなく, 「滑りにくさ」(F(11, 168)=3.89, p<.05)と「扱いやすさ」(F(11, 168)=6.58, p<.05)では容器サンプル間に有意な差異があった.
指圧測定実験の結果, 総荷重量の平均を求めた(Table 3). 本実験ではパネルが4名であったため, 統計的に差をみることができない. そのため, 各容器サンプル間の標準偏差とパネル間の標準偏差を比較した. その結果化粧水容器では容器間の標準偏差が231.00, パネル間の標準偏差が668.88となった. 同様に, 乳液容器では容器間の標準偏差が122.33, パネル間の標準偏差が365.42となった. 化粧水容器と乳液容器共に, パネル間の指圧のばらつきに比べ, 容器サンプル間のばらつきが少ないことから, 容器サンプル間で指圧の差は少ないと考えられる.
次に, 化粧水用容器サンプル(Table 4)と乳液用容器サンプル(Table 5)の各容器に対して, 親指から小指までの各指の指先に対する荷重値の平均を算出した. この荷重値の値は, パネルによってばらつきがあったため, 親指から小指までの全荷重を100%として, 各指の荷重割合を算出した.
化粧水用容器の場合も乳液用容器の場合もおもに親指と中指に力がかかっており, 容器によってばらつきが大きいことが分かった. また, 人差し指, 薬指, 小指は力があまりかかっておらず, ばらつきも小さいことが分かった.
これらのことから, 容器を持つ際に, 親指と中指の力のかけ方で持ち方を調節し, 他の指は容器にそえて支えるという役割があると考えることができる.
また, 親指と中指以外の指をみると, 人差し指と薬指の加重平均値に差があることがわかる. 化粧水容器の場合には中指の次に人差し指の荷重平均値の割合が高いものが多く, 逆に乳液容器では中指の次に薬指の荷重平均値が高いことが示唆された.

化粧水用容器サンプルの評価結果(15名の平均)

乳液用容器サンプルの評価結果(15名の平均)

総荷重量の4名の平均(gr)

化粧水用容器サンプルの荷重値の4名の平均(%)

