日本官能評価学会誌
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研究報文
肉種別ハンバーグ様試料の嗜好性におよぼす挽き肉粒度の影響
今井 悦子早川 文代松本 美鈴畑江 敬子島田 淳子
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2002 年 6 巻 2 号 p. 108-115

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1. 緒言

ハンバーグはわが国においてもっとも大衆的な食べ物の一つであり, 特に青少年には大変好まれている. 食品産業的にも急成長した食品の一つで, 冷凍食品, レトルト食品などとして市販されているハンバーグも多い.

ハンバーグのおいしさを決定する要素は, 味, 香り, そしてテクスチャーも重要であることが指摘されている. 遠藤等(1976)はテクスチャーを表現する評定言語として6つを選出したが, その中に「つぶつぶ」という言語があった. 井筒等(1980)はそれを「肉粒感」と表現し, 官能評価により肉粒感はテクスチャーの良否ともっとも相関が高かかったと報告した. またJones等(1985)は冷凍ハンバーグのテクスチャーとして官能的に総合評価が高かったものは, 弾力があり, 結着性があり, 肉粒が粗くかつ歯応えがあるものであったと報告している. また, 和仁等(1982)や和仁(1987)もハンバーグのテクスチャーにおいて肉粒に関する因子(肉粒の大きさ, 分布)が重要であることを報告している.

このように肉粒はハンバーグのおいしさに大きな影響をもつにもかかわらず, 肉粒の大きさの影響を検討した研究は, 著者等(Imai et al., 1994)が行った前報の研究しかない.

本研究では, 前報の続報として, 肉種および粒度が異なるハンバーグ様試料の嗜好性におよぼす挽き肉粒度の影響を検討したので報告する.

2. 試料および実験方法

2. 1 試料

前報(Imai et al., 1994)と同様の材料を用い, 同様の方法で調製したものを試料とした. 以下, 簡単に材料, 試料の調製方法および本研究に関係すると考えられる試料の各種特性について述べる.

1)材料

肉は以下の3種類を用いた. 牛肉は, 宮城県川崎町雪印実験牧場で飼育されたホルスタインの雄の内もも肉を0℃で7日間熟成したものとした. 豚肉は, 岩手県丹沢郡金ヶ崎町花巻畜産金ヶ崎農場で飼育された大ヨークシャー, ランドレース, デュロックの雄と雌の内もも肉と外もも肉を0℃で5日間熟成したものとした. 鶏肉は, 所沢市河野養鶏所で飼育されたブロイラー, ニュー富士の雌の胸肉を0℃で4日間熟成したものとした.

なお, 材料として用いた牛肉, 豚肉, 鶏肉の各部位の選択基準は, それぞれの動物の中で, ①一般的に挽き肉としてよく使用される部位であること, ②筋や脂肪が多い部位でないこと, ③少量しか取れない部位でないこと等とした.

2)試料の調製

肉の脂肪や筋を除去し, チョッパーにかけた. チョッパーのプレートの細孔は, 一般に使われている大きさを中心に, 面積が2倍(長さでは1.4倍)の等比間隔になるように設定した. すなわち直径を, 2.4, 3.4, 4.8, 6.8, 9.6mmの5種類とした(それぞれのプレートでひかれた挽き肉で調製した試料を粒度別で表すときは以後A, B, C, D, Eとよぶ). チョッピングされた肉を80gずつ計量し, 手で小判型のモールド(長径91.0mm, 短径65.5mm, 厚さ13mm)に押し込んで打ち抜き, 直ちに送風凍結装置に入れて-30℃まで急速凍結した. この凍結試料を1個ずつボイルインバックにつめて自動真空包装機で真空包装し, -30℃の冷凍庫に保存した. 各種試験の際にはボイルインバックに入ったままの凍結試料を沸騰水にいれ, 中心温度が80℃に達するまで加熱し, ボイルインバックから取り出したものを試料として用いた.

3)試料の一般成分

試料肉の一般成分を表1に示した. なおその測定は次の方法を用いて行った. 凍結試料を冷蔵庫のチルド室(0±2℃)に24時間放置して解凍し, クッキングカッターで20秒間撹拌したものを用いて, 試料の水分は常圧加熱乾燥法(135℃, 3時間), 粗たんぱく質はミクロケルダール法, 粗脂肪はBligh-Dyer法, 粗灰分は直接灰化法で測定した.

4)試料の物理的特性

試料の物理的特性値を表2に示した. なお各測定は以下のようにして行った.

