日本官能評価学会誌
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ノート
豚肉のテクスチャーを適確にとらえる破断解析法の検討
山本 明友美片山 碧露木 理紗子飯田 文子
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2016 年 20 巻 1 号 p. 30-37

詳細

1. 緒言

食肉は,優れた食味性に加え,良質なタンパク質やビタミン,ミネラルの供給源であり,人間の体を構成する成分を含む重要な食品素材である(香川,2012).わが国における食肉消費量は,豚肉がその第一位を占めており,牛肉や鶏肉の消費量よりも多い(鹿熊,2014農林水産省,2009).豚肉は,食品中で最も多くビタミンB1を含み(香川,2012),栄養価が高く,比較的安価であることから,家庭消費および加工食品に多く使用されている(農林水産省,2014).豚肉の需要拡大に伴い,1980年代では,赤肉割合や飼料効率など経済性を目標とした改良が行われたが,テクスチャー,風味,脂肪交雑といった食味性の低下をもたらした(鈴木,2010).1990年代以降は,消費者の嗜好に合わせた豚肉の肉質改良が進んでおり,品種改良や給与飼料を工夫することで,食味性を改良し,品質を向上させることが可能となった(鈴木,2010).現在,銘柄豚の数は300種類を超えており,バークシャー種,デュロック種および北京黒豚を交配し改良を行ったトウキョウX(東京都)や,デュロック種を純粋種で系統造成し改良を行ったしもふりレッド(宮城県)を代表とする高品質な豚肉が多く開発されるようになった(鈴木,2010).

一方,食肉のおいしさにはテクスチャーが強い影響を与えるとされており(Etaio et al., 2013),豚肉のおいしさにもテクスチャーが重要であると報告されている(條々ら,1993鈴木,2010).また,やわらかいものほど,味や香りの感覚強度は高くなるため,テクスチャーはフレーバーにも影響を与える(大越と品川,2011神山,2003).しかし,口腔内における咀嚼動作は非常に複雑であり,機器測定には咀嚼時に生じる唾液を伴っていない(高橋ら,2003),食品の圧縮速度や破壊に至る圧縮率および圧縮回数が実際の咀嚼時と異なる(高橋ら,2003)などの理由から,機器測定と口腔感覚とは必ずしも一致せず,大小が適合しない場合も報告されている(神山,1999a神山,1999b神山,2000高崎ら,2005).

そこで本研究では,遺伝系統および給与飼料の異なる豚肉を試料とし,先行研究(田口と飯田,2014宮崎ら,2012)による官能評価と適合度の高い破断測定法を用い,官能評価値と比較検討を行うことで,豚肉の官能評価に対応する破断解析法の一助となることを目的とした.

2. 実験方法

2-1.試料および調製方法

本実験では,遺伝系統および給与飼料の異なる豚36頭の背最長筋部を使用し,粗脂肪含量(生)は3.75±1.75%であった(JA全農飼料畜産中央研究所測定結果).試料は,−50°Cの冷凍庫内で保存し,実験前日,2°Cの冷蔵庫内で24時間解凍した.解凍後,肉塊の幅,高さは筋肉部分の大きさによるため,厚さのみを11 cmに調製した(幅14.6±1.5 cm,高さ6.7±0.7 cm,重量954±105.7 g).調製後,ドリップが混ざらないようアルミホイル容器内に入れ,天板に並べた.170°Cに予熱したオーブン(コンビネーションレンジGMO-S1300型W43×H30×D37 cm,テガ三洋工業株式会社,鳥取,日本)の中段に入れて焼成した.肉塊を均一に焼成するため,焼成開始から30分経過時に天板の向きを反対にし,60分経過以降に内部中心温度の測定を行った.肉塊の大きさに合わせて成形したクッキングシートの中心に穴を開け,中心の高さの目印をテープでつけた食品温度計(防水温度計,株式会社エー・アンド・デイ,東京,日本)の針を刺し,内部中心温度を測定した.焼成終了は内部中心温度が70°Cに到達した時点とした(68~105分).焼成後の肉塊を室温まで冷まし,0.8 cm厚さにスライス(電動スライサーE26,ritter社,ドイツ)した後,筋肉部分を二等分したものを官能評価用の試料とし,3×4 cmに成形したものを破断測定用の試料とした.

