スポーツ社会学研究
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原著論文
  • 千葉県X町の事例から
    宮澤 優⼠
    2025 年33 巻2 号 p. 51-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/31
    [早期公開] 公開日: 2025/05/30
    ジャーナル フリー
     本研究は、サーファーによる有機農業の実践を通じて、ライフスタイルスポーツの実践者が自然との関係性についての独自の感覚や認識を、いかに地域社会との関わりの中で具体的な実践として展開しているのかを分析したものである。
     従来のライフスタイルスポーツ研究は、それぞれの文化に内包する排除の論理を明らかにしつつ、実践者たちのオルタナティブを模索している。しかし、実践者たちが地域社会との関係性の中でいかに具体的な実践を展開するのかという点は、十分に検討されてこなかった。
     本研究で取り上げる千葉県X 町のF農場では、サーファー5人組が「半農半サーファー」というライフスタイルを実践しながら、約1700坪の農地で有機農法による栽培を行っている。彼らの実践には3つの特徴が見られる。
     第一に、サーフィンで培った「待つ身体」の感覚を農業に転用している点である。波を待つ身体感覚は、自然のリズムに従う有機農業と共鳴し、環境との長期的な対話を可能にした。
     第二に、農を通して身体をDIYする実践である。彼らは自家栽培した有機作物の効果をサーフィンのパフォーマンスで検証し、その経験を農業実践に反映させる循環的なプロセスを確立している。
     第三に、波の状況に応じた柔軟な時間管理が、自然のリズムに沿った農場運営を可能にしている点である。当初、この実践は地主のG氏との間に軋轢を生んだが、時間の経過とともに「土地を大切にする」という共通の価値観を見出すに至った。
     本事例は、ライフスタイルスポーツの実践者による社会変革の試みが、必ずしも対立や断絶ではなく、地域社会との重層的な関係性の中から生まれる創造的な実践として展開しうることを示している。本研究は、このような地域社会との日常的な交渉や協働の過程に焦点を当てることで、ライフスタイルスポーツ研究における新たな視座を提示するものである。
研究ノート
  • 東京都足立区におけるオランダ王国との連携を事例に
    篠原 果歩
    2025 年33 巻2 号 p. 67-75
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル フリー
     国際連合によって持続可能な開発目標(SDGs)達成の「成功要因(enabler)」と位置づけられているスポーツであるが、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会を一つのきっかけに、日本においてもSDGsやダイバーシティ&インクルージョンの重要性が謳われるようになった。特に、大会ビジョンの一つである「多様性と調和」に関わり、大会の主要人物たちが「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功なし」と繰り返し発言し、大会開催を契機とした共生社会の実現を呼び掛けた。しかし、大会報告書ではアクション&レガシープランの下で実施された取り組みそのものが「成果」として紹介される程度で、その取り組みがもたらした変容や影響は必ずしも明確に論じられていない。
     そこで本稿では、オランダオリンピック委員会・スポーツ連合(NOC*NSF)が日本スポーツ振興センター(JSC)の協力を得て、2017年度から足立区などで開始したGame Changer事業を対象とし、NOC*NSFやJSC、足立区の公開資料を用いて、パラスポーツを通じた共生社会の実現を目指す足立区で創出された価値観や実践の変容の特徴を明らかにすることを試みた。
     本研究を通じて、まず、事業に携わる区職員や障害者自身を含む区民など関係者間での対話を重ねることで、従来の固定観念やエイブリズム的な考えから関係者自身を解放するという価値観の変容が目指されていたことが窺えた。次に、既存と新規の仕組みを柔軟に組み合わせ、足立区におけるパラスポーツ推進のための基盤の強化に取り組んだことが明らかになった。しかしながら、これらの過程においてスポーツや運動に苦手意識のある障害者の意見が十分に反映されていない可能性が示唆された。
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