保水力は, 凍結試料を解凍して約7gを精秤し, 28,000Gで30分間遠心分離した後の, 遠心分離前の重量に対する遠心分離後の残渣重量の百分率とした.

厚さの増加率は, ノギスを用いて凍結試料の厚さと試料の厚さを測定し, 前者に対する後者の百分率とした.

肉汁の流出率は, 凍結試料の重量に対する, 加熱直後にボイルインバック内に流出した肉汁の重量の百分率とした.

WBS値は, 試料を2(縦)×2(横)×1(高さ)cmに切り, ラップで覆って20℃の恒温室に1時間放置後, ワーナープラッツラー剪断試験機(株式会社 全研, Warner-Bratzler Meat Shear, Model 3000)を用いて測定した.

テクスチャー特性値(硬さおよび凝集性)は, 試料を2(縦)×2(横)×1(高さ)cmに切り, ラップで覆って20℃の恒温室に1時間放置後, テクスチュロメーター(株式会社全研, GT-2X)で, 受け皿;平皿, プランジャー;ルサイト直径18cm, クリアランス;5mmの条件下で測定した.

破断特性値(剪断および打ち抜き試験による破断歪み, 破断強度および見かけの弾性率)は, 試料を2.5(縦)×2.5(横)×1.0(高さ)cmに切り, ラップで覆って20℃の恒温室に1時間放置後, レオナー(株式会社 山電, RE-3305)を用いて, 剪断試験(荷重センサー;20kg, プランジャー;カッターナイフの替刃の背(幅0.4mm), プランジャーガイド;No.102 直径48mm, 試料台速度;0.5mm/sec)および打ち抜き試験(荷重センサー;20kg, プランジャー;円筒形No.5 直径5mm, プランジャーガイド;No.103 直径48mm, 穴の直径;10mm, 試料台速度;0.5mm/sec)を行いそれぞれ破断歪み, 破断強度および見かけの弾性率を測定した.

さらに各肉種・測定値ごと粒度を水準として一元配置の分散分析を行い, F値と有意水準を表2に併記した.

Table 1

Approximate analysis of the meat samples (%)

Table 2

Physical properties of the samples and F-values from the analysis of variance

2. 2 官能評価

3種類の肉種ごとに, 順位法を用いて嗜好試験を行った. 質問項目はテクスチャー(肉粒感, 硬さ, 弾力性, 多汁性, 総合的テクスチャー), 味および総合とし, 好ましい順に1から5まで順番をつけてもらった. なお, 肉粒感は, 「肉と感じられる粒の大きさと量が与える感じ」と定義した. 結果の解析は馬場の方法(1986)を用いて行った.

官能評価用試料は, 試料をミクロトームの替刃で1/4に切ったもの(約15g)とした. 白い直径25cmの皿に官能評価用試料を5つ同じ向きに載せてパネルに提示した. 試料がボイルインバックから取り出されてからパネルに提示するまでの時間は3分以内にした. パネルに提示したときの官能評価用試料の内部温度は約65℃であった.

官能評価は, ブースになっている官能評価専用の部屋で白色ライトの下で行った.

官能評価の時間は, 午前10:00-11:00および午後2:00-4:00の間とした.

パネルは, お茶の水女子大学調理学研究室員(年令22~28才)20名とした.

3. 結果および考察

馬場の方法(1986)を用いて表した嗜好試験の結果を図1に示した.

この方法は, 順位法の結果をグラフ化したもので, 数量的表現に比べ情報の多さが特徴であり, 順位法の表現法として非常に有効と考える. グラフは次のように読み取る.

まず半円の中で方向が順位を表し, 0°の方向が第1位, すなわちもっとも好まれるに, 180°の方向が第5位, すなわちもっとも好まれないに対応する. 次に線分について, もし全てのパネルがある試料に同じ順位をつけたとすると, 線分はその順位の方向を向いた長さ1, すなわち中心(円としたときの)を始点として円周上に終点のある線分となる. 順位が同じでないと線分は1より小さくなる. すなわち各線分は, その試料に対する評価の一致性と平均的な順位を表している.

また, 線分の終点が半円の中に書かれている楕円中のどこかにあるときは, 評価が1位から5位までに分かれていて, 有意水準5%未満では有意性が認められないことを表している. また例えば, 高い評価と低い評価に 2極分化したときは原点に近い位置に線分が表れることになる.