2-2.測定方法

1) 官能評価

単極8段階尺度法を使用し,分析型評価を行った.評価開始時および試料間は,口中を湯(40°C)で2回すすぐよう指示をした.試料は,順序効果を考慮し,ラテン方格によるランダムな順序で同時に3点提供した.パネリストは,訓練された日本女子大学調理学研究室5~14名とし,訓練方法は,五味識別訓練(古川,1994)および市販肉(銘柄豚)を用いた尺度合わせを行った.評価項目は,テクスチャーに関する項目を中心とした7項目,やわらかさ(前:ひと噛目の印象),やわらかさ(後:咀嚼中の印象)(1:かたい⇔8:やわらかい),線維感(1:ある⇔8:ない),線維細かさ(1:粗い⇔8:細かい),多汁性(1:ない⇔8:ある),総合的食感(1:悪い⇔8:良い),総合評価(1:悪い⇔8:良い)とした.

2) 破断測定

高分解型レオナー(model-RE2-33005B,株式会社山電,東京,日本)を使用し,先行研究(田口と飯田,2014宮崎ら,2012)による測定法を用いて破断測定を行った.圧縮速度は1.0 mm/sec,プランジャーはくさび型W13×30°(圧縮面積30 mm2),ロードセルは200 Nとして,筋線維方向に対し垂直に貫入するよう測定を行った.得られた応力–ひずみ曲線の解析より,破断応力,破断ひずみ,破断エネルギーを算出し,破断応力–ひずみの傾きより,初期弾性率を算出した.1試料につき9回測定を行った.

3) 調理損失測定

調理前後の肉塊重量を測定し,以下の公式で算出した.肉塊の状態で焼成したため,1試料につき1回のみの測定を行った.   

4) 水分含量(生)測定

生肉1 cm3を3時間105°Cで乾熱し,乾燥前後の肉重量を測定し,以下の公式で算出した.1試料につき3回測定を行った.   

5) 水分含量(焼)測定

調理後肉をミンチ状にし,約2 gを3時間105°Cで乾熱し,乾燥前後の肉重量を測定し,以下の公式で算出した.1試料につき4回測定を行った.   

6) 粗脂肪含量(焼)測定

5)の乾燥試料を円筒ろ紙に採取し,ソックスレー抽出管を用いてジエチルエーテルで16時間以上還流抽出し,溶剤を留去した重量を測定した(AOAC International, 1990).1試料につき4回測定を行った.

2-3.統計解析

統計解析ソフトJUSE StatWorks/V4.0を使用し,基本解析,多変量連関図により,官能評価値,破断特性値,理化学測定値の相関分析を行い,ピアソンの相関係数を算出した.また,IBM SPSS Statistics 22を使用し,一元配置分散分析により,官能評価値「やわらかさ(前)」「やわらかさ(後)」「総合的食感」および破断応力値の有意差検定を行った.

3. 結果および考察

3-1.官能評価値および各測定値における関連性の検討

1) 各試料における破断特性値および理化学測定値

豚肉の破断特性値と理化学測定値の関連性を考察するため,本研究で使用した豚肉36試料の破断特性値および理化学測定値をTable 1に示した.なお,十分な量を入手できなかった試料の測定値は空欄とした.豚肉の水分含量は調理により減少し,粗脂肪含量は増加した.この結果より,豚肉は生肉の粗脂肪含量が少ないため脂肪流出が少なく,調理損失の多くは水分流出である可能性が示唆された.

