日本官能評価学会誌
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技術報告
若年者における口腔内粘膜・口唇・口唇周辺の温冷覚閾値測定の試み
阿部 雅子内田 幸子戸田 貞子
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2012 年 16 巻 1 号 p. 43-50

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1.緒言

食物の温度によっておいしさの感覚が変わることがある.暑い日の冷たい飲み物や寒い日の温かい食べ物など,食物をおいしく食べたり飲んだりするには適切な温度がある.食物の温度と嗜好性について山崎ら(2003),加藤と長沼(2001)によれば,温かいものは40~70℃で,冷たいものは-6~20℃付近で嗜好性が高くなると報告している.更に,温度と嗜好について,Engelenら(2002)は水,カスタードのデザート,マヨネーズを異なる温度で飲食させ,液体と半固体とでは最適な温度が異なり,嗜好に大きく影響することが示唆されている.堀尾(1999)はカマボコとトウフの温度と嗜好について調べ,トウフでは温度により嗜好に差があること報告している.また,Zellnerら(1988)はチキンスープ,ワイン,フルーツパンチなど種類の異なる液体飲料を用いて,その飲料が普段飲まれている温度を事前に情報として与えるとその情報を与えない場合と比較して,情報と同じ温度での評価が,よりおいしいと評定されると述べている.以上のように,おいしいと感じる温度は食品の形や種類により異なり,また,食品の摂取経験や食習慣,適切な温度に対する学習などが,おいしさの判定に大きく影響することが示唆される.

温度と味閾値の関係性についてMcBurneyら(1973)は甘味,塩味,酸味,苦味を17~42℃の温度で舌に流したときの閾値を測定し22℃~32℃の間で最も閾値が低くなることを示した.Moskowitzら(1973)は上記四味のすべてにおいて,溶液温度が35℃のとき味覚強度評定値が最大になるとしている.同様に成田ら(2006),秦ら(2007),鷲見(2009)は,味覚検査溶液の温度が味覚閾値に影響を及ぼすとしている.また,CruzとGreen(2000)は舌の温度を局部的に変化させると,味刺激を加えなくても甘味や酸味,塩味を感じることを報告している.

このように,温度と味の関連に関する報告は多数あるものの,口腔内の温度感覚について調べたものはわずかである(望月,2007).望月(2007)の研究では,24~45歳を対象に,一定強度の温冷刺激を1~2秒間与え,温冷刺激を感じたか否かを毎回回答してもらう段階法で温冷覚測定を行った.温覚は30℃から,冷覚は36℃から1℃ずつ上下させて,温覚や冷覚を感じている状態から測定しており,微細な温度変化については計測していない.更に,口腔付近の温度感覚は三叉神経によって支配されていることから,顔面の三叉神経枝領域の温冷感覚に関する報告は多く見られるが結果は一様ではない.また,Stevensら(1996)は18歳~88歳までの60名を対象に体表面の温度刺激に対する閾値を調べ,加齢により閾値が高くなることを報告している.口腔内の温度感受性も年齢や性別などにより変化する可能性が考えられるが,これについて検討した報告はなく不明確な点が多い.

これらのことから本研究では,食物をよりおいしく適温で食べるための基礎的知見を得るために,口部の温冷覚閾値の測定を試みた.具体的には,成人若年者を対象に口腔内粘膜・口唇及び口唇周辺の温冷覚感受性を迅速に測定するために,温かさや冷たさを感じにくい35℃を開始温度として,35℃との差を「閾値」として温冷覚感受性の測定を試みた.口腔内及び口腔周辺局所の温度を簡便に測定するために改良した温冷覚閾値計を用いて,その測定条件及を検討するとともに,温冷覚閾値の分布を調査することを目的とした.また女性の月経周期と基礎体温の変化に着目し,女性の月経周期が口部の温冷覚閾値に与える影響について検討した.その上で男女の性差及び口腔内粘膜・口唇及び口唇周辺における温冷覚閾値の部位差について検討した.

