2017 年 28 巻 4 号 p. 460-471
要約:2007 年に前方視的多施設ランダム化オープンラベル試験であるJoint Outcome Study1)の結果が報告され,一次定期補充療法のエビデンスが確立された.その後,二次定期補充療法でも,すでに生じた関節障害の改善は困難であるものの,出血回数の減少やQOL の向上が報告された2–6).アドヒアランスの良好な定期補充療法を行うことにより,血友病患者が健常人とほぼ同様の日常生活を送ることが可能な時代を迎えている.平成28 年度の血液凝固異常症全国調査7)における定期補充療法の実施率は重症血友病A で80.5%,重症血友病B で68.2%まで増加し,わが国でも重症血友病における定期補充療法の標準化が進んでいる.2014 年には半減期延長製剤が使用可能になり,定期補充療法の障壁であった静脈注射の回数を減らすことができるようになった.今後はさらなるQOL の向上を目指し,個々の患者のライフスタイルなどを考慮し,患者個人に適切な定期補充療法のレジメンを設計するテーラード医療が重要と考える.