Table 1 Rupture and chemical properties of thirty six kinds of pork (mean±S.D.)
SampleRupture stress [×105 N/m2]Rupture strain [%]Rupture energy [×105 J/m3]Initial modulus [×105 N/m2]Cooking loss [%]Moisture (law) [%]Moisture (cooked) [%]Crude fat (law) [%]Crude fat (cooked) [%]
115.13±1.5086.67±2.223.82±0.5417.45±1.6017.4959.66±4.883.69
217.02±3.1085.13±3.654.48±1.0619.96±3.4217.1459.09±4.091.46
323.90±5.7590.76±3.555.95±1.9226.18±5.4115.8863.91±5.726.67
415.83±2.8982.63±6.905.87±1.3719.16±3.1527.0172.04±1.511.67
518.79±2.3571.07±9.016.50±1.2226.88±5.0525.4667.50±3.282.14
614.02±2.4977.95±4.384.72±0.9218.10±3.6825.1564.42±3.572.55
719.39±2.6676.66±6.186.20±0.5725.55±4.8126.1464.61±2.253.31
820.15±2.6376.91±5.026.86±1.5026.32±4.1828.5962.68±4.432.50
919.86±3.4981.79±5.897.39±1.4524.39±4.5529.5260.73±0.722.37
1011.54±0.9381.71±6.454.81±0.6114.17±1.2928.6062.90±1.4455.54±0.526.5014.91±0.52
118.11±0.5167.47±11.022.99±0.8112.23±1.6928.4864.31±3.6456.34±0.366.5814.68±0.69
128.17±1.6770.77±10.463.08±0.9511.48±0.9730.2158.03±0.6855.90±1.037.7614.88±1.08
1316.06±6.3776.74±3.185.83±2.0420.97±8.3125.9161.72±3.6552.44±3.775.3218.35±3.56
1411.31±4.1473.80±9.934.28±1.5815.30±5.3027.5063.66±2.3857.79±2.804.9113.80±3.37
1518.10±3.4184.11±7.596.90±1.5321.55±3.7727.4864.02±0.692.66
1623.75±7.7480.17±3.877.44±2.5929.30±8.4531.0861.26±2.542.79
1720.83±2.0781.48±4.896.89±0.6825.67±3.1426.4553.89±5.852.55
1822.07±4.2187.43±4.007.39±1.8225.18±4.1629.6871.14±10.652.12
1911.95±2.8175.88±3.314.30±0.7215.72±3.3729.7248.74±6.478.50
2014.46±0.6274.35±8.334.68±0.6919.69±2.5327.4656.24±5.782.68
2117.33±2.2786.13±3.765.77±0.9820.17±2.8928.3262.84±3.652.44
2215.19±3.2884.66±3.995.12±0.7717.86±3.2126.3163.32±1.484.25
2317.98±1.9678.23±3.736.34±1.1123.06±3.1127.9560.78±2.133.26
2412.61±1.7579.88±3.034.34±0.8915.80±2.2725.8446.48±5.416.52
2516.90±2.4688.58±2.324.90±0.9319.09±2.8238.3368.05±0.9360.60±1.227.90±1.11
2613.32±1.1575.77±3.524.56±0.5517.57±1.1526.6366.01±1.2559.81±0.464.109.39±0.66
2715.10±1.6082.27±4.455.54±0.7318.35±1.5325.2065.23±1.4164.29±1.134.246.32±0.70
2814.69±1.2382.27±5.824.92±0.4417.89±1.5027.8565.95±1.8859.36±0.793.038.63±0.89
2919.61±2.4379.99±8.547.44±1.6124.54±1.9430.3666.82±3.5162.26±1.032.996.25±0.64
3018.04±4.1379.23±5.305.97±1.4522.62±4.0427.9867.11±0.4260.67±0.332.557.11±0.33
3112.23±1.2973.12±5.394.29±0.6816.75±1.5628.6065.87±1.5361.19±0.353.108.96±0.50
3215.68±4.6877.11±6.536.07±2.2720.28±5.8027.5466.61±0.5862.57±0.732.395.44±0.46
3310.17±2.3071.94±5.303.76±0.8714.17±3.2623.9267.91±1.2161.50±1.122.537.71±1.41
3415.72±2.0882.27±5.495.64±0.7419.12±2.4329.3165.59±1.0959.24±1.063.6610.05±0.46
3513.81±4.1172.22±7.285.09±1.9319.03±4.9934.1065.26±2.0060.75±0.684.738.04±0.29
3613.74±2.0175.65±7.165.09±1.1518.17±2.1931.3468.04±0.3263.21±0.483.217.33±0.28
Mean15.90±3.9079.24±5.535.42±1.2219.99±4.3627.35±4.1763.12±5.3759.61±3.123.75±1.759.08±4.24