2.実験方法

(1)測定機器

測定には温冷覚閾値計(インタークロス社,東京・日本,intercross-200)を使用した.本装置は接触による温度刺激に対する人の局所的な温熱感受性である温覚・冷覚に関るデータをより簡便に集積するためのもので,基本原理は田村ら(2001)が開発した汎用型温冷覚閾値測定装置と同様である.すなわち本装置はプローブ,制御部,温冷覚自覚スイッチ,パソコンから構成されている.熱流センサーを内蔵したプローブを,ペルチェ素子を用いて調温し,プローブ接触部の局所皮膚温と同等レベルから上昇または下降したときの温覚・冷覚を温度差・熱流量によって評価しようとするものである.田村らはこれを用いて人体表面の局所温冷感覚を測定し,同時にプローブの熱伝導率や温度変化速度など,基本性能に関する検証実験を行い再現性を認めている.本研究では新たに口腔内測定用として開発された小型のプローブを測定に用いた.プローブ接触部はなめらかな銅製で接触面の面積を5×5mmの正方形とした.測定時はプローブ先端の接触面を測定部位に接触させ,コンピューター制御されたペルチェ素子からの熱を銅製の熱伝導板の下に配された温度センサーに伝え,加温,冷却の温調を行うものとした.田村らが用いた装置は,温度センサーの他に熱流センサーを内蔵し,プローブ接触部と局所皮膚温との熱流束値を0に制御してからプローブの温調を開始するものであるが,0に制御を行うには相当な時間を要する.本研究では口腔内を中心とした測定であり被験者への負担を軽減するため,より迅速な測定法として熱流センサーを用いない測定を試みた.開始時のプローブ温度を温覚や冷覚を感じにくい35℃に制御し,プローブ接触面を測定部位に接触させ,接触面の表面温度が安定したところでプローブを加温・冷却して温冷覚閾値を測定する.プローブ部の冷却は水冷式であり,温度管理,データ表示,パラメータ設定などはすべてコンピューター制御されている.また,田村らの研究においてプローブ温度の変化速度を0.1と0.3℃/secに設定して閾値への影響を検討し0.1℃/secの速度を採用している.本実験ではプローブを小型化したため,実験に先立ち,温度変化速度0.1と0.3℃/secにおける閾値を再度検討して決定することとした.なお,測定はすべて測定操作に熟練した同一測定者が行うものとした.

(2)被験者

歯科治療中でない健常な大学生34名(男性10名,女性24名:平均年齢21.3±0.7歳)を対象とし,気温23±2℃の室内において午前10時から12時までの間に実施した.実験時間は飲食による影響を避け食後2時間以降とした.また女性の場合,月経周期により基礎体温が変動するため,実験実施日を月経周期に関係なく(月経終了後7~10日を除く低温期~高温期)測定した健康な女子学生22名(以下女性A群とする)と月経終了後7~10日後(低温期)の健康な女子学生14名(以下女性B群とする)とで温冷覚閾値を比較した.被験者の姿勢は椅座位とした.また口腔内の洗浄を目的として,口腔内に過度な刺激を与えない33±2℃のミネラルウォーターで口腔内を3回すすいだ後測定した.なお,一週間以上の間隔で2回ずつ測定した.実験に先立ち,倫理的配慮として,被験者には事前に書面及び口頭で研究内容,手順,匿名性,秘守を説明し同意を得た.

(3)測定部位

測定部位は予備実験により決定した口唇・口唇周辺の4部位(上口唇外,上口唇,下口唇,下口唇外)と口腔内粘膜8部位(硬口蓋,軟口蓋,舌中央,舌尖,頬左,頬右,舌左,舌右)の計12部位とし,前述の部位順に測定した(Figure 1).

Figure 1

Diagram illustrating the measuring point. (key) LUL:lateral upper lip( 0.5cm upper part from upper lip), UL:upper lip( center of the upper lip), LL:lower lip (center of the lower lip), LLL:lateral lower lip (0.5cm lower part from lower lip), BCR:buccal cavity right( 3.0cm in oral cavity from the right angle of mouth), BCL:buccal cavity left (3.0cm in oral cavity from the left angle of mouth), HP:hard palate (2.0cm in oral cavity from upper first incisor tooth gingiva), SP:soft palate (2.0cm front from an uvula), LT:lingual tip (tip of the body of tongue), LBR:lingual border right (2.5cm right side from the tongue center), LM:lingual middle( 2.5cm in oral cavity from lingual tip), LBL:lingual border left (2.5cm left side from the tongue center).

