日本血栓止血学会誌
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特集:ISTH-Kyoto 2011
血管成熟化の分子機構
高倉 伸幸
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2011 年 22 巻 6 号 p. 343-347

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抄録

血管は内腔を一層の内皮細胞が覆い,その基底膜側から,壁細胞と総称される血管平滑筋細胞やペリサイトが裏打ちし,さらに血管周囲にマトリックスが包囲して血管は構造的に安定化する.このような過程が血管の成熟化である.内皮細胞から分泌された血小板由来成長因子は壁細胞の内皮細胞近傍への動員を誘導し,壁細胞が分泌するアンジオポエチン-1は内皮細胞のTie2を活性化して,内皮細胞同士および内皮細胞―壁細胞の接着を誘導する.血管新生が生じている際に,Tie2を活性化すると,内皮細胞からapelinが分泌され,内皮細胞のAPJを活性化することにより,管腔が拡大し,透過性の抑制された成熟血管が形成される.このような分子機序以外にも,血管新生の過程において,形成された脆弱な血管を安定な構造に誘導する内皮細胞(phalanx細胞)が存在することが明らかになってきた.

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© 2011 日本血栓止血学会
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