日本血栓止血学会誌
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特集:産婦人科領域の血栓症・出血症
妊娠中の治療量抗凝固療法について
根木 玲子
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2021 年 32 巻 5 号 p. 594-599

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抄録

妊娠中に治療量の抗凝固療法が必要な場合として,妊娠中に発症した静脈血栓塞栓症の治療や,妊娠前からワルファリンなどの抗凝固薬が投与されている場合が挙げられる.妊娠中は治療量の未分画ヘパリン(unfractionated heparin: UFH)投与が基本である.妊娠中の抗凝固療法の管理には難渋することが多い.モニタリング指標として用いられる活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time: APTT)は,その試薬が標準化されておらず,試薬間で差があるのが現状である.さらに妊娠中には凝固因子が増加しAPTTによるUFHのコントロールを難しくしている.自施設の産婦人科部ではUFHによる治療量抗凝固療法のプロトコールを独自に作成し,妊娠管理をしている.それはAPTT比の治療目標設定値を1.5~2.0倍と通常より控えめに設定している.本プロトコールをヘパリンのより正確なモニタリング方法である抗Xa活性(ヘパリン血中濃度)で検証し概ね良好な結果を確認した.

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© 2021 日本血栓止血学会
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