(4)温冷覚刺激及び閾値の表示法

被験者のデータ入力,測定条件の設定を行った後,被験者には利き手にプローブ,他方に自覚スイッチを持つよう促した.鏡で測定部位を確認しながら測定部位に5×5mmのプローブ接触面全体があたるように設置する(Figure 2).その際,口唇及び口唇周辺の測定では口を軽く開いた状態で設置し,口腔内粘膜の測定では被験者にとって無理のない開口状態で設置することとした.測定開始時のプローブ温度は温かさも冷たさも感じにくい点として35℃とし,装置の安定表示を確認した時点で被験者に温覚または冷覚の測定開始を告げ,一定の変化速度で加温または冷却を開始した.なお,プローブ接触による刺激を繰り返し与えないように,プローブを当てたまま温度のみを変化させた.被験者が温度変化を感じた時点で1度目の自覚スイッチを押してもらい,この時の温度を「検知閾値」とした.続けて温度を上昇または下降させ,明らかに温覚・冷覚を感じた時点で2度目の自覚スイッチを1回押してもらった.この時の温度を「認知閾値」とした.閾値は測定開始時のプローブの接触面温度(35.00±0.30℃)と温覚または冷覚を自覚した時の温度差で表すものとした.

Figure 2

a, Overview of the thermostimulator (Intercross-200;Intercross Co., Tokyo Japan). b, The probe and a switch to reply. c, A subject places the probe on her measuring point while watching a mirror.

(5)統計学的解析

統計処理はエクセル統計(社会情報サービス)を用いて一元配置分散分析,多重比較(Fisherの最小有意差法)を行った.

3.結果及び考察

(1)プローブの温度変化速度の影響

プローブの温度変化速度が速すぎるとスイッチ押しの運動反射の影響で測定結果に差が生じることが指摘されている(田村ら,2001).そこで,温度変化速度0.1℃/sec及び0.3℃/secにおける上口唇外及び舌尖の温冷覚認知閾値及び検知閾値をFigure 3に示す.温覚冷覚それぞれの検知閾値及び認知閾値は0.1℃/secで温度を変化させた場合より0.3℃/secで温度変化させた場合の方が高い値を示した.これはプローブの温度変化が速いと温度変化を感じにくくなり,温度変化速度が緩やかな方がより敏感に温度変化を感じることを示している.この結果は田村ら(2001)の報告と相反する結果であるが,使用したプローブ接触面の大きさは25×25mmであり,本研究で開発した5×5mmと比較すると25倍の大きさである.温度感覚は刺激される皮膚の広さに影響される(本郷ら,2005)とされ,接触する表面積が大きいと温度変化速度が速くても鋭敏に感じることができるが,接触面積の小さなプローブの場合は温度変化を感じにくく,本研究では0.3℃/secにおける閾値が高くなったと考えられる.また,温度変化速度が速いとボタン押し応答の差が閾値に大きな差を生じることも予測でき,温度変化速度0.1℃/secとし,閾値測定を実施するものとした.

Figure 3

Effect of the change speed of the temperature. (*:P < 0.05)

(2)月経周期における温冷覚閾値の変動

女性A群と女性B群の口腔内粘膜・口唇・口唇周辺の温冷覚閾値を比較した.検知閾値及び認知閾値結果をFigure 4に示す.

検知閾値を比較すると,温覚における女性A群の値は1.74~3.71℃,女性B群の値は1.62~3.40℃の範囲に分布していた.部位別に比較すると上口唇外,上口唇,下口唇,下口唇外の口唇部と頬左,舌中央,舌右においては女性A群の閾値が高い傾向にあった.一方,頬右,硬口蓋,軟口蓋,舌尖,舌左では女性B群の閾値が高い値であったが,全ての部位において有意な差は認められなかった.冷覚における女性A群の値は-1.48~-3.13℃,女性B群の値は-1.37~-3.21℃の範囲に分布していた.部位別に比較すると軟口蓋と舌右では女性B群の閾値が高く,前者を除いた10部位では女性A群の閾値が高い値を示した.そのうち,上口唇外の閾値は女性A群-1.82℃,女性B群-1.45℃の閾値であり,有意な差が確認された.

