スポーツ社会学研究
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「フィットネス」現象への視点
河原 和枝
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1995 年 3 巻 p. 37-45

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抄録
「フィットネス」の概念および実践の輸入と普及の過程は、ひとつの社会現象として注目に値する。80年代を通して、「フィットネス」は現代的なライフスタイルとして多くの人びとに採用されるようになっていった。フィットネス・クラブの数だけをとってみても、1980年には全国で246施設しかなかったが、1992年には1,564施設と6.3倍に達している。
フィットネス・ブームの背景には、人びとの「健康志向」、あるいはその裏返しである「健康不安」がある。しかし「フィットネス」はたんなる健康法にとどまるものではなく、「健康」とは異質の「ファッション」(あるいは「美」) の要素をもっており、それがフィットネスの普及と定着の過程で重要な役割を果たした。そのことは、1980年代前半のエアロビクスの大流行によく示されている。
以上の議論をふまえて、本稿の後半では、2つの視角から「フィットネス」のもつ社会的意味について検討する。まず、消費社会論の視角から、消費社会においては身体が消費の対象と化していくこと、のみならず身体の用い方 (たとえばフィットネス) までが一種の「スタイル」として消費されることを論じる。次に、知識社会学的な視角から、「フィットネス」をめぐるイデオロギー的状況について分析するとともに、ファッションの力によって一般の若い女性たちをまきこんだフィットネスが、女性たちの身体への意識を変容させたことにもふれる。
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© 日本スポーツ社会学会
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