日本血栓止血学会誌
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特集:血友病診療・最近の話題
血友病に対する遺伝子治療の進歩
柏倉 裕志大森 司
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2021 年 32 巻 1 号 p. 17-25

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抄録

血友病は,F8(血友病A)あるいはF9(血友病B)遺伝子変異が原因となる先天性出血性疾患である.出血に対して凝固因子製剤が用いられるが,凝固因子の半減期が短く頻回の投与が必要なことが患者QOLを阻害する.血友病は古くから遺伝子治療に適した疾患と考えられ,様々な研究がなされてきた.この10年間で飛躍的に遺伝子治療に対する基礎研究が進み,実際にアデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus: AAV)ベクターを用いたヒト臨床試験において,一回の投与で長期にわたって血中凝固因子が維持され,製剤投与の必要性がなくなる結果が得られている.現在の遺伝子治療の弱点として,中和抗体陽性患者に適応がないこと,小児に適応がないことなどが指摘されている.これらを克服するために,染色体DNAにアプローチするゲノム編集治療や,レンチウイルスベクターで治療遺伝子を導入した自己造血幹細胞移植治療も進行している.血友病に対する遺伝子治療が日常診療において利用できる日も近いが,長期的な有効性・安全性の観察に加え,高額な医療費に対する議論が必須である.

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