認知閾値を比較すると,温覚における女性A群の値は3.09~6.27℃,女性B群の値は2.65~6.26℃の範囲に分布していた.どちらも上口唇外,上口唇,下口唇,下口唇外の口唇部と舌尖の閾値は低い値を示した.一方右頬,左頬の頬部や硬口蓋,軟口蓋,舌右では比較的閾値が高く,ばらつきも大きかった.舌左と舌中央は中間的な値を示し,部位間の閾値温度は同じ傾向であり,有意な差は認められなかった.冷覚における女性A群の値は-2.48~-5.65℃,女性B群の値は-2.17~-5.19℃の範囲に分布していた.すべての部位で女性B群よりも女性A群の閾値のほうが高い値であったが有意な差は認められなかった.

女性の基礎体温は月経周期との関連が深く,月経開始から排卵までの卵胞期は低温期にあたり,約2週間持続する.低温期の終わりにわずかに体温が下がるときが排卵日,そして排卵後の黄体期が高温期にあたり約2週間持続する.高温期を形成するのは,排卵後に黄体から分泌されるプロゲステロンが視床下部の体温中枢に作用して,体温を0.3~0.5℃上昇させるためといわれている(折坂ら,2007).喜多村,小原(2009)は体温が上昇する高温期の代謝亢進に伴う消費エネルギーの増加に着目し,エネルギー栄養素の信号である甘味と酸味に対して高温期における味覚変動を推測し,月経周期における味覚感度について調べているが,味覚感度に差はないとしている.本実験においても,体温が上昇する高温期では,温度閾値に差が生じることを予測したが,有意な差が認められた部位は冷覚検知閾値の上口唇外のみであった.検知閾値および認知閾値の平均値を比較しても有意な差はなく,女性の口腔内温度閾値は月経周期による有意差は認められなかった.

Figure 4

(a), Mean detection threshold comparison of females A and females B.(b), Mean recognition threshold comparison of females A and females B.(*:P < 0.05)

(3)男女の温冷覚閾値

(1)の結果から,女性は「女性B群」の値を採用し,女性と男性の温・冷覚検知閾値及び認知閾値の結果を示した(Figure 5).

男性の温覚検知閾値は1.83~3.86℃の範囲に分布しており,女性よりもやや高い傾向であった.部位別にみると,頬右,軟口蓋,舌右では女性の閾値が高く,特に軟口蓋においては男性と女性の間で1.14℃の差が確認された.しかし分散も大きく有意な差は認められなかった.一方,上口唇外,上口唇,下口唇,下口唇外,頬左,硬口蓋,舌尖,舌左,舌中央の9部位においては男性の閾値が高く,下口唇内では有意な差が認められた.男性の冷覚検知閾値は-1.56~-3.90℃の範囲に分布しており,温覚同様,女性に比べやや高い傾向にあった.部位別に見ると,硬口蓋,軟口蓋,舌左,舌中央において,男女の閾値に大きな差が見られ,男性の閾値が高い傾向にあることが示された.温度差で示すと硬口蓋で1.44℃,軟口蓋で0.62℃,舌左で0.66℃,舌中央で0.76℃であったが,男女とも分散が大きく,有意な差は認められなかった.

認知閾値を比較すると,男性の温覚における値は3.13~5.76℃の範囲に分布しており,女性よりも狭い分布幅であった.部位別に比較すると軟口蓋では女性の閾値が高いが,それ以外の11の部位で男性の閾値が高く,感受性が低い傾向が示された.特に下口唇では有意な差が認められた.冷覚における値は-2.36~-7.54℃の範囲に分布していた.冷覚では全ての部位において男性の閾値が高く,温覚認知閾値と同様の傾向であった.

