日本血栓止血学会誌
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原著
血栓症を発症した複合ヘテロ接合体性プロテインC欠乏症患者で認められた2種の遺伝子変異とそれぞれのプロテインC産生に及ぼす影響
油井 知雄越智 守生高橋 伸彦家子 正裕林 辰弥鈴木 宏治
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2011 年 22 巻 3 号 p. 87-99

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抄録

プロテインC(PC)はビタミンK依存性のセリンプロテアーゼ前駆体であり,先天性PC欠乏症は静脈系血栓症の発症に関与する.
本研究ではPC欠乏症と診断された家系の発端者PC遺伝子についてPCR-Direct sequence法によりPC遺伝子上の変異部位を同定するとともに,PCR-Restriction fragment length polymorphism(RFLP)法により,その家系の遺伝子型の精査を行った.PCR-Direct sequenceにより,発端者PC遺伝子の第9エクソン上にGly282→Ser変異(変異I)およびMet364→Ile(変異II)を認め,PCR-RFLP法による発端者家族の遺伝子型の解析により,2種の変異は異なるアレルに存在することが明らかになった.さらに,Site-directed mutagenesis法を用いて,変異Iあるいは変異IIを有するPCの発現ベクターを構築し,BHK-21細胞を用いて一過性の蛋白発現実験を行った.定量的PCRによるmRNAレベルの検討では野生型PCと両変異型PCに明らかなmRNAレベルの差異は認められなかったが,PC特異的ELISA法により測定した培養上清中のPC抗原量は,野生型PCを100%とした時,Gly282SerPCでは55.2%,Met364IlePCでは0.9%であった.
本研究の結果から2つの変異がPC欠乏症に関与し,特に本家系ではMet364Ile変異が血栓症の発症に関与したと考えられた.

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© 2011 日本血栓止血学会
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