2) 理化学測定値と破断特性値の関連性

豚肉36試料の理化学測定値と破断特性値の相関係数を算出し,Table 2に示した.水分含量は破断応力,破断エネルギー,初期弾性率と正の相関を示し,粗脂肪含量はすべての破断特性値と高い負の相関を示した.これらの結果は,保水性が高い豚肉は破断応力が高かったとする報告(石井ら,2007村上と大和,2001)や,牛肉の粗脂肪含量と剪断力価の間に有意な高い負の相関があるとする報告(Ueda et al., 2007; Mitsumoto et al., 1992)とも一致している.豚肉は水分約70%,タンパク質約22%,脂肪約5%を含んでおり(香川,2012),水分や脂肪はタンパク質である筋線維間に保持されている(沖谷ら,1992).豚肉を加熱すると,筋線維は不可逆的に凝固し,水分は流出しかたくなるが,脂肪は融解してやわらかくなり,食肉に滑らかな口触りを与える(沖谷ら,1992).また,脂肪は筋線維がつくる構造体よりやわらかく,脂肪含量が多いほどやわらかいとされており(沖谷ら,1992),相対的に水分含量は少ないほどやわらかくなる.以上より,水分含量が多いとかたく,粗脂肪含量が多いとやわらかいことが示された.

Table 2 Pearson correlation coefficient of chemical and rupture properties
Cooking lossMoisture (law)Moisture (cooked)Crude fat (law)Crude fat (cooked)
Rupture stress−0.0570.115*0.282**−0.514**−0.401**
Rupture strain−0.1050.0520.141−0.219**−0.319**
Rupture energy0.0850.151**0.235**−0.450**−0.208**
Initial modulus−0.0260.1080.268**−0.497**−0.351**
n3636173220

*: p<0.05, **: p<0.01

3) 各試料における官能評価値および破断特性値

上記の豚肉36試料のうち,官能評価を行った豚肉14試料の官能評価値をTable 3に示した.官能評価値は3.8~6.4に存在し,8段階尺度上3割程度の範囲内で評価された.また,「総合評価」は4.1~6.1の範囲内で評価され,「やわらかさ」の評価値に大きく影響されていることが考察された.一方,破断特性値は比較的差が大きいことより,豚肉のテクスチャーは差を評価することが難しい,もしくは必ずしも破断特性値を反映しないことが示唆された.

Table 3 Sensory values of fourteen kinds of pork (mean±SE)
SampleTenderness (first bite)Tenderness (chewing)Fibrous feelingFibrous coarsenessJuicinessTotal textureOverall judgment
16.1±0.26.2±0.25.9±0.26.0±0.25.4±0.35.8±0.35.7±0.2
25.1±0.35.1±0.25.0±0.35.5±0.24.6±0.35.7±0.25.7±0.2
35.6±0.35.6±0.25.6±0.25.6±0.35.5±0.35.7±0.26.1±0.2
46.0±0.35.9±0.36.1±0.25.6±0.16.1±0.26.0±0.36.4±0.2
55.1±0.35.1±0.55.6±0.45.4±0.55.5±0.45.2±0.55.5±0.5
65.4±0.25.5±0.25.8±0.54.9±0.64.7±0.34.9±0.46.1±0.2
74.8±0.44.4±0.44.4±0.44.3±0.53.8±0.34.3±0.25.5±0.5
85.2±0.45.4±0.45.6±0.55.5±0.65.5±0.45.7±0.36.1±0.3
95.2±0.46.1±0.25.7±0.46.1±0.25.3±0.35.3±0.36.1±0.3
104.8±0.24.9±0.24.6±0.44.3±0.33.8±0.24.6±0.35.0±0.2
114.9±0.34.8±0.24.1±0.64.5±0.44.0±0.34.3±0.34.4±0.4
125.9±0.25.8±0.25.2±0.35.3±0.34.8±0.45.5±0.25.4±0.2
134.9±0.24.6±0.33.8±0.33.9±0.34.4±0.34.3±0.24.1±0.2
145.3±0.35.1±0.44.9±0.54.9±0.54.8±0.65.0±0.45.1±0.4
Mean5.4±0.15.4±0.15.2±0.15.2±0.14.9±0.15.2±0.15.5±0.1