Fig. 1

Preference rating of the patties prepared from ground meat of different granular size as analyzed by the Baba method

A-E : Refer to Table 1. 1)Size and amount of meat like granules.

3. 1 肉種ごとに見た嗜好性の特徴

1)牛肉の嗜好性

テクスチャーでは, 肉粒感, 硬さおよび総合的なテクスチャーの3つが, 5つの試料の順番やその広がり, 嗜好の一致性などにおいて比較的近似したグラフとなった. それらではBまたはCが好まれ, 次いでD, そしてもっとも好まれないのはEであり, AはDの前後に位置したが有意ではなかった. テクスチャーの中でやや特徴的なものは弾力性と多汁性で, A~Dの嗜好性の平均順位には大きな差がなく, Eのみはもっとも好まれないという結果であった.

味の嗜好性は C, D, B, Aの順であった. Cはテクスチャーも味も好まれるが, 他の試料はテクスチャーとは嗜好性が異なるようであった.

これらの結果, 総合の嗜好性はCがもっとも高く次いでB, D, そしてAとEは低かった. これらは直線の長さがほぼ同じであることから, 嗜好の一致性も同程度であることが分かった. またこの総合のパターンは, 味よりもテクスチャーのパターンに似ていた.

2)豚肉の嗜好性

テクスチャーでは, 多汁性と総合的なテクスチャーが他より左右に広がっている, すなわち各平均順位の差が大きい傾向があるものの, 全体的にそのパターンは似ており, さらにB~Eの順位はどれも同じで粒度の小さい方が好まれた. Aについては順位も項目ごといろいろで, 嗜好の一致性はどの項目でも低く, 総合的なテクスチャーでは高い評価と低い評価に2分された結果となった. 味もテクスチャーとほぼ同様の嗜好性であった.

それらの結果総合評価は, B, A, C, D, Eの順で比較的平均順位の差が大きいこと, またAの嗜好の一致性は低く, 逆にB, D, Eの一致性は大変高いことが分かった. この総合パターンは味のパターンによく似ており, また, 総合的なテクスチャーのパターンにも似ていた.

3)鶏肉の嗜好性

テクスチャーでは, 硬さと総合的なテクスチャーのパターンがよく似ており, 肉粒感がややそれらと似ていた. また, BとDの順番が逆になれば弾力性もそれらと似たパターンを示した. すなわち5つの試料の平均的順位に大きな差が見られず, 嗜好の一致性も低い試料が多かった. また嗜好性は高い順にC, B, Dで, 最後はAまたはEという順位であった. 多汁性は他のテクスチャーとはパターンが大きく異なり, 平均順位が近似し, D, AおよびEの嗜好の一致性は低かった.

味は多汁性に似たパターンで, 平均順位が近似しており, 嗜好の一致性は低かった.

総合評価は総合的なテクスチャーや硬さと似たパターンを示し, 嗜好性の高い方からC, (B, D=かろうじて棄却領域に入っている)A, Eの順で, 一致性は高いとは言えないという結果であった.

3. 2 嗜好性の, 肉種間の比較および物理的特性との関係

3種類の肉の全体的なパターンを比較すると,

①豚肉試料は, 粒度の異なる5種類の試料の嗜好性が, 高いものから低いものまで広く分布しており, 牛肉試料も豚肉試料と同等かやや分布幅が小さい程度であった. しかし鶏肉試料は他の2種類の肉に比べ, 明らかに5種類の粒度の異なる試料間の嗜好性の差は小さかった.

②嗜好の一致性という観点からは, 一部例外はあるが, 豚肉試料がもっとも一致性が高く, 次いで牛肉試料であった. 鶏肉試料は他の2種類の肉と異なって全体的に一致性が低く, また, 試料によっては項目により一致性が高いこともあれば低いこともあるなど, 嗜好の一致性にもばらつきが見られた.

このような肉種による嗜好性の違いは, 試料の物理的特性とも関係あると考える. 表2に見られるように, 各特性値におよぼす粒度の影響を表すF値は, 凝集性を除いては全て豚肉試料がもっとも大きく, 特性値によっては豚肉では有意差があるが他の肉種では有意差がない, または有意レベルが低いものもあった. このような物性の特徴が, 前述の豚肉試料の嗜好性の差の大きさや一致性の高さと関係している可能性が示唆された.