乳液用容器サンプルの荷重値の4名の平均(%)
官能評価実験の結果を分散分析したところ, 化粧水用容器サンプルでは「重さ」と「扱いやすさ」に, 乳液用容器サンプルでは「滑りにくさ」と「扱いやすさ」で容器サンプル間に有意な差異がみられた. しかし, 指圧測定実験の結果では, 容器サンプル間に違いはみられなかった. このことから, 化粧品容器において, 容器の素材によって視覚から得られる情報が異なることで印象が変わるものの, 容器を“持つ”際には同じような指圧で持つ可能性が考えられる. しかし, 親指と中指の指圧のかけ方は異なっているため, 特にこの2指の力のかかり方に注目する必要がある. また, 親指と中指以外の指では, 化粧水容器においては中指の次に人差指の荷重値の割合が高いものが多く, 逆に乳液容器では中指の次に薬指の荷重値平均値が高いことが示唆された. これは使用したサンプルの中に容器の中身が見えるものがあり, 同じ容量では乳液の方が比重が軽いため, 見た目が僅かに多くなる. そのため, 見た目の違いが影響した可能性がある. また, パネルがスキンケア化粧品を常用していることから, 過去の経験から乳液の方が化粧水に比べて粘性が高いという粘性の違いや, 一般に販売されている化粧水容器に比べて乳液容器の方が大きいという大きさの違いを考えたことが反映されている可能性がある. そのため, 乳液容器に比べて軽いように感じる可能性のある化粧水容器では親指, 中指を人差し指で支えていたと考えられる. また, 化粧水用容器に比べて重いように感じる乳液容器では, 親指, 中指, そして薬指が補助的な支えとなったと考えられる. これらのことから, “持つ”際の指圧は変わらないものの, 容器の重さを考慮して持ち方を変えている可能性が示唆された.
実験1の結果, 視覚から得られる情報が異なっても, 容器を持つ際の指圧に有意な差がないと考えられた. このことは, デザインの審美性(見る)はユーザビリティ(使う)にあまり影響しないとも推察され, 従来の枠に囚われない自由な視覚的デザインの展開が考えられた. しかし, 単純に視覚的デザインを斬新なものにすればよいというわけではなく, 実際には使いやすさや気持ち良さなど, 「持つ」という動作時における利用者の感性的な側面を重要視する必要がある(鈴木と西原, 2002). 持った時の触感が, 自然で受け入れやすければ, 心地よく感じ, 逆に不自然ならば違和感を覚え不快感を与えてしまう(岡野, 1997). そのため, 容器のデザインと, 利用者が持つ高級感や期待感などの感性的な側面との「一致」を考える必要がある. 実験2では, スキンケア化粧品に対する感性的な側面として使用感を考えた. そして, 実験1で得られた指圧測定の結果をもとに, 官能評価を行うことで, 特に指圧のかけ方の異なっていた親指と中指の役割および, “見る”と“持つ”のプロセスを考えることによって, 化粧水の使用感に適している容器の触感, 乳液の使用感に適している容器の触感がどのような素材かを明らかにすることを試みた.
3.2 実験方法実験2では, 容器の特徴とそこから連想する中身の使用感の関係を明らかにするための官能評価実験を行った. 容器サンプルは実験1で使用したものと同じものを使用した. パネルは, スキンケア化粧品を常用している20歳代前半の女性17名であった.
評価項目は, 現在販売されているスキンケア化粧品のコンセプト文で多く使用されている言葉から抽出した. 容器の中身について, 主に化粧水のコンセプト文から抽出した「みずみずしさ」「さっぱり感」「さらさら感」「つるつる感」「透明感」「ツヤ感」「清涼感」「弾力感」「引き締め感」「薬用感」「浸透感」「肌触りの良さ」「化粧水らしさ」, 主に乳液のコンセプト文から抽出した「潤い感」「ハリ感」「柔らかさ」「乳液らしさ」と, 容器自体の評価の「高級感」「清潔感」「うきうき感」「やわらさ」「滑りやすさ」「使ってみたさ」を合わせた23項目について, 5段階評価尺度を用いた官能評価を実施した. その際, 視覚情報のみの評価と, 視覚情報と触覚情報を合わせた評価の2種類に分け, 参加者内計画で実験を行った.
視覚情報と触覚情報を合わせた評価は, 視覚情報のみの評価と, 視覚情報と触覚情報を与えた評価の差をみることで, 視覚情報のみでどの程度触覚を捕らえているかを把握するために行った.
視覚情報のみの評価の後に視覚情報と触覚情報を合わせた評価を行った. 各サンプルを机の上に置いた状態で, 視覚情報のみの評価の場合には容器をパネルに見せた状態で触感を想像してもらい, そこから容器の中身を想像して, どの程度感じたのかを評価してもらった. 視覚情報と触覚情報を合わせた評価では, 容器を見るだけでなく, 触ってもらい, 容器の中身を想像して, どの程度感じたかを評価してもらった.
3.3 結果と考察3.3.1 指圧測定結果による容器分類
親指と中指の役割を明らかにするために, 実験1で算出した指圧測定の結果(Table 4, 5)から, 親指と中指について, 指圧の大きい方から上位半分を大, それ以下を小として親指と中指にかかる指圧の大小で容器を4つに分類した(Table 6, 7). 化粧水容器サンプルは13種類で奇数のため, 上位6種類を大, それ以下を小とした.
3.3.2 主成分分析
各容器サンプルの特徴を明らかにするために, 視覚情報のみの評価結果に対し, 化粧水用容器サンプル・乳液用容器サンプルごとに主成分分析を行った. 本実験では, 化粧水の使用感に適している容器の触感, 乳液の使用感に適している容器の触感がどのような素材かを明らかにすることを目的としているため, 容器の中身についての項目17項目を使用して分析を行った.
