スポーツ社会学研究
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原著論文
  • 下竹 亮志
    2019 年 27 巻 1 号 p. 59-73
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本稿は、これまでの研究において看過されてきた「指導者言説」を対象として、戦後の運動部活動をめぐる言説空間を再構成する試みの序説的位置づけを持つものである。具体的には、これまでの運動部活動における中心的な教育的価値として議論の対立軸であった「規律」と「自主性」に着目し、その二項対立的な把握の仕方を乗り越えることを試みた。その際、ミシェル・フーコーにおける自由と安全の作用と戦略の論理の視座から、「規律」と「自主性」を「教育的価値」ではなく生徒の振る舞いを導く「教育的技法」として捉える必要性を指摘した。その上で、1970 年代半ばから1980 年代の「指導者言説」を分析した。
     そこには、3つの特徴的な語りを見出すことができる。まず、当時の生徒の利己主義、無気力、無感動、無関心といった問題が認識されるなかで、「人間教育」としての運動部活動という主題が浮上していたこと。次に、そのような状況において、一方では「自主性」が指導者の課す厳しい練習などの「規律」それ自体に向かって発揮されるべきものとして語られていたこと。しかし他方で、「規律」を中心とした指導の困難さが語られるなか、指導者たちは練習と試合を住み分け、前者に「規律」を後者に「自主性」を割り振るという手法に活路を見出したことである。ここに見出せるのは、「規律」と「自主性」の配分問題という、これまでの研究で着目されてこなかった新たな問題設定である。このような当時の「指導者言説」の分析を踏まえて、最後になぜこの時期に指導者たちは突如として冗長に語ることができるようになったのかという問いについて考察した。
  • 石原 豊一
    2019 年 27 巻 1 号 p. 75-89
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     新たな開発援助として「開発と平和のためのスポーツ(Sport for Development and Peace, SDP)」が注目され、先進国アクターによる途上国へのスポーツ普及策がなされるようになってきている。これについて、本稿では、日本のアクターによるアフリカにおける野球普及活動と、その結果生じたアスリートの国際移動の事例に着目し、スポーツという身体的文化活動が、途上国が抱える諸問題を解決することができるかという点について考察する。
     本稿において取り上げるのは、日本のNGO による野球普及活動の結果生まれた、プロ予備門と言うべき独立プロ野球リーグと契約したアフリカ人プロ野球選手の事例である。最初のジンバブエ人選手の事例は、国内情勢の悪化から現地での普及活動が困難になったための苦肉の策として行われたものであったが、その結果、「開発援助発のプロ野球選手」が、ひとつのモデルケースとなり、開発援助よりもむしろ「プロ野球選手」送出が目的化したような事例も見られるようになってきている。現実には、独立プロ野球リーグでの報酬は非常に低く、ここへの選手送出が、スポーツ普及を通じた途上国社会の経済的自立の援助と捉えることは難しい。また、アフリカにおける野球普及活動が啓蒙活動などの一助となるというアクター側の自己の評価についても疑問が残る。
     アフリカにおける野球普及は、あくまで娯楽の提供という援助の一手段であるに過ぎず、その限界を受け入れた上で、チームプレーを通しての教育的効果などの有効性を探っていくことが、今後のSDP の一環としての野球普及活動の方向性ではないだろうか。
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