日本血栓止血学会誌
Online ISSN : 1880-8808
Print ISSN : 0915-7441
ISSN-L : 0915-7441
原 著
ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)による血管内皮細胞上の組織因子, トロンボモジュリンの調節
丸山 慶子森下 英理子關谷 暁子長屋 聡美角野 忠昭朝倉 英策中尾 眞二大竹 茂樹谷内江 昭宏
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 20 巻 3 号 p. 315-322

詳細
抄録
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘムをビリベルジン,遊離鉄,一酸化炭素に代謝する反応を触媒する酵素であり,HO-1,HO-2およびHO-3のアイソフォームが存在する.近年,世界第一例の先天性HO-1欠損症患者が報告され,凝固・線溶系の著明な活性化の所見がみられ,このことよりHO-1は凝固・線溶系の活性化の調節に密接に関与することが予測された.そこで今回,HO-1による血管内皮細胞上の組織因子(TF),トロンボモジュリン(TM)の発現調節について検討した.ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)にHO-1誘導剤であるヘミンを添加し,HO-1およびTF,TMのmRNAおよび蛋白発現量を測定した.その結果,ヘミン添加によりHO-1は有意に増加し,TFはほとんど変化せず,TMは有意に増加した.一方,ヘミンと同時にHO-1活性阻害剤であるTin protoporphyrin IX(SnPP)を添加すると,TFは有意に増加し,TMの増加は抑制された.以上のことから,HO-1あるいはHO-1代謝産物は血管内皮細胞においてTF,TMの発現を調節することにより血栓形成抑制作用に関与する可能性があると考えられた.
著者関連情報
© 2009 日本血栓止血学会
前の記事 次の記事
feedback
Top