4) 官能評価値と破断特性値の関連性

豚肉14試料の官能評価値と破断特性値の相関係数を算出し,Table 4に示した.「線維感」「線維細かさ」「多汁性」「総合評価」は破断応力,初期弾性率と正の相関を示したが,「やわらかさ(前)」「やわらかさ(後)」「総合的食感」は相関を示さなかった.破断時に検出される応力と口腔感覚とは必ずしも一致せず,大小が適合しない場合も報告されており(神山,1999a, 1999b, 2000),破断点だけでなく,多様な角度から応力–ひずみ曲線の解析を行う必要性が示唆された.

Table 4 Pearson correlation coefficient of sensory values and rupture properties
Tenderness (first bite)Tenderness (chewing)Fibrous feelingFiber coarsenessJuicinessOverall textureOverall judgment
Rupture stress0.0120.0760.221*0.280**0.299**0.1920.371**
Rupture strain0.0920.0570.1600.1210.1730.1700.330**
Rupture energy−0.186−0.0700.0390.0610.156−0.0100.259*
Initial modulus−0.0260.0640.209*0.266**0.281**0.1570.303**

n=14, *: p<0.05, **: p<0.01

5) 官能評価値と理化学測定値の関連性

豚肉14試料の官能評価値と理化学測定値の相関係数を算出し,Table 5に示した.官能評価値は調理損失,粗脂肪含量と負の相関を示し,水分含量と正の相関を示した.調理損失の結果は,前述した破断特性値と理化学測定値の検討結果や,調理損失が多いと評価が低い傾向(高橋ら,2008)あるいは低かった(佐久間ら,2012)とする報告とも一致しており,調理損失が多いと評価が低いことが示された.一方,水分含量,粗脂肪含量の結果は,前述した結果と一致せず,また,食肉の粗脂肪含量は多いほどやわらかいとされており(沖谷ら,1992),粗脂肪含量が多いと評価が高かったとする報告も挙げられている(佐野ら,2004高橋ら,2008).しかし,豚肉は生肉の粗脂肪含量が少なく,調理損失の多くは水分流出である可能性が示唆され,粗脂肪含量よりも水分含量がやわらかさに影響を与える可能性が考えられた.

Table 5 Pearson correlation coefficient of sensory values and chemical properties
Tenderness (first bite)Tenderness (chewing)Fibrous feelingFiber coarsenessJuicinessOverall textureOverall judgment
Cooking loss−0.148−0.157−0.181*−0.261**−0.174−0.297**−0.233*
Moisture (law)−0.007−0.0690.126−0.0450.208*−0.0200.133
Moisture (cooked)0.1580.1960.2830.344*0.0880.2510.329*
Crude fat (law)−0.081−0.151−0.397**−0.287*−0.436**−0.258*−0.455**
Crude fat (cooked)−0.201−0.324**−0.395**−0.498**−0.290**−0.501**−0.515**