化粧水用容器サンプルの視覚情報のみの評価結果を基に主成分分析を行った結果(Table 8), 固有値1以上で2つの主成分を抽出することができ, 主成分2までの累積寄与率は0.64となった.
次に, 乳液用容器サンプルの視覚情報のみの評価結果を基に主成分分析を行った結果(Table 9), 固有値1以上で3つの主成分を抽出することができ, 主成分3までの累積寄与率は0.66となった.
その結果, 主成分負荷量が0.4以上のものに着目し, 各主成分がどの評価項目の影響を受けているのかを把握するために, それぞれの主成分の解釈を行った. 第1主成分は化粧水, 乳液用容器サンプル共にすべての項目の主成分負荷量の値が高く, すべて正の値であることから, 「総合的な化粧品容器らしさ」と解釈できた. また, 第2主成分では, 化粧水, 乳液用容器サンプル共に乳液のコンセプト文から引用した弾力感と柔らかさが正の値で, 化粧水のコンセプト文から引用したさっぱり感が負の値であることから「乳液らしさからくるもっちり感」と解釈できた. 同様に, 乳液の第3主成分は, 「肌締め感」と解釈できた.
乳液用容器サンプルは3因子抽出できたが, 主成分2までの累積寄与率が0.601で主成分3までの累積寄与率が0.664と差が小さいため, 主成分3を省いて主成分2までの結果を使用することにした.
各主成分を解釈した後, 指圧測定結果から分類された容器サンプルごとの主成分1と主成分2の主成分得点の平均についてこれらの分類がわかるように, 図中のマーカーの形(◇:親大・中大, □:親大・中小, △:親小・中大, ○:親小・中小)を分けて布置した(Fig. 6, 7).
Fig. 6とFig. 7から, 化粧水・乳液共にガラス・樹脂・スリ及びサテンは, 他の容器に比べて主成分1の値が大きく, それ以外の容器では大きな違いが見られないことが分かった. サテンを除いたガラス・樹脂・スリは他のサンプルとは異なり, 汎用性が高く, 普段から化粧品容器として接する機会が多いことから, 化粧品容器らしさの評価には慣れが大きく関係しているといえた.
本研究では, 新たな化粧品容器の提案を目的としているため, 慣れの要因が大きいと考えられるガラス・樹脂・スリを除外することとして, 視覚的情報と指圧の関係性をみた.
視覚情報と指圧の関係性をみるために, 化粧水用容器及び乳液用容器において, ガラス・樹脂・スリを除外した指圧測定結果の分類ごとに主成分1と主成分2の最大値と最小値を求め, 最大値と最小値の差を算出した. そして, 主成分1と主成分2の差の比較を行った. (Table 10, 11). 化粧水用容器の親大・中大と乳液容器の親小・中小は分類されたサンプルが1つだったため, 差を算出することができなかった.
Table 10, 11に示すように, 親指と中指に同じように指圧がかかるものは主成分2よりも主成分1の差が大きく, 親指と中指のどちらかに指圧がかかるものは, 主成分1よりも主成分2の差が大きいといえた. このことから, 視覚的情報から化粧品らしさを感じている容器は, 親指と中指に同じように指圧がかかり, 中身のもっちり感を感じる容器は, 親指と中指のどちらかに指圧がかかる傾向があると考えられた.
主成分分析の結果から, 化粧水容器及び乳液容器に適した素材を考えると, 主成分1が「総合的な化粧品容器らしさ」と解釈できたことから, 主成分1の値が高いほど化粧品容器らしい素材であるといえる. そこで, Fig. 6とFig. 7中に印をつけた主成分1の値が高いサテンに注目した.
また, 主成分2が「乳液らしさからくるもっちり感」と解釈できたことから, 主成分2の値が高くなるほど, 乳液らしさが表現されているといえる. そこで, 乳液用容器サンプルを評価結果(Fig. 6, 7)から, 主成分2の高いガラス起毛・樹脂起毛と, 反対に主成分2の低いツヤ鏡に注目し, 視覚情報のみの評価と視覚情報と触覚情報を合わせた評価の平均点を算出し, 官能プロファイルを作成した(Fig. 8, 9, 10, 11, 12).
Fig. 8とFig. 9から, サテンは薬用感の項目が低いものの, 他の評価項目においては「感じている」と評価されていた. また, 化粧水容器と教示した場合には化粧水らしさが, 乳液容器と教示した場合には乳液らしさが評価されていた.
Fig. 10とFig. 11から, 起毛素材は潤い感, 弾力感, 柔らかさ, 肌触りの良さといった乳液に関する項目が評価されていることが分かった. しかし, 化粧水らしさ・乳液らしさといった化粧品容器らしさの項目は評価が低かった.
Fig. 12からツヤ鏡は, 視覚情報のみの評価の場合に, つるつる感や引き締め感といった化粧水のコンセプト文に関連する評価項目が評価されていたものの, それ以外の評価項目では感じないとされた. しかし, 視覚情報と触覚情報を合わせることにより, みずみずしさやさっぱりといった化粧水に関連する項目は評価されていたが, 柔らかさなど乳液に関する項目の評価は変わらないことが分かった. また, 起毛素材と同様に, 化粧水らしさ・乳液らしさといった化粧品容器らしさの項目は評価が低かった.
容器によって視覚情報のみの評価と, 視覚情報と触覚情報を合わせた評価にあまり差がみられないものと, 視覚情報と触覚情報を合わせることによって評価が上がるものがあった. 評価が上がった場合でも視覚情報のみの評価と異なる評価ではなく, 強調される結果となった. これは, 実験で使用した他の素材でも同じであった.

