粥状動脈硬化症の発生および進展の鍵を握っているのは血管壁における慢性炎症である.その原因は完全には解明されてないが,糖尿病,高血圧,脂質代謝異常などの危険因子の集積が重要であると考えられている.また慢性炎症反応の誘導に関して自然免疫系分子の関与も明らかとなってきた.このような炎症性刺激によるマクロファージの活性化はプラーク不安定化と破綻に深く関与する.さらにイベント発症を決定する重要なプロセスである血栓の形成・増大においても炎症性因子が関与する.動脈硬化の進展とその合併症である血栓症の予防および治療戦略を考える上で,基盤病態としての慢性炎症の制御機構の解明が重要である.