日本血栓止血学会誌
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Print ISSN : 0915-7441
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原 著
組織因子誘発ラットDICモデルにおける出血症状・臓器症状の発現機序
—抗線溶剤投与に伴う影響—
佐野 陽子朝倉 英策吉田 知孝浅村 梨沙山崎 雅英森下 英理子御舘 靖雄水谷 朋恵金田 みのり伊藤 貴子宮本 謙一中尾 眞二
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2002 年 13 巻 4 号 p. 319-325

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抄録

組織因子(TF)誘発DICモデルにおいては, 臓器におけるフィブリン沈着は軽度で, 臓器障害をきたしにくいという特徴があることを, 今までの我々の検討より明らかにした. 本研究では, 同モデルにおいて臓器障害がみられないのは, 線溶活性化が主因であるかどうかを明確にするため, 抗線溶薬投与による影響を検討した. また, DICモデルにおける出血症状の発現機序についても検討した. TF誘発DICモデルは, Wistar系雄性ラットを用いてTF3. 75単位/kgを尾静脈より4時間かけ点滴静注し作成した.薬物投与群については, トラネキサム酸 (TA) 50mg/kgまたは低分子ヘパリン (LMWH)200U/kgをTF投与開始30分前から投与し, TF投与終了まで4. 5時間持続点滴した. TF誘発DICモデルにおいては腎障害および腎糸球体フィブリン沈着はほとんどみられなかったが, TAを投与するといずれも有意に出現した. 同モデルにおける出血症状としての血尿は, 4~8時間後に高頻度に出現したが, TAおよびLMWHのいずれの薬物投与によっても有意に抑制された. 以上より, TF誘発DICモデルにおいて臓器症状があまりみられないのは, 線溶活性化が主因であると考えられた. また, 出血症状は消費性凝固障害と高度な線溶活性化が合併して初めて出現するものと考えられた.

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© 2002 日本血栓止血学会
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