化粧水用容器のサンプルの分類

乳液用容器サンプルの分類

化粧水用容器の主成分負荷行列

乳液用容器の主成分負荷行列

化粧水用容器の主成分得点(分類ごとの最大・最小・差)

乳液用容器の主成分得点(分類ごとの最大・最小・差)

化粧水用容器の主成分得点の平均の布置

乳液用容器の主成分得点の平均の布置

サテン(化粧水用容器)の評価結果

サテン(乳液用容器)の評価結果

ガラス-起毛(乳液用容器)の評価結果

樹脂-起毛(乳液用容器)の評価結果

ツヤ鏡(化粧水用容器)の評価結果
視覚情報と指圧の関係をみると, 視覚的情報から化粧品らしさを感じている容器は, 親指と中指に同じように指圧がかかり, 中身を連想した時にもっちり感などを感じる容器は, 親指と中指のどちらかに指圧がかかる傾向があると考えられる. 指圧に偏りが生じるのは, 視覚情報から感じられる質感によって, 無意識に持ち方を調節しようとするためと考えられる. このことから, 親指と中指の指圧に注目することで, 化粧品容器らしさや中身の表現をより強調できる可能性が考えられた.
以上の結果から, 化粧品容器らしさを重視する場合には, 化粧水・乳液共に主成分1に関する得点が高く, 指圧が同じようにかかるサテンが適しているといえる. しかし, 主成分1は慣れが関係していると考えられるため, 新しい素材を提案する場合には重要な要素ではないと考えられる. 一方, 「乳液らしさからくるもっちり感」を表現している主成分2に注目して考えると, 特に起毛を用いたものの値が0.8前後と他のサンプルに比べて高く, 反対にツヤ鏡の値が-0.6と低かった. 評価の平均点を見ても起毛は乳液関連の項目が高く, ツヤ鏡は化粧水関連の項目が高かった. そして, 化粧品らしさについてはいずれも評点が低く, これまでにないデザインであると考えられた. このことから, 新しい素材を提案する場合は, サンプルの中では親指の指圧が小さく, 中指の指圧の大きいツヤ鏡が化粧水用容器に, 親指の指圧が大きく, 中指の指圧が小さい起毛のものが乳液用容器に適していると考えられる.
また, 視覚情報のみの評価と視覚情報と触覚情報を合わせた評価では, 容器によって評価にあまり差がみられないものと, 評価が上がるものがあった. これは, 普段接する機会のある素材の容器や, 起毛のように視覚情報からの触感が分かりやすいものは, 視覚情報から想像した触感と, 実際の触覚に違いが生じず, 評価に差が生じなかったと考えられる. これに対し, ツヤ鏡のように普段接することのない素材や視覚情報から正確な触感が分かりにくい容器は視覚情報から想像した触覚と, 実際の触覚では違いが生じ, 評価にも差が生じたと考えられる. 差が生じる容器の場合にも, 視覚情報のみの評価と視覚情報と触覚情報を合わせた評価で異なる評価ではなく, 強調される結果となっていることから, 実際の触感が視覚情報から想像した触感と異なるのではなく, 触ることでより触感を感じているといえる. このことから, パネルは視覚情報からある程度まで正確に触感を想像することができるといえる.
本研究ではこれまでの化粧品容器開発の“見る(審美的な追及)”と“使う(ユーザビリティ)”の視点に加え, スキンケア化粧品を使う際に容器を見てからそれを持つという動作に注目し, “見る”と“持つ”のプロセスを考えることで, 素材の触感による新たな化粧品容器のデザイン手法を提案することを目的とした.
素材の見た目の触感が容器を持つ際の力の入れ方に反映されると考えられる. 素材の視覚情報と指圧の対応関係を実験1により確かめた結果, 視覚から得られる情報が異なっていても, 容器を持つ際の指圧には違いが生じないことがあることが明らかになった.
この結果は, 容器のデザイン手法を考える上で利点となる. これまでの容器デザインにおける決まった視覚情報のデザインだけでなく, これまでにない自由なデザイン展開が可能となる. ただし, 親指と中指の力のかかり方には注目する必要がある.
そこで, 実験1で得られた指圧測定の結果をもとに, 親指と中指の役割を明らかにし, “見る”と“持つ”のプロセスを考えることによって, 化粧水に適している触感, 乳液に適している触感がどのような素材かを明らかにすることを目的として実験2を行った. その結果, 視覚的情報から化粧品らしさを感じている容器は, 親指と中指に同じように指圧がかかり, 中身のもっちり感を感じる容器は, 親指と中指のどちらかに指圧がかかる傾向があることがわかった.
以上のことから, 容器を持つ2指(親指と中指)に同じように力のかかる素材にすることで化粧品容器らしさを, どちらかに力の偏りが生じる素材にすることで中身のもっちり感を感じる容器のデザインが可能となる. また, 容器の視覚情報のみの評価結果に対し, 化粧水用容器サンプル・乳液用容器サンプルごとの主成分分析の結果から, 今回実験に使用したサンプルの中では, 化粧品容器らしさを重視する場合にはサテン, これまでの化粧品容器にはない新しいデザインとして, 化粧水容器らしい容器はツヤ鏡, 乳液容器らしい容器は起毛が適していることが明らかになった.
今後, “見る”と“持つ”のプロセスを研究することにより, 従来の表現方法として用いられてきた容器の形状だけでなく, 新たに, 触感の差によって容器の中身を表現するパッケージデザインができるであろう.