また, 肉汁の流出率はどの粒度においても鶏肉がもっとも少なかった(表2). 前報(Imai et al., 1994)において, この結果と, 試料を一定条件でミキシング後風乾して肉片の大きさを測定した結果から, 3種類の肉の中で鶏肉はもっとも肉の結着性が強いことが示唆された. 本実験において粒度の異なる鶏肉試料の嗜好性の差が他の肉に比べ小さかった理由の一つに, 鶏肉の結着性の強さが影響していると考えられる.

3. 3 嗜好性におよぼす挽き肉粒度の影響

図1の各グラフの比較により明らかなことは,

① Aの試料は, やや肉種によって異なるものの, 嗜好の順位が高い項目もあれば低い項目もあり, また, 一致性が低い項目も多かった.

② Eの試料は, 全ての肉種・項目において, Aの試料を除くと全て最終位であった.

③ 同様にAを除くと, 多くの項目において, BまたはCが1位または2位で, Dがそれに続くと評価がされることが多かった.

以上, 挽き肉の粒度は, ハンバーグ様試料の嗜好性に大きく影響することが明らかとなった. ただし影響の大きさは肉種によって異なり, 鶏肉試料への影響は他の2種類の肉に比べ小さく, したがって, 他の肉種を使った場合と比べ, 鶏挽き肉を使った料理においては挽き肉の挽き方に注意する必要は少ないと考える.

このように嗜好性への粒度の影響は肉種によってやや異なるものの, どの肉種においてもハンバーグ用に肉を挽くときには, 細孔が3.4mm~4.8mmのプレートを用いることが最良と考える. 少なくとも9.6mmもしくは2.4mmのプレートは避けた方がよいと考える.

挽き肉は, 肉のたんぱく質や水分, 脂肪の含量やたんぱく質組成の違い, また筋肉組織の違いなどにより, 実は同じプレートを通った肉でも肉種により大きさの異なった挽き肉が得られ, また, 加熱による肉粒の収縮の程度もそれぞれに異なる(Imai et al., 1994). どのように異なるかは, そぼろのような挽き肉が1粒ずつ離れたものとは違って, ハンバーグのように肉粒が接している場合は, 肉粒同士の加熱による結着性などが影響して明らかにするのが困難であった.

本実験において粒度が嗜好性に及ぼす影響を明らかにするには, 可能ならば官能検査に供した試料自身の肉粒の粒度を明らかにし, 例えば実際にこの位の粒度のものがもっとも好まれた, または好まれなかったと表すことも一つの有効な結果になると考える. しかし前述の理由により, 本実験では挽き肉調製に使用したプレートの細孔の大きさをもって嗜好性の比較をし, 以上のような結果を得た.

4. 要約

肉種および粒度が異なる挽き肉から調製したハンバーグ様試料の嗜好性におよぼす挽き肉粒度の影響を検討した.

肉は牛肉, 豚肉, 鶏肉の3種類とし, チョッパーのプレートの細孔の直径を2.4, 3.4, 4.8, 6.8, 9.6mmの5種類として挽き肉を調製し, それを用いてハンバーグ様試料を調製した. 嗜好性の官能評価は順位法を採用し, テクスチャー5項目, 味および総合の評価を20名のパネルにしてもらった. 順位法の解析には馬場の方法を用い, 結果をグラフ化した.

その結果, 以下の結果が得られた.

①豚肉試料は, 粒度による嗜好性の差が大きく, 牛肉試料も豚肉試料とほぼ同等かもしくは豚肉よりやや差が小さい程度であったが, 鶏肉試料は, 粒度による嗜好性の差が前2種類の肉より明らかに小さかった.

②パネルによる嗜好の一致性は, 全体的に豚肉試料がもっとも高く次いで牛肉試料であったが, 鶏肉試料は前2種類の肉と異なり, 総体的に一致性が低いだけでなくばらつきも大きかった.

③肉種や試験項目により若干の違いがあるものの, 全体的にもっとも嗜好性の高い試料は, 細孔の直径が3.4もしくは4.8mmのプレートを使用した挽き肉で調製したものであった. 9.6mmの試料はもっとも好まれず, 一方2.4mmの試料は嗜好性がばらついて一定の傾向が見られなかった.

④粒度による嗜好の差が大きく, またその一致性が高かった試料は, 物性特性においても粒度間の特性値の差が大きかったこと等から, これら試料の嗜好性の特徴には, 試料の物理的特性が大きく関与していることが示唆された.

 

現在の所属:1) 聖徳大学人文学部, 2)上海水産大学, 3)青山学院女子短期大学家政学科, 5)昭和女子大学大学院

引用文献
 
© 2002 日本官能評価学会
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