部位別にみると,硬口蓋で有意な差が確認された.神崎ら(2003)は顔面知覚において女性の方が鋭敏であると報告しているが,本研究での男性と女性における温・冷覚閾値測定結果の比較によっても,いくつかの部位で有意な差が示されたが,男性・女性各々の平均値で比較すると,全体として有意な差は認められなかった.しかし,男性は女性に比べて個人差が大きい傾向にあることが示された.

Figure 5

(a), Mean detection threshold comparison of females B and males.(b), Mean recognition threshold comparison of females B and males.(*:P < 0.05)

(4)温冷覚閾値の部位差

男性,女性の温冷覚閾値では有意な差が示されなかったことから,女性B群の各部位における温冷覚閾値を閾値が高い部位を基準に部位間の比較結果をTable 1に示した.上口唇外,上口唇,下口唇,下口唇外を口唇部とし,軟口蓋,硬口蓋を口蓋部として比較すると検知閾値では1.62~1.88℃と比較的低い値であり,口蓋部は4.08~4.78℃であり高い傾向を示した.また口唇部,舌尖と口蓋部,頬右,舌右との間で有意な差が認められた.認知閾値では口唇部,舌尖で2.65~2.80℃と低い値であり,口蓋部で5.35~6.26℃と高い値を示した.また口唇部,舌尖と口蓋部,頬,舌左で有意な差が認められ,検知閾値と同様の結果が示された.以上の結果から温・冷覚閾値ともに口唇部と舌尖の閾値は低く,敏感であることが示された.また口腔内においては,硬口蓋,軟口蓋の口蓋部での閾値が高く,鈍感であることが示唆された.Stevensら(1998),内田ら(2007)の研究によると顔では口唇周辺で温度感受性が高いことを報告している.また舌の感覚点については舌尖部においてその密度が最大であるとされている(坂田ら,1988).本調査でも口唇部での閾値が最も低く鋭敏であり,舌における閾値では舌尖部が最も鋭敏であることが示され,口腔前方での閾値が低く,食物摂取する際に最初に触れる口腔入口付近が最も鋭敏であることが示された.

また各部位での温覚と冷覚について比較すると,検知閾値では上口唇,下口唇外,下口唇,頬右,軟口蓋,硬口蓋において冷覚の閾値が有意に低く,温覚よりも冷覚に敏感であることが示唆された.Kabasawaら(2007)は本研究と同じ機器を用いて男女12名の顎周辺の温度感覚を測定し,冷覚の方が鋭敏な結果を示している.Rentonら(2003),Rolkeら(2006)も温覚よりも冷覚の感受性が高いことを報告している.本研究においても温覚よりも冷覚の閾値が低い傾向にあったが,測定開始温度が体温よりもやや低いことが影響していることも考えられ,本結果のみからでは断定できるものでない.今後は測定条件を改善したうえでの測定が必要と考えられる.

Table 1

Warm/cold threshold comparison between measuring points of the females B.

4.結論

若年者の口腔内粘膜・口唇・口唇周辺の温冷覚閾値を測定し女性の性周期,性別による閾値の差,部位間の比較を行った結果,以下の知見が得られた.

(1)測定に用いたプローブの温度変化速度について検討するため,0.1℃/sec及び0.3℃/secにおける温冷覚閾値を測定した結果,温度変化速度が速いと温度変化を感じにくくなった.

(2)女性の温冷覚閾値は月経周期による基礎体温変化に大きな影響を受けなかった.

(3)若年者の温冷覚閾値では男女による有意な差は認められなかった.

(4)口唇部及び口腔内を温冷覚閾値測定により分類すると,感受性の高い群(口唇部及び舌尖端),低い群(口蓋部),中間群(舌中央,舌左右,頬左右)の3つに分類された.

以上は男女34名の被験者により得られた結果であるが,今後さらに被験者数を増やすことによってより詳細な検討を行いたい.また,今回の測定は測定開始温度を35℃に固定した場合であったが,測定開始温度を制御できるように装置を改良することによって,被験者の体温や口腔内温度も同時に捕らえるなど,さまざまな条件でより精密な測定を行っていきたい.

引用文献
 
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