2020 年 31 巻 1 号 p. 17-27
血栓性微小血管症の遺伝子研究はこの15年余りの間に大きな進捗が見られた.すなわち,本症の病因は多岐にわたるものの,患者を血栓性血小板減少性紫斑病および非典型尿毒症症候群などの病因別に分類することができ,疾患発症に関わる遺伝子の病的バリアントが同定されるようになった.これらの研究の中で,日本は特に先天性血栓性血小板減少性紫斑病患者の遺伝子研究で世界をリードしエビデンスを蓄積してきた.また,本邦の非典型尿毒症症候群ではC3 p.Ile1157Thrが多くの患者に見られるという欧米の症例には見られない特徴を示した.遺伝子診断において病的バリアントの判定が重要であるが,非典型尿毒症症候群ではその判定に難しい場合があり,その判定の注意点を述べた.