スポーツ社会学研究
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スポーツイベントにおける感情労働と住民対応
―ボランティア住民のホスピタリティに着目して―
菅原 大志
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論文ID: 30-1-01

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抄録

 農山村の文化・環境を活かしたスポーツイベントが各地で盛んに行われている。地域活性化を企図する農山村において、スポーツイベントは有効な観光産業となりうるが、スポーツイベントの産業化は、参加する住民の〈ホスピタリティ〉[須藤,2008]の感情労働化につながる可能性がある。本稿は、産業化されたスポーツイベントの現場において感情管理がどのように要請され、また受容する住民はどのような対応が可能なのか、宮城県登米市のマラソンイベントを事例として論じた。
 ボランティアとして参加した住民の地域生活の分析から、ランナーを楽しませるためのものとしてイベントを意味づける主催者に対し、住民はイベントを自分たちの関係性を維持・再構成する機会として読み替えたことが明らかになった。こうした読み替えにより、感情労働に陥らないイベン トへの参加が可能になっていた。
 これまでのスポーツイベントと地域活性化に関する研究は、主に「効果」や「地域づくり」への視点からイベントの運営方法に焦点化し、イベントを受容し参加する地域住民の行動については事業の理念に沿うものが分析評価の対象となってきた。それゆえ、そこから外れる住民行動は議論の対象とならなかった。これに対し本稿は、地域生活に目を向けることで事業の理念を相対化する住民の論理と対応を明らかにするとともに、感情労働論の知見が有する意義と限界を論じた。

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© 2022 日本スポーツ社会学会
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