n=14, *: p<0.05, **: p<0.01

3-2.応力–ひずみ曲線の形状の検討

破断特性値は「やわらかさ(前)」「やわらかさ(後)」「総合的食感」と相関を示さなかったため,応力–ひずみ曲線を検討した結果,応力–ひずみが一定に増加する直線的な形状(Linear shape)と,噛み始めの応力は低いが破断点に近づくにつれて高くなる曲線的な形状(Curved shape)が観察された(Figure 1).そこで,破断点に対する噛み始めの圧縮30%応力比を算出し(曲線数115),その値が0.35以上を直線的な形状(曲線数36),0.25未満を曲線的な形状(曲線数39),その他をどちらにも属さない形状(曲線数40)と定義した.曲線の形状ごとに破断特性値と「やわらかさ(前)」「やわらかさ(後)」「総合的食感」の比較検討を行った結果(Figure 2),直線的な形状の応力–ひずみ曲線は,破断特性値ではやわらかいと示されたが,官能評価ではかたいと評価され,一方,曲線的な形状の応力–ひずみ曲線は,破断特性値ではかたいと示されたが,官能評価ではやわらかいと評価された.以上より,破断点だけでなく,噛み始めの測定値を検討する必要性が示唆された.

Figure 1 Shape of stress–strain curves

○ rupture point

Figure 2 Sensory values and rupture stress of linear and curved shapes bars indicate standard errors

Different letters: p<0.01

Linear shape: stress at 30% strain/rupture stress≧0.35

Curved shape: stress at 30% strain/rupture stress<0.25

3-3.官能評価に対応する圧縮率の検討

官能評価値と異なる圧縮率における破断特性値の相関係数をTable 6に示した.「やわらかさ(前)」はどの圧縮率とも相関を示し,圧縮20%(r=−0.283~−0.293, p<0.01),30%(r=−0.288~−0.291, p<0.01)と最も高い相関を示した.また,「総合的食感」は圧縮率20~50%と相関を示し,圧縮20%(r=−0.178~−0.194, p<0.10),30%(r=−0.184~−0.188, p<0.05)と最も高い相関を示した.一方,「やわらかさ(後)」はどの圧縮率とも相関を示さなかった.以上より,「やわらかさ(前)」「総合的食感」と最も相関が高い圧縮率は20~30%であり,圧縮が進むにつれて相関が低くなった.この結果は,圧縮5~40%の応力はかたさ,ひと噛目のエネルギーなどと有意に相関が高いとする報告(神山と早川,2007)や,圧縮率が大きくなるほどかたさに差は認められなくなったとする報告(塩澤ら,1997)とも一致している.

Table 6 Pearson correlation coefficient of sensory values and stress, energy and initial modulus at 10–60% strain
Tenderness (first bite)Tenderness (chewing)Overall texture
At 10% strain
Stress−0.256**−0.045−0.135
Energy−0.244**−0.033−0.114
Initial modulus−0.257**−0.046−0.142
At 20% strain
Stress−0.293**−0.101−0.194*
Energy−0.283**−0.076−0.178(*)
Initial modulus−0.288**−0.097−0.188*
At 30% strain
Stress−0.291**−0.133−0.188*
Energy−0.291**−0.099−0.188*
Initial modulus−0.288**−0.109−0.184*
At 40% strain
Stress−0.268**−0.096−0.160(*)
Energy−0.281**−0.091−0.178(*)
Initial modulus−0.270**−0.100−0.161(*)
At 50% strain
Stress−0.244**−0.087−0.129
Energy−0.280**−0.101−0.171(*)
Initial modulus−0.242**−0.084−0.127
At 60% strain
Stress−0.199*−0.057−0.068
Energy−0.260**−0.090−0.147
Initial modulus−0.200*−0.056−0.068

n=14, (*): p<0.10, *: p<0.05, **: p<0.01

以上より,本実験に使用した豚肉試料では,「やわらかさ(前)」「総合的食感」と最も相関が高い破断測定の圧縮率は20~30%であり,やわらかさは噛み始めに評価していることが示唆された.そこで,豚肉のテクスチャーを適確にとらえるためには,圧縮率の検討が重要であることが示された.

今後は,サンプル数を増やし,圧縮率の検討を進めると同時に,より口腔感覚に近いテクスチャー測定を行うことを目的とし,多様な角度からさらなる測定法および解析法の検討を行う必要がある.

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試料提供にご協力いただいたJA全農飼料畜産中央研究所 野口剛様に感謝申し上げます.

References
 
© 2016 